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SOX療法と腹腔内投与の併用など、更なる展開・可能性も 有効・安全性の高い治療成績、胃がん腹膜播種の腹腔内併用療法

監修●石神浩徳 東京大学医学部附属病院外来化学療法部特任講師
取材・文●柄川昭彦
発行:2013年9月
更新:2019年8月

  
石神浩徳さん
腹腔内併用療法を、着実に進めてきた石神浩徳さん

長きにわたり、有効な治療法が確立されていなかった胃がんの腹膜播種。そこに登場した、TS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法と胃切除が、安全かつ高い治療成績を示している。腹膜播種予防への同法の応用など、新たな可能性へも展開が期待されている。


腹膜播種のある胃がんに腹腔内投与を併用する

■図1 胃がんの腹膜播種『胃がん治療ガイドラインの解説』を改変

胃がんでは腹膜播種という転移が起きることがある。がんが胃壁の深くまで入り込んでいき、外側の膜を突き破った場合に起こる。

がん細胞が腹腔内にこぼれ、腹壁や内臓の表面を覆っている腹膜に転移するのである。種を播いたように広がるので、腹膜播種と呼ばれている(図1)。

この胃がんの腹膜播種に対する新しい治療法が開発され、研究が進められている。

取り組んできた東京大学医学部附属病院外来化学療法部特任講師の石神浩徳さんは、次のように語っている。

「現在、手術で治すことができない進行・再発胃がんの標準治療は化学療法であり、TS-1とシスプラチンの併用療法が推奨されています。腹膜播種がある胃がんの患者さんも、手術できない胃がんと診断され、この治療の対象となっています。

■図2 腹腔内投与の方法

しかし、腹膜播種に対しては、抗がん薬を腹腔内に直接投与することで、もっと高い治療効果が得られるのではないかと考えたのです」

こうして生まれたのが、TS-1の内服、パクリタキセルの経静脈投与、パクリタキセルの腹腔内投与という3つを組み合わせた治療法「TS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法」だった。

パクリタキセルを腹腔内に投与するためには、薬剤の注入口であるポートという器具を、腹部の皮下に植め込む必要がある。

ポートから続くカテーテルを腹腔内に留置しておき、体の外側から点滴用の針をポートに刺して、薬を腹腔内に入れるのである(図2)。

胃がんの腹膜播種に対するパクリタキセルの腹腔内投与は、未だ保険診療として承認されておらず、先進医療として行われている。

TS-1=一般名テガフール ・ ギメラシル ・ オテラシルカリウム シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ パクリタキセル=商品名タキソール

標準治療との比較試験が進行中

■図3 第Ⅲ相臨床試験(フェニックス試験)概要

この新しい治療に関して、安全性を調べる第Ⅰ相試験と、主に有効性を調べる第Ⅱ相試験が、東京大学医学部附属病院で実施された。

そして、その結果を踏まえ、2年前の2011年10月から、標準治療との比較試験である第Ⅲ相試験(フェニックス試験)がスタートしている(図3)。

試験の対象となるのは、腹膜播種がある初発の胃がん患者さん。

■表4 第Ⅲ相試験参加施設

無作為に「TS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法群」と、標準治療の「TS-1+シスプラチン併用療法群」に分けられ、全生存期間などを比較することになっている。症例数は180例(腹腔内投与併用群120例、標準治療群60例)が予定されている。

「2011年10月に症例の登録を開始し、当初の予定通り、2013年9月頃に180例の登録が終了する見込みです。そこから2年間の観察期間を設け、2015年に結果が出ることになります。ただし、登録完了前に中間解析が行われ、その結果によっては、症例数を増やす可能性もあります」

症例数は統計学的に算出される。中間解析の結果から、有効性を証明するデータを得るために必要十分な症例数を、統計学者が計算して出すのだという。

この臨床試験に参加しているのは、全国の17施設(表4)。あと3施設がいま申請中で、今後増える可能性がある。

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