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抗がん剤の副作用「皮膚障害」にどう対処する?
早期発見・早期治療で重症化を防ごう!

監修・アドバイス:飯野京子 国立看護大学校成人看護学教授
取材・文:池内加寿子
発行:2006年2月
更新:2013年8月

  

飯野京子さん 国立看護大学校
成人看護学教授の
飯野京子さん

イラスト

いいの けいこ
1960年生まれ。
82年新潟大学医療技術短期大学部卒。
99年聖路加看護大学大学院修士課程卒。
82年国立がん研究センター中央病院看護師。
01年国立看護大学校成人看護学教授。
専門は成人看護学、がん看護。


抗がん剤治療中に皮膚トラブルが起こったら?
清潔を心がけ、保湿剤やクリームで潤いを補給し、皮膚を保護する

がん治療に関連する皮膚のトラブルには、抗がん剤の一般的な副作用として現れる「皮膚障害」、抗がん剤が血管外に漏れたときに起こる「漏出性皮膚炎」、特定の薬剤を使用したときにみられる「発疹」、放射線をかけたときに起こる「放射性皮膚炎」などがあります。副作用対策に詳しい国立看護大学校教授の飯野京子さんに、それぞれの特徴と対策をうかがいました。

皮膚障害

「抗がん剤を使うと、皮膚の色素沈着、乾燥(乾燥性皮膚炎)、指先や爪の硬化、黒ずみ、ひび割れなどといった症状が起こることがあります。抗がん剤の作用により皮膚表皮の新陳代謝が抑えられるのが原因です」と、飯野京子さんは説明します。

「抗がん剤は細胞分裂の速い細胞に作用しやすいので、皮膚の中では一番新陳代謝の盛んな表皮の基底層がダメージを受け、皮膚の再生能力がにぶります(コラム参照)。同時に、皮脂腺や汗腺の働きもそこなわれ、皮膚のうるおいが減って乾燥し、外部の刺激や細菌から保護する防御機能も弱くなります。そのため、乾燥性皮膚炎などの炎症が起こりやすく、外傷も治りにくくなります。爪の色が黒く変色するのは、爪を造るもとの細胞の爪母細胞が刺激され、メラノサイト(色素細胞)の増殖が盛んになることが原因といわれています」

皮膚の新陳代謝は、骨髄や粘膜など盛んに新陳代謝を繰り返している細胞に比べるとスローペースですから、ゆっくりと症状が現れ、治療終了後、数カ月ほどで徐々に治ることが多いそうです。


図:皮膚の構造

皮膚障害が起こるわけ

皮膚は表皮と真皮、脂肪組織などの皮下組織で構成されています。中でももっとも新陳代謝が早いのは、表皮の一番下にある基底層という部分です。基底層で増殖した細胞は皮膚表面に上がってきて角質層になり、アカとなってはがれ落ちます。約35日から45日で新しい皮膚に生まれ変わりますが、基底層がダメージを受けると、新しい細胞が生まれにくくなり、古い細胞と混ざり合い、かさつきや黒ずみなどの原因になります。


図:静脈炎

静脈炎
抗がん剤の作用で血管内皮細胞がダメージを受け、痛みを伴い、静脈炎を起こす

図:皮膚炎

皮膚炎
抗がん剤が血管から皮膚表面の方向に漏れると、皮膚の炎症になる

図:皮下脂肪組織炎

皮下脂肪組織炎
抗がん剤が血管から皮膚の内側方向に漏れると、皮下脂肪組織が障害を受ける


皮膚障害を起こしやすい抗がん剤は、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、タキソール(一般名パクリタキセル)、エンドキサン(一般名シクロホスファミド)5-FU(一般名フルオロウラシル)などが代表格。

「脱毛やしびれを併発する薬剤も多いのですが、細菌感染を防ぐために、脱毛中でも頭皮を傷つけないようにシャンプーし、手先の感覚が鈍いときでも手を洗うなど、清潔に保つことが大切です」(飯野さん・以下同)

石けんのつけすぎは肌荒れの原因になるので避け、かさつきが気になるときは保湿剤やハンドクリーム、尿素入りのクリームなどをつけます。畑仕事などをする場合は、手袋をして傷を防ぎましょう。料理や家事の際、ごく薄手のゴム手袋をするのも一案ですが、しびれがあるときは動きが鈍り、かえって危険が増すこともあります。

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