脳幹の腫瘍の治療は開頭手術でよいか?

回答者・福田 直
千葉徳洲会病院脳神経外科部長
発行:2014年8月
更新:2014年11月

  

45歳の男性です。本日病院で、延髄に約2cmの腫瘍があると説明を受けました。治療については、まず2週間後に入院し、開頭手術を受けることになりました。摘出した腫瘍が悪性の場合は、放射線治療をするとのことです。手術を受けるのは県内でもかなり大きな病院ですが、なにぶん田舎であり、脳の大きな手術を受けるとなると、非常に不安です。実績のある他の病院で手術や他の治療法の検討もしたほうがよいのでしょうか?

(45歳 男性 青森県)

組織を調べて治療法を決めるために手術は必要

千葉徳洲会病院脳神経外科部長の
福田 直さん

脳腫瘍の治療には大きく分けて、手術、放射線、薬物療法があります。脳は、病気によるダメージでも、治療によるダメージでも、1度ダメージを受けてしまうと、脳そのものの回復は困難です。そのため、治療を経て、最終的にいかに健康な脳を多く残すことができるかが大事になります。

脳腫瘍の種類、症状、場所、大きさ、成長力、また、患者さんの年齢、体調(併存疾患や既往など)、社会的背景などを含めて検討し、それぞれの患者さんにとって最も利があると思われる治療法を単独もしくは組み合わせて選択していくこととなります。45歳であれば体調に関しては大きな問題がないことが多いため、今回は社会的背景に関しては考慮せず、脳腫瘍そのものを主体にして回答したいと思います。

脳腫瘍の治療は、その腫瘍の種類と成長力を詳細に把握することが重要で、そのためには一部分でも腫瘍の組織を摘出し病理診断をすることが重要です。

摘出した腫瘍が良性の場合、良性脳腫瘍は放射線や薬物の効果が得られにくいことが多く、治療の主体は手術になります。また、悪性脳腫瘍はその悪性度によりますが、手術での完治は得られないことが多く、腫瘍によっては放射線や薬物が著効するものもあることから、手術は病理診断をつけることが主体となり、摘出量は場所や症状により決定します。手術治療は、病理診断が行えて、確実かつ迅速に腫瘍が減量もしくは全摘出されることが最大のメリットです。

ご相談の患者さんについては、症状、大きさがわかりませんが、延髄もしくはその周囲にあるとのことです。延髄は、呼吸運動や心臓の拍動、飲み込みなど、生存に欠かせない機能を司るため、手術は大変難しくなります。そのため手術には、十分な経験と、術中に神経が維持されていることを確認するための、神経モニターが必要です。

また、術前の検査で悪性腫瘍が疑われる場合はとくに、前述のように延髄が重要な機能を損なわないよう、手術は最小限にとどめたほうがいいため、迅速病理診断(手術中にある程度の病理診断をつけること)ができる病院であることが望ましいです。

現在かかっている病院で治療する際には、脳腫瘍の手術数、神経モニターの有無、迅速病理診断の可否は確認されたほうがよいですが、手術後の追加治療やその後のフォローや後療法を考えると、地元の中核病院との関係は重要です。他の病院での治療を検討される場合でも、現在の病院の先生とよく相談の上決定されることが必要です。

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