タキソールのしびれ。対処法は?

回答者・新井 学
獨協医科大学越谷病院泌尿器科准教授
発行:2014年4月
更新:2014年11月

  

精巣腫瘍でタキソールによる抗がん薬治療を受けた夫のことでうかがいます。治療が一段落して3カ月が経つのですが、副作用の手足のしびれが日に日に悪化しています。

抗がん薬投与中には、単なるしびれの症状だったのですが、今は痛くて眠れない状態です。手先足先の感覚もないため、歩行中に転んだり、お箸がうまく持てません。この程度の症状については体験者からも話を聞いていたので想定内でしたが、激痛で、もがき苦しむ時間が1日に何回もあります。かかりつけの医師に、痛み止めや漢方薬を出してもらいましたが効果がまったくありません。

治療を終えて時間が経てば副作用もだんだん軽くなっていくものかと思っていました。しかし、実際はその逆で、本人も「いつまでこの痛みに耐えないといけないのか」と相当参っています。

個人差もあるかと思いますが、しびれがこのような強い痛みになることはあるのでしょうか?

また、主治医や周りの看護師さんからは「しびれは治らないものだと思ってください」と言われていますが、そうなのでしょうか?

(31歳 女性 福島県)

時間はかかるが 様々な薬がある

獨協医科大学越谷病院泌尿器科准教授の新井 学さん

手足の皮膚や筋肉などにある末梢神経は、感覚や運動の信号を伝える働きをします。この末梢神経がダメージを受けることによって生じるのが、しびれの症状に代表される末梢神経障害です。タキソールやタキソテールに代表されるタキサン系の薬剤やシスプラチンなどの白金製剤、その他の抗がん薬の副作用としてよく起こります。

タキソールによるしびれの症状としては、手の指先の感覚が抜けて物を触った感じがしない、足先の感覚がなくなって歩きにくくなるなどがよくみられます。症状が強くなると痛みとして感じることがありますが、この方のように強い痛みとして現れるのは、比較的稀だと思います。

確かに、末梢神経障害の症状は、すぐには取り去りにくいことが多く、抗がん薬の治療を終えてから強まることもあります。しかし、様々な薬を使っていくことで、時間はかかりますが症状を和らげることができる場合も多くあります。

通常は、まず鎮痛薬を用います。この方がすでにお使いの鎮痛薬がどのようなものかはわかりませんが、鎮痛薬の効果を上げるためしばしば鎮痛補助薬を使います。

鎮痛補助薬としては抗痙攣薬(こうけいれんやく)のガバペンやテグレトールが有名ですが、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)などの漢方薬、トリプタノールなどの抗うつ薬も使われます。痛みが強い場合は、オピオイドを用いるのも選択肢の1つです

また最新の研究では、サインバルタ(第3世代の抗うつ薬)という薬がタキサン系の化学療法によって生じた末梢神経障害による痛みに効果があったという米国の報告があります。この薬は、糖尿病による末梢神経障害に対して日本でも認可されている薬です。

そのほか、サプリメントにも海外の学会で、末梢神経障害への効果が示されたものがいくつかあります。アセチル-L-カルニチンやメラトニンは、タキサン系の副作用による末梢神経障害に有効とされ、また、アルファリポ酸というもともとは糖尿病などの神経障害予防に効果のあるとされたサプリメントですが、タキソテールとシスプラチンによる神経炎を軽減したという研究報告があります。どれも日本で入手できるものです。

症状を取り除く対策はいろいろとありますので、主治医とご相談の上、試されてみてはいかがかと思います。

タキソール=一般名パクリタキセル タキソテール=一般名ドセタキセル シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ ガバペン=一般名ガバペンチン テグレトール=一般名カルバマゼピン トリプタノール=一般名アミトリプチリン サインバルタ=一般名デュロキセチン

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