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治療の主体は抗がん剤を用いた化学療法と造血幹細胞移植
新薬など進歩著しい急性骨髄性白血病の最新治療

監修:松村到 近畿大学医学部血液内科教授
取材・文:増山育子
発行:2010年4月
更新:2013年4月

  

松村到さん
近畿大学医学部
血液内科教授の
松村到さん

急性骨髄性白血病の治療方法は、寛解導入療法、寛解後療法ともに化学療法が主体となっている。
加えて最近では、分子標的薬をはじめとした治療法の研究や新薬開発の進歩にめざましいものがある。

完全寛解の長期間維持を目指す

急性骨髄性白血病の治療は、まず治療前に1~10兆個ほどあるとされる白血病細胞を数種類の抗がん剤を用いて約10億個程度まで減少させることから始まる。これを、「寛解()導入療法」という。

その後、さらに白血病細胞を減少させるために「寛解後療法」が行われる。

この「寛解後療法」には、「地固め療法」、「維持・強化療法」がある。 「寛解後療法」により、白血病細胞の数が100万個以下になると、高感度の検査でも残存した白血病細胞を検知できない「分子生物学的完全寛解」となる。この状態でも、白血病細胞がゼロになったのかどうかはわからないから「治癒」という言葉を使わず、「寛解」という。

急性骨髄性白血病の治療の目標は治癒であるが、そのためには完全寛解()を長期間維持することが必要である。

寛解=病気の症状が軽減またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態
血液学的完全寛解=末梢血のデータが正常化し、骨髄中の白血病細胞が5パーセント以下になること
分子生物学的完全寛解=高感度のRT-PCR法という検査を用いても白血病細胞を検出できない状態

[体内白血病細胞総数と寛解]
図:体内白血病細胞総数と寛解

出典:臨床血液50:10

寛解導入療法は2剤併用が効果的

「寛解導入療法」ではキロサイド(一般名シタラビン)に、アンスラサイクリン系薬剤のダウノマイシン(一般名ダウノルビシン)またはイダマイシン(一般名イダルビシン)のどちらかを併用する方法が最も一般的だ。

ダウノマイシンとイダマイシンのどちらがよいのかについて、大阪大学医学部血液・腫瘍内科学准教授の松村到さんは次のように説明する。

「欧米で多くの症例を解析した結果をまとめたところ、寛解導入率、全生存率においてイダマイシンがダウノマイシンにまさっていたことから、欧米ではキロサイドとイダマイシンを使うのが標準的とされました。しかしこの成績は国内のダウノマイシンを用いた成績と比べて悪すぎ、その理由としてダウノマイシンの使用量が少ないことが考えられたため、日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)で臨床試験が行われました。その結果、ダウノマイシンとイダマイシンの両者に差がないことが明らかになりました」

実は欧米でもダウノマイシンを増量した大規模臨床試験が行われ、ダウノマイシンを通常量より多く投与したほうが寛解導入率、生存期間中央値とも良好だという報告が出されたところである。日本で従来、ダウノマイシンを多く使用してきた方法を追認することになったわけだ。

「現在の寛解導入療法をさらに改善するものはまだありません。抗がん剤の量や種類を増やすなど治療成績をあげようと試みられているのですが、治療効果が高まっても治療関連死亡が増えるなど、現在の2剤併用療法より優れたものがないのです。しかし、将来的には出てくるかもしれません。たとえば新しい抗がん剤のフルダラ(一般名リン酸フルダラビン)、クロファラビン(一般名、欧米での商品名クロラ)を併用する、分子標的薬であるマイロターグ(一般名ゲムツズマブオゾガマイシン)との併用などに期待がもてます」

寛解導入療法でのマイロターグの使用

マイロターグは現在、白血病細胞の表面にCD33というタンパク質が多数発現している再発・難治性の急性骨髄性白血病に対して単剤で適応になっている。

この薬の特徴的な点は、CD33にとりつくように作られた抗体と殺細胞効果が強力な抗がん剤カリケアマイシンを結合させたことにある。標的である白血病細胞以外の正常細胞にはダメージが少ないという利点がある上に、マイロターグだけでもおよそ30パーセントの寛解率が得られる。そのマイロターグに他の抗がん剤を組み合わせると、再発率は低く、全生存率も良好な結果が得られたという臨床試験の中間成績が海外で発表されている。

「寛解導入療法で、現在の2剤併用療法より効果をあげるのではないかと有望視されているのがマイロターグです。欧米で行われたマイロターグを寛解導入療法で用いる臨床試験では、有効とする中間結果とそれを否定する結果が両方出たので、現時点ではマイロターグを寛解導入療法にもってきても、2剤併用療法以上の成績が出るかはわかりません。現在も寛解導入療法にマイロターグを使う臨床試験がいくつか進行中ですので、その結果が待たれるところです」

[マイロターグの特徴]
図:マイロターグの特徴

出典:Mebio 23:142-156,2006


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