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普通の治療とどう違うの? なぜ必要なの? の基礎から知っておこう
肺がんの個別化治療って、何?

監修:久保田馨 国立がん研究センター中央病院呼吸器腫瘍科呼吸器内科外来医長
取材・文:町口充
発行:2010年12月
更新:2013年4月

  
久保田馨さん
国立がん研究センター
中央病院呼吸器腫瘍科
呼吸器内科外来医長の
久保田馨さん

今、めまぐるしい進歩を遂げている肺がんの治療。
それにはどうやら、肺がんにいろいろなタイプがあるとわかってきたことが、大きなカギとなっているようだ。
そこでよく耳にする言葉、「個別化治療」。それは一体どんな治療なのか。

なぜ個別化治療なのか?

がん治療では、がんの進行度によって治療法が変わってきますが、肺がんの場合はそれだけでなく、がんの組織型によっても治療法が異なります。さらに遺伝子変異の有無によっても抗がん剤や分子標的薬の効き方に違いがあることがわかってきて、それぞれがんのタイプに合わせた治療の個別化が進んでいます。

「個別化治療とは、要するに1人ひとりの患者さんに合った治療ということ。患者さんごとのがんの特性を調べて、その患者さんにとってもっとも効果的で、より副作用の少ない治療法を選ぶのが個別化治療です」

と国立がん研究センター中央病院呼吸器腫瘍科呼吸器内科外来医長の久保田馨さんは説明します。

なぜ、肺がんにはさまざまなタイプがあるのかというと、「肺という臓器が複雑であるためです」と言う。

[肺門部と肺野]
図:肺門部と肺野

肺は左右に2つあり、肺葉と気管支、その先の肺胞とで構成されています。太い気管から左右の気管支の入口付近の中心部(肺門部)と、気管支の先のほうの末梢部(肺野)とに分かれています。左右に分かれている肺のうち、左の肺は心臓がある関係で右の肺より少し小さく、右側は3つの肺葉、左側は2つの肺葉から成り立っています。

気管から左右に枝分かれして肺の中に広がっているのが気管支。気管支の先端部分は、ブロッコリーかカリフラワーのように小さなつぶがたくさん実っているように見えますが、これが肺胞であり、この肺胞が集まってできているのが肺です。

「このように、肺をつくる正常な細胞の種類も複雑に分かれているため、それぞれの場所で発生するがんも違った種類のものになるのです」

肺がんには4種類のタイプ(組織型)がある

肺がんには、次の4種類があり、それぞれに異なった特徴を持っています。

まず大きく分けて、小細胞がんと、それ以外の非小細胞がんに分けられます。

(1)小細胞がん

がん細胞は普通、正常な細胞より大きいのですが、ほかのがん細胞と比較すると、細胞が小さいという特徴があるのが小細胞がんです。肺の入口付近の肺門部に多く発生し、気管支の壁の中を這うように進展します。

(2)非小細胞がんは、

さらに3つに分かれます。

A. 扁平上皮がん

気管や気管支の内側の壁を覆っている扁平上皮という細胞ががん化したもの。

たばことの因果関係が深く、喫煙する男性に多くみられます。外から入ってくる空気に常にさらされているのが気管や気管支の上皮細胞。長年たばこを吸っていると、たばこに含まれる発がん物質が慢性的に上皮細胞を刺激し、やがて細胞が変化を起こしてがんに至ると考えられています。

肺門部に発生するがんの代表的なものですが、肺野に発生することもあります。

B. 腺がん

唾液腺や甲状腺、内分泌腺など、腺組織で発生するのが腺がんです。肺の腺がんは多くの場合、肺の奥のほうの気管支が枝分かれした先の肺胞で発生します。

フィルター付きのたばこが出て来た後に増加してきました。また、腺がんはたばこを吸わない人にも発症することがあり、その8割は女性です。受動喫煙が原因として最も疑われますが、その他空気汚染やホルモンの影響など諸説あります。

C. 大細胞がん

細胞が大きいのが大細胞がん。肺の奥のほうの肺野に発生します。

これら以外に、稀なタイプや判定するのが難しい「分類不能」というのが少なからずあります。

小細胞がんは肺がん全体の12~13パーセントほど。以前は25パーセントぐらいありましたが、だんだんその割合は減ってきています。

この4つのタイプの中で1番多いのが腺がんで、非小細胞がんの約60パーセントを占め、近年増加しています。扁平上皮がんが25パーセントほど、大細胞がんは数パーセント程度。分類不能のケースもけっこうあり、内科での生検の結果では1割ほどが分類不能と診断されるといいます。

[肺がんは組織型の違いで4つに分けられる]
図:肺がんは組織型の違いで4つに分けられる

(上記図は『インフォームドコンセントのための図版シリーズ 肺がん』改訂版,2004年より引用改変)

今までの肺がん治療は2種類に分けられていただけ

このように、肺がんには大別して4つの種類がありますが、実際の治療では、小細胞がんとそれ以外の非小細胞がんの2つに分類されてきました。なぜでしょうか?

「その理由は、ちょっと前まで、小細胞がんは抗がん剤がよく効くのに対して、非小細胞がんはどれも抗がん剤があまり効かず、治療法も変わらなかったからです」と久保田さん。

腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんと、違うタイプのがんであっても、同じような治療法しかないのであれば、細かく分ける必要もなく、「非小細胞がん」とひとまとめにしてもよかったのでしょう。

非小細胞がんは、転移がなく手術で病巣部をすべて切除できるなら第1選択は手術です。しかし、たとえ完全に切除したとしても転移の可能性があり、再発した場合は放射線療法や抗がん剤による化学療法が選択されますが、抗がん剤は小細胞がんほどの効果はないといわれてきたのです。

しかし近年、新しい抗がん剤が登場してきて、その有効性を証明する大規模臨床試験の結果が次々に発表されるようになり、非小細胞がんにも抗がん剤が有効であることが明らかになりました。

それだけなく、それぞれがんのタイプごとに効果の違う抗がん剤が登場するようになってきて、非小細胞がんの中でも、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、遺伝子の変異有無などと分けて行う治療、つまり個別化治療が可能になってきたのです。

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