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さい帯血移植の普及が白血病患者さんに治癒への希望を与えている
さい帯血移植は骨髄移植と同程度の治療成績になってきた

監修:谷口修一 虎の門病院血液科部長
取材・文:平出浩
発行:2008年9月
更新:2013年4月

  
谷口修一さん
虎の門病院血液科部長の
谷口修一さん

日本では毎年約6000人が白血病などにかかっており、そのうち約2000人が造血幹細胞移植を必要としている。
しかし、骨髄移植を希望しても高齢などの理由で移植を受けられない患者さんも多くいる。
そのような患者さんを「ミニさい帯血移植」で救うことも可能になってきた。国内でさい帯血移植の症例が最も多い、虎の門病院血液科部長の谷口修一さんにさい帯血移植の利点と問題点について聞いた。

さい帯血移植が適応になる病気とは

[提供から移植までの流れ]

妊娠
受診することになった産科施設が、さい帯血バンクの採取施設であった
さい帯血提供の同意
趣旨をよく理解し同意書にサインする
出産とさい帯血採取
赤ちゃんが生まれ母子ともに健康でさい帯血を採取する
さい帯血の分離と保存
摂取されたさい帯血は、-196℃の液体窒素の中で保存される
血液検査そして退院
出産後、感染症等の検査のため、検査が行われる
6カ月後のアンケート
赤ちゃんの健康状態をたずねるアンケートが送られてくる
患者さんが移植のため検索
移植を希望する患者さんが適合するさい帯血をホームページから検索
さい帯血の申し込み
適合したさい帯血をさい帯血バンクに申し込む
移植
凍結されたさい帯血は解凍され、静脈から注入
生着
2~4週間程度で健康な血液を造り始める
社会復帰
早ければ移植後2~3カ月で退院、社会復帰へ

さい帯血移植のさい帯血とは、赤ん坊の血液のことである。もう少し正確に言えば、母親と胎児とを結ぶさい帯と骨盤、いわゆるへその緒に含まれる血液のことである。この血液から赤血球をできるだけ取り除きボリュームを減らし、液体窒素中(マイナス196℃)に凍結保存したものを造血幹細胞移植に用いる治療法をさい帯血移植という。

さい帯血には、多くの造血幹細胞(血液を作るもとになる細胞)が含まれている。このさい帯血は白血病などの血液疾患に有効に作用する。

虎の門病院(東京都港区虎ノ門)の血液科部長の谷口修一さんによると、主な適応疾患は次のとおりである。

・急性リンパ性白血病
・急性骨髄性白血病
・慢性骨髄性白血病
・骨髄異形成症候群
・悪性リンパ腫
・再生不良性貧血
・先天性免疫不全症
・先天性代謝異常疾患

ただし、これらの疾患であれば、すぐにさい帯血移植が行われるわけではない。再発リスクの高い患者さんや抗がん剤治療の効果が低い患者さん、予後(病気の経過についての見通し)の不良が予測される場合などに実施が検討される。

上記の疾患のうち、急性リンパ性白血病と急性骨髄性白血病の2つが最も多く、さい帯血移植が行われている。「骨髄移植が適応になる疾患は、基本的にはさい帯血移植もすべて適応になる」(谷口さん)という。

さらに、移植の作業自体もほとんど同じであると、谷口さんは話す。共に点滴による移植で、時間はどちらも10~15分程度である。それに比べて骨髄移植は2~3時間かかる。

すでに採取されている赤ん坊のさい帯血を活用

写真:さい帯血の採取
さい帯血の採取

では、骨髄移植とさい帯血移植とで、一体どう違うのだろうか。

まず、移植が行われるまでの期間である。骨髄移植はドナー(提供者)の登録から移植を実施するまでに、早くとも半年近い期間を要するが、さい帯血移植は速やかに実施できる。そのため、緊急を要する患者にはさい帯血移植で対応することになる。

また、移植を受ける患者さん自身には大きな違いはないが、ドナーの負担は雲泥の差がある。骨髄移植では、ドナーに全身麻酔をかけて骨髄を採取するという大がかりな手術が行われる。一方のさい帯血移植では、すでに採取されているへその緒の血液を使うだけだから、ドナーである赤ん坊やお母さんの身体的な負担はいっさいない。

一方、生まれたばかりの赤ん坊のさい帯血を保存して移植に使用することによるリスクもある。それは、さい帯血を提供してくれた赤ん坊が、先天性の何らかの病気にかかっている可能性がある点だ。そのため、「日本さい帯血移植バンクネットワーク」では、生後6カ月を経た時点で親にアンケート調査を実施し、ドナーのさい帯血の安全性を図るように努めている。

急速に普及するさい帯血移植

骨髄バンクによる日本初の非血縁者間の骨髄移植が実施されたのは1993年、対して非血縁者間のさい帯血移植が日本で始めて実施されたのは97年だ。

その後、双方ともに実施数は伸び続け、累計は骨髄移植のおよそ1万例に対し、さい帯血移植は5000例超となっている。近年は「骨髄移植、さい帯血移植ともに、国内で年間700~800例が実施されている」(谷口さん)状況だ。ちなみに、国内でさい帯血移植の症例数が最も多い医療施設は虎の門病院である。

さい帯血移植がこれほど普及してきた背景は、幾つかの要因がある。

1つには、先に見たように、移植を実施できるまでの期間が短く、簡便であることが挙げられる。

2つ目として、採取したさい帯血を長期間、保存できることもさい帯血移植を後押しした。

3つ目として、白血球の型であるHLA(ヒト白血球型抗原)がすべて一致しなくても移植できる点が挙げられる。

骨髄移植では、6抗原あるHLAが患者とドナーとで完全に一致しないと移植できないが、さい帯血移植では、6抗原のうち2抗原まで不一致であっても移植できる。その分、ドナーを見つけやすいというメリットがある。

こうした背景があって、さい帯血移植は急速に普及してきた。

[さい帯血移植件数の推移(年齢別)]
図:さい帯血移植件数の推移(年齢別)

(日本さい帯血バンクネットワーク調べ:2008年は3月末日現在)


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