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判断が分かれる難しい「がん」だから、治療の意義と選択肢をおさえたい
ガイドラインを知って胆道がんの確実な治療を受けよう

監修:山本雅一 東京女子医科大学消化器外科学教室主任教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2012年10月
更新:2013年5月

  

山本雅一さん

「胆道癌診療ガイドライン」
の作成委員を務める
山本雅一さん

「手術できるかどうか」で、治療の見通しが大きく変わる胆道がん。専門家でも治療方法の判断がわかれる難しいがんですが、化学療法やステントを利用した治療など、実にさまざまな試みがなされています。
治療のガイドラインを通して、胆道がん治療の基本や新しく期待できる治療など、患者さんに役立つ情報をわかりやすく解説します。

胆道がんは胆汁の通り道にできるがん

[図1 胆道の構造]
図1 胆道の構造

 
[表2 推奨度]

   A    行うよう強く勧められる
B 行うよう勧められる
C1 高いレベルの科学的根拠はないが、行うことを考慮してもよい
有用性が期待できる可能性がある
C2 十分な科学的根拠がないので、明確な推奨はできない
有用性を支持または否定する根拠が十分ではない
D 行われないよう勧められる

胆道がんの治療を解説するにあたり、まず、胆道とそこを通る胆汁の流れから簡単に説明しよう。

消化液の一種である胆汁は、肝臓で作られた後、胆管という細い管を通り、いったん胆のうに貯められる。そして、食べたものが消化管を通過するのに合わせ、胆汁は胆のうから押し出され、その先の胆管を通って十二指腸に分泌されている。

東京女子医科大学消化器外科学教室主任教授の山本雅一さんは、胆道がんについて次のように説明してくれた。

「肝臓を出てから十二指腸に至るまでの胆汁の通り道を胆道といいます。この胆道にできるがんが胆道がんです。肝臓の中にも胆管がありますが、ここにできる肝内胆管がんは、肝臓がんに分類されています。胆道がんは、胆道のどこにでもできる可能性があります」

胆道は図1に示したような構造になっている。肝臓には右葉と左葉があり、それぞれから胆管が出ている。それが合流する部分を肝門部という。その下にある胆管を3つに分け、上部胆管、中部胆管、下部胆管と呼んでいる。下部胆管は膵臓の中を通り、十二指腸につながっている。十二指腸に開口する部分が乳頭部である。胆のうは袋状の臓器で、胆管の途中から枝分かれして
つながっている。

胆道がんは、できた部位によって、肝門部胆管がん、上部胆管がん、中部胆管がん、下部胆管がん、胆のうがん、乳頭部がんに分類されている。

胆道がんの治療について、『胆道癌診療ガイドライン』に基づいて解説していこう。このガイドラインでは、さまざまな診断法や治療法が推奨されているが、その推奨度は表のようになっている(表2)。「推奨度C1」までが、推奨される診断法や治療法と考えていいだろう。

黄疸が出て発見されることが多い

胆道がんになると、黄疸が出ることが多く、この黄疸でがんがわかる場合も少なくない。皮膚が黄色くなるなどの黄疸の症状が現れるのは、がんが胆管をふさぎ、胆汁の流れが滞ると、胆汁の成分が血液に入るからである。

「がんが下流にできていると、症状が現れやすいのですが、たとえば肝門部の合流点より上にできると、なかなか黄疸が出ません。つまり、同じように黄疸でがんが見つかったとしても、比較的早い時期のこともあれば、かなり進行していることもあるのです」

黄疸以外に、発熱や痛みなど、胆石のような症状が現れることもある。胆石があるのと同じで、胆汁の流れがせき止められ、胆管炎が起きることで現れる症状である。

胆道がんの疑いがある場合には、血液検査や腫瘍マーカーによる検査のほか、超音波検査、CT検査、MRI検査などの画像検査が行われる。

切除手術が唯一の根治療法

[図3 胆道がんの治療]
図3 胆道がんの治療

胆道癌診療ガイドライン作成出版委員会編:エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン第1版 p14より引用

胆道がん治療の流れを示したのが「治療アルゴリズム」だ(図3)。これを見てもわかるように、胆道がんの治療では、切除手術が可能かどうかが大きな問題となる。「現在のところ、胆道がんを根治できる治療法は切除手術のみといえます。まず、切除手術が行えるのかどうかを判定するわけですが、これが非常に重要です」

切除手術ができないのは、どのような場合だろうか。まず、がんが、肝臓、肺、腹膜、遠隔リンパ節などに転移している場合である。このような転移があると、切除手術でがんを取り切ることができないからだ。

「肝臓内の胆管に、がんが広がっていることがあります。これが右葉か左葉の片側なら、肝臓半分と胆管を切除すればいいのですが、肝臓全体に広がっていると、切除不可能になります。肝臓を全部取ってしまうわけにはいかないからです」

肝臓には、肝動脈と門脈という2つの大きな血管から血液が流れ込んでいる。それぞれが右葉と左葉に分かれて入っていくが、両側の血管にがんが浸潤している場合にも、切除手術はできないことが多い。片側なら血管ごと切除すればいいが、両側を切除することはできないからだ。

ガイドラインでは、切除できない胆道がんについて、こう記載されている。

『肝、肺、腹膜転移、遠隔リンパ節転移は切除不能。(推奨度B)局所進行因子については明らかなコンセンサスがない。』

つまり、「このような状態になったら切除手術はできない」という明確なボーダーラインがないのが現状なのだ。「手術できるかどうかは、命にかかわる重要な問題です。この分野の手術を専門にする外科で、セカンドオピニオンを受けるといいでしょう」

胆道がんの外科的治療を専門にしている診療科がある病院を探すには、日本肝胆膵外科学会認定による高度技能専門医・指導医の修練施設などが手がかりになる。これらは、日本肝胆膵外科学会のホームページで調べることができる。


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