膀胱がんの基礎・最新治療 高齢化に伴い罹患率が上昇 5年生存率は病期別に10~90%

古賀文隆さん
膀胱がんは、ほかのがんとは少し違った性質を持つ。主要な要因も分かっている。従来のガイドライン的な治療に加え、さらに近年はハイテク機器を駆使した“日本発”の最新治療も現れた。膀胱がんの基礎から最新事情までを都立駒込病腎泌尿器外科医長の古賀文隆さんに聞いた。
Q1 膀胱の役割は?
尿を作り、溜めて体外に排泄する臓器・器官をまとめて尿路といいます。尿路は、腎臓、腎盂・尿管、膀胱、尿道からなります。膀胱は、尿を溜めて排出する、筋肉でできた袋状の臓器です。
膀胱の容積は、成人男子で約600cc、最大容積は800ccで、女性は男性の6分の5とされています。膀胱内の尿が一定量(約250cc)になると、膀胱中枢が刺激されて排尿したくなります。
膀胱の表面は尿路上皮という粘膜で覆われており、伸縮性が大きいことが特徴です。形状、大きさは尿の量で変化します。成人で尿が溜まっていないときは直径3cmほどの球形で、尿が充満するとほぼ卵形となります。膀胱がんのほとんどは、この尿路上皮ががん化することによって引き起こされます。

Q2 膀胱がんってどんな人がなりやすい?
膀胱がんは10万人に8人ほどが罹患し、2人ほどが亡くなるという統計があります。50歳以上の方に多く、社会の高齢化に伴い罹患率が上がっています。男女比は4:1です。
喫煙が大きな原因となることが分かっています。発がん物質が尿の中に混じり、それを貯留する膀胱が影響を受けるためと考えられています。
Q3 発見と診断は?

自覚症状としては、血尿が見られます。赤色とは限らず茶褐色やコーラ色にもなります。しかし、間歇的な症状のために、ピタリと血尿がなくなることがあります。ここで放置すると進行してしまうので、早めの受診をお勧めします。排尿時の痛みや頻尿、排尿困難などもあります。
検査は、膀胱鏡(尿道から膀胱を診る内視鏡)で診断がつくことが多いです。いったん膀胱がんの診断がつけば、腎盂・尿管にも併発していることもあるため、エコーやCT(コンピューター断層撮影)などでそれらの器官もチェックします。

膀胱鏡による診断で深くまで浸潤しているがんが疑われる場合は、腫瘍の深達度をMRI(磁気共鳴画像)で調べます。MRIの中でも、「拡散強調画像」による検査は、解剖学的な情報だけではなく、がんの悪性度や予後の予測にも有用です。
膀胱がんの最終診断は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT=内視鏡手術)、または腫瘍生検で採取した腫瘍組織の病理学的検査によります。
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