長谷川記子の心と体の特効薬

香りの力で心の重みを軽くして


発行:2004年6月
更新:2013年8月

  

はせがわ のりこ
星薬科大学薬学部卒業。
香りや予防医学への興味から、ヨーガ・薬膳・ハーブのアロマテラピーを研究。
薬剤師、アロマテラピスト。著書『ガンを癒すアロマテラピー』(リヨン社)

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い。専門薬剤師がアドバイスいたします。「ジョイ ハート」はこころと体の両面からあなたの健康をサポートします。カウンセリングは予約制です。
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イラスト:レモン

高村光太郎が書いた『智恵子抄』の智恵子は、病室に届けられた1個のレモンでひとときの幸せを満喫することができました。実は、私も同じような話を知っています。その人は50代前半の女性で、がんと知らされてからとても落ち込んでいました。抗がん剤治療は効果があったものの、がんにかかる前よりも、うつ状態がいっそうひどくなってしまったのです。

そんな彼女を救ったのは、レモンの香りでした。読者の皆さんは意外に思われるでしょうが、たった1個のレモンの香りが、彼女の心を癒したのです。

香りは鼻腔上皮粘膜にある嗅細胞から、電気信号のような形で脳にある大脳辺縁系に入ります。視覚、聴覚、皮膚感覚などのほかの感覚は、大脳辺縁系に入る前に大脳皮質を通るので、直接大脳辺縁系に入るのは嗅覚だけです。 大脳辺縁系は、嗅脳と呼ばれるほど嗅覚と関係が深く「快・不快」を感じたり、過去の記憶と結びつけたりします。

病室に届けられたレモンの香りをかいだ彼女は、昔初恋の人と一緒にレモンを搾り、レモンスカッシュを飲んだことを思い出して快い幸福感に包まれました。そしてティータイムにレモネードを作り、ほっと一息つきながら飲むようになったのです。いつしかレモンの香りは、彼女が忘れかけていた微笑を取り戻させてくれました。 アロマテラピーには、こうした目に見えない心理的効果があります。現代の医学の治療法では、がんの原因になる心の緊張や不安まで取り除くことはできません。でもアロマは、香りという見えない薬で心を和らげ、ストレスを緩和することができるのです。

私は患者さんにアロマトリートメントをして差し上げるとき、カウンセリングを大切にしています。がん患者さんの持つ心の重みが軽くなり、生きることは楽しいと感じてもらいたいと願っています。

私が受け持った乳がん患者さんの中に「この病気は私がサインを出したのよね。私の病気は無駄じゃなかったのよね」と言った方がいました。彼女は医師で、治療で仕事を休んでいる間にハーブやアロマの勉強をし、職場に復帰したら老人医療に生かしたいと言います。彼女の目は輝き、新しい仕事への意欲であふれていました。がんになったことをマイナスと考えず、立ち止まって自分にできることを見つめ直し、新しい発想が生まれてきたのでしょう。

今、がんを抱えている方は、小さなことでいいですから、自分にできる楽しみを見つけてください。たとえば子どものためにセーターを1枚編んであげるのもいいでしょう。くれぐれも「しなければならない」と思い込まないで。無理なくできる範囲でいいのです。自分と向き合い、がんを前向きに捉えることによって、人生は変わっていくと思います。

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