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特徴の異なる3大電極針に、今またがんに触れずに焼灼する新装置が治験中
「局所療法の王者」肝がんラジオ波療法は症例により使い分ける時代へ

監修:國分茂博 順天堂大学医学部付属練馬病院消化器内科先任准教授
取材・文:黒田達明
発行:2009年9月
更新:2013年4月

  
國分茂博さん
順天堂大学医学部付属練馬病院
消化器内科先任准教授の
國分茂博さん

高温でがんを焼き払うラジオ波療法は、肝機能をよりよく保ちながら、再発した後も、何度も行える治療法として今や、肝がん局所療法の主流となっている。そのラジオ波療法がここへ来て新しい展開を見せ始めている。

負担少なく治療効果も高い局所療法の優等生

写真:ラジオ波療法の電極針

ラジオ波療法の電極針。電極針を刺し、治療部位に到着すると、このように先端部が放射状に開く

肝臓がんの局所療法として注目されるラジオ波焼灼療法(ラジオ波療法)。日本に導入されて10年が経ち、保険が適用された2004年からは実施施設が急速に全国に広がっている。

治療の原理は、電流でがん組織を焼き殺すというもの。皮膚の上から1.5ミリメートルほどの太さの針を腫瘍に刺して、大腿部に貼った電極との間に、460~480キロヘルツの交流電流(これをラジオ波という)を流す。針の近くでは電流が集中し、電流密度が非常に高くなるため、電流の流れている細胞が発熱する。摂氏約80度まで熱せられると、がん細胞は凝固壊死する。

では、どんな症例に有効で、なぜ普及しているのだろうか。順天堂大学医学部付属練馬病院消化器内科先任准教授の國分茂博さんに話を伺った。國分さんは、日本ではいち早くこの治療法を採用し、現在使用されている装置の治験などにも積極的に取り組んできた。

「もともと局所療法は手術で切れない患者さんが対象でした。しかし、肝臓がんは治療部以外の他部位再発率が高く、多くは2年以内に、7~9割が5年以内に再発してしまいます。
ならば、切除するより肝機能になるべく負担が少なく、次の治療までの間に十分に回復、再生できるような治療法を行ったほうがいい。そうした考えから局所療法が手術のできる患者さんにも選択されるようになってきました」

局所療法には以前から、エタノール注入療法やマイクロ波凝固療法があったが、ラジオ波療法の普及後は、これらの療法を選択するケースは減ってきている。

「安全性と腫瘍壊死効果(がんを殺す力)の点で、ラジオ波療法は従来の局所療法に優る治療法なのです。1年後の局所再発率は6.5パーセントで、エタノール注入療法の3分の1以下です。装置や手技が改良されてきていますから、現在の再発率はさらに小さくなっているはずです」

腫瘍3個以内3センチ以下の適応は拡大できる

局所療法は、標準治療(『肝癌診療ガイドライン』)では、(1)肝障害度が悪くなく(AまたはB)、腫瘍が1つ(2)肝障害度が悪くなく(AまたはB)、腫瘍の数が3個以内、(3)腫瘍径が3センチ以内、の場合に選択肢となる。ラジオ波療法の適応もこれと同じと考えてよい。

「3個は安全性や治療時間から考えて無難とされる数です。実際には、腫瘍の位置にも依存してきます。表面近くの刺しやすいところにあれば、5個でも問題ありませんし、逆に、位置によってはできないこともあります。例えば、腫瘍が肝臓から突出していたら刺しにくい。肝臓の区域で言えばS1など、門脈近傍も難しい場所です」

通常、超音波画像で位置を確かめながら針を刺すが、腫瘍が見えなければ治療できない。例えば、横隔膜直下の深いところは見えにくい。

「もちろん、患者さんがラジオ波を選択したら、我々は最善を尽くします。横隔膜直下の場合は、人工胸水を注入するといった工夫も有効です。また、超音波造影剤を用いたり、超音波の代わりにCT(コンピュータ断層撮影)ガイド下で治療することも可能です。またときには、肝動脈塞栓術を併用して、リピオドール(※1)で腫瘍に栄養を与える血液を抑えると、腫瘍が見えてくることがあります」

3センチ以下という制限については、こう注釈する。

「安全のために、腫瘍の周囲5ミリを焼灼範囲に含めます。つまり、腫瘍径が3センチなら4センチ焼かなくてはなりません。現在、使用できる電極針には5センチまで焼けるものがあります。そうした針を使わなくても、術者の技術を要しますが、針の位置を少しずらして重ね焼きをしたり、角度を変えて複数回刺すことで、5センチ以上焼くことは可能です。実際、腫瘍径が5センチでも治療することはあります」

腫瘍径が大きい場合、最初に肝動脈塞栓術で腫瘍径を小さくしてからラジオ波療法を適応させる手段もある。ただし、肝動脈塞栓術を組み合わせれば、肝臓への負担はその分だけ大きくなる。

腫瘍が1個だけの場合、ガイドラインでは、局所療法の選択には、「肝障害度B、腫瘍径2センチ以内」という条件が付けられている。この条件に当てはまらなければ手術が第1選択だ。

「肝機能の比較的良い症例に対しては、肝切除とラジオ波療法のどちらが良いか、現在、比較試験(通称、SURF試験)が始まろうとしています。全国75施設で600人の症例を登録し、5年間追跡し、再発率や生存率を調べる予定です」

※1 リピオドール=油性の造影剤

治療前、治療後のCT画像
治療前、治療直後のCT画像

治療前、治療後のCT画像。治療前の白く写っている部分(矢印)が腫瘍。治療後の写真では腫瘍の周囲まで大きく焼かれ、黒く写っているのがわかる


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