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期待される日本発の治療法開発

切除不能または術後再発胆道がん 「切れ味の良い」FOLFIRINOXの臨床試験開始へ

監修●伊佐山浩通 東京大学大学院医学系研究科消化器内科学准教授
取材・文●「がんサポート」編集部
(2016年7月)

「FOLFIRINOX療法は、将来的には標準治療の第一選択になる可能性があります」と期待を語る
伊佐山浩通さん

胆汁を十二指腸まで運ぶ胆道に発生するがんは早期に発見することが難しい。罹患者に高齢者が多いこともあり、手術で切除することが難しく、化学療法が選択されるケースも多い。現在は3剤による組み合わせで対応されているが、新しくFOLFIRINOXという4剤併用療法の臨床試験(先進医療B)が計画されている。

幅広い胆道がん

図1 胆道の構造

肝臓で作られた消化液である胆汁の通り道となる胆管、胆嚢、乳頭部を合わせて胆道と呼ぶ。胆汁は肝臓内の肝内胆管から胆嚢に運ばれて一時的に蓄えられ、十二指腸乳頭部で消化管につながり、放出される。

胆道を部位ごとにもう少し分類すると、肝臓の中を走る胆管を肝内胆管と言い、肝臓の外に出てから乳頭部の手前までを肝外胆管という。肝外胆管は、肝門部から胆嚢までの肝門部領域胆管と、消化器管に近い乳頭部の手前までの遠位胆管に分けられる(図1)。

肝・胆・膵臓のがんに詳しい東京大学大学院医学系研究科消化器内科学准教授の伊佐山浩通さんは、「ひと口に胆道がんで括ろうとしても、それぞれの部位により、どこにどのような浸潤をするのかが違うため病態が異なります。胆嚢がんで早期に発見されれば根治的手術ができる一方で、肝門部胆管がん手術は高い技術が要求されるので、この分野のエキスパートが診なければなりません」と語る。

死亡者数では6番目の多さ

国立がん研究センターのまとめによると、2015年の胆道がん罹患者数(予測値)は約2万6,700人と、がん全体の11番目に当たる3%ほどだが、一方で死亡者は1万9,200人に上り、肺、大腸、胃、膵臓、肝臓がんに次ぐ多さになっている。

症状としては、多くの場合で黄疸が見られる。胆管内にがんができると管が狭められ、胆汁が流れにくくなる。すると、肝臓から送られてきた胆汁が胆管から逆流して血管の中に入ってしまい、血液中のビリルビン濃度が高くなるため、皮膚や目の白い部分が黄色くなってしまう。右上腹部痛や白っぽい便も見られる。

どこにゴールを置いた治療をするか

治療選択について伊佐山さんは、「どこにどのようなゴールを置いて治療していくかを決めなければなりません。ゴールはたくさんあります。根治を目指す、生存期間を延ばす、症状を取るなど、腫瘍の状態を把握した上で、よく患者さんと相談して決めます。また、治療に訪れる患者さんの年齢が高いので、腫瘍因子と患者側の因子の組み合わせで考えることが求められます」という。

どこでどのように浸潤しているか、胆管をどのようにつぶしているかなど考慮することは多い。切除可能ならば切除するというのが、基本的な考え方だ。しかし、遠隔転移がみられるなどⅣ(IV)期になった患者の場合は手術ができないので、化学療法や放射線療法となる。またⅣ(IV)期になっていなくても、患者が高齢で切除手術に耐えられそうもないというときも化学療法の対象となる。

伊佐山さんは、「切除術は肝臓をかなり大きく取るケースもあるなど侵襲度が高い。胆管は肝動脈と非常に近い位置にあるので、そこに浸潤があると肝切除ができなくなります」と判断の難しさを指摘する。

進化する化学療法

近年、切除不能・術後再発進行胆道がんに対する化学療法が進歩している。現在、胆道がんの化学療法として使用されているのは3剤。ゲムシタビン、シスプラチン、TS-1だ。

「世界的なスタンダードはゲムシタビンとシスプラチンによるGC療法です。さらに日本の製薬メーカーが開発したTS-1とゲムシタビンを組み合わせたGS療法もあります。GS療法はGC療法と比べても治療成績はほぼ同等で、TS-1はシスプラチンよりも副作用が少なくて使いやすいバランスのとれた薬です」(伊佐山さん)

GCとGSの比較試験が行われており、GSの非劣性が証明されれば、毒性や経口薬である使いやすさを考えると、GSのほうが標準治療の第一選択になる可能性が高い。

伊佐山さんは「3剤しかないのでどう組み合わせるかが現状の課題」と指摘する。

さらに、3剤を併用した場合(GCS療法)の治療効果をGCと比較した臨床試験が進行中で、関西肝胆道癌治療グループ(KHBO)などが行った第Ⅱ(II)相試験で効果と忍容性が確認され、第Ⅲ(III)相試験が行われている。

ゲムシタビン=商品名ジェムザール シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム