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レブラミドやビダーザなどの新薬で治療成績は向上
新薬で白血病への移行をストップ!骨髄異形成症候群の最新治療

監修:小倉和外 静岡県立静岡がんセンター血液・幹細胞移植科副医長
取材・文:文山満喜
(2012年4月)

小倉和外さん
「新薬のビダーザ、レブラミドは
白血病への進行を遅らせる
効果があります」と語る
小倉和外さん

進行すると、白血病に移行してしまうケースもある骨髄異形成症候群。
しかし最近は、白血病への移行を遅らせることができる有望な新薬が次々に登場しています。

血液細胞を作る工場が不良品を生産する病気

[骨髄異形成症候群とは?]
骨髄異形成症候群とは?

白血球、赤血球、血小板などの血液細胞を作る工場(骨髄)が不良品(異形成の血液細胞)を作ってしまい、血液細胞の働きに異常が生じてしまうという病気

血液がんの一種である骨髄異形成症候群。あまり聞きなれない言葉ですが、どのような病気なのでしょうか。

静岡県立静岡がんセンター血液・幹細胞移植科副医長の小倉和外さんにわかりやすく解説してもらいました。

「骨髄異形成症候群を簡単に説明すると、白血球、赤血球、血小板などの血液細胞を作る工場(骨髄)が不良品(異形成の血液細胞)を作ってしまい、血液中に出荷できず血液中の細胞が減少し、血液細胞の働きに異常が生じてしまうという病気です」

つまり、骨髄中では正常ではない細胞がどんどん増えていきます(無効造血)が、血液中に供給できないことで細胞の減少を来たし、本来の正常な機能を果たす赤血球、白血球、血小板が不足してしまう状態をいうのです。

骨髄異形成症候群の発症メカニズムはまだ解明されていませんが、骨髄中の血液細胞を作り出す造血幹細胞が異常を起こすため、血液細胞の働きに異常が生じることがわかってきています。

骨髄異形成症候群になると、正常な血液細胞が足りなくなるため、さまざまな症状が現れます。

・赤血球の減少…貧血、疲労感、息切れなど
・白血球の減少…発熱、肺炎、口内炎など
・血小板の減少…出血など

しかし、骨髄異形成症候群は数カ月から数年にわたって徐々に進行する病気のため、病気の初期には症状がみられないことも多いのが特徴です。

病気が進行してしまうと、血液をうまく作ることができなくなり、造血不全状態になったり、10~30%の患者さんでは骨髄内に未熟な血液細胞である芽球が充満し、正常な血球を作ることができなくなる急性骨髄性白血病へと移行します。

急性骨髄性白血病との境界は、骨髄中の芽球の割合が20%を超えた時点で急性骨髄性白血病に移行したと診断されます。

現在、骨髄異形成症候群の国内総患者数は7100人程度とみられ、年齢別では高齢者に多く認められます。高齢化社会への移行に伴い、患者数は増加していると推測されています。

8つに分かれる病型で治療を決定

[骨髄異形成症候群の病型分類]

病型 末梢血の状態 骨髄の状態
 RA 
不応性貧血
貧血
芽球(-)または
ごくわずか
赤芽球系の異形成のみ
芽球5%未満
環状鉄芽球15%未満*
 RARS 
環状鉄芽球を伴う
不応性貧血
貧血
芽球(-)
赤芽球系の異形成のみ
芽球5%未満
環状鉄芽球15%以上*
 RCMD 
多血球系異形成を
伴う不応性血球減少症
血球減少(2~3系統)
芽球(-)またはごくわずか
アウエル小体(-)
単球1×109/ℓ未満
2系統以上で10%以上の細胞に異形成
芽球5%未満
アウエル小体(-)
環状鉄芽球15%未満*
 RCMD-RS 
多血球系異形成と
環状鉄芽球を伴う
不応性血球減少症
血球減少(2~3系統)
芽球(-)またはごくわずか
アウエル小体(-)
単球1×109/ℓ未満
2系統以上で10%以上の細胞に異形成
芽球5%未満
アウエル小体(-)
環状鉄芽球15%以上*
 RAEB-1 
芽球増加を伴う
不応性貧血
血球減少 芽球5%未満
アウエル小体(-)
単球1×109/ℓ未満
1~3系統に異形成
芽球5~9%
アウエル小体(-)
 RAEB-2 
芽球増加を伴う
不応性貧血
血球減少
芽球5~19%
アウエル小体(±)
単球1×109/ℓ未満
1~3系統に異形成
芽球10~19%
アウエル小体(±)
 MDS-U 
分類不能型
骨髄異形成症候群
血球減少
芽球(-)またはごくわずか
アウエル小体(-)
顆粒球系または巨核球系の1系統に異形成
芽球5%未満
アウエル小体(-)
 5q-症候群 
染色体異常del(5q)
を伴う骨髄異形成
症候群(5番染色体異常)
貧血
芽球5%
通常、血小板数は正常
または増加
低分葉核をもつ巨核球が正常または増加
芽球5%未満
アウエル小体(-)
del(5q)の単独異常
*赤芽球に占める比率
8つに分類されたの病型はさまざまで、治療法も違う
WHO分類第3版による骨髄異形成症候群の病型分類

骨髄異形成症候群の治療は、WHO(世界保健機関)の病型(タイプ)分類に基づいて治療を行っていきます。

この分類が骨髄異形成症候群の診断における国際標準となっており、現在、8つの病型に分類されています。

一般的に、1系統の血球の異形成を伴う不応性血球減少症(RA)や、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)は、造血不全状態に移行しやすいタイプ。一方、芽球の増加を伴う不応性貧血(RAEB-1、より進行したRAEB-2)は、急性骨髄性白血病に移行しやすいタイプと考えられています。

病気の進行に伴い、病型が移行する場合もあります。

骨髄異形成症候群は、この病型によって治療方針が決まるのです。

症状の軽い患者さんは経過観察のみで良い場合も

[骨髄異形成症候群の症状]
骨髄異形成症候群の症状

正常な血液細胞が足りなくなるため、さまざまな症状が現れ、患者さんによって異なる
(資料 : 小倉和外氏)

骨髄異形成症候群と診断されても、すぐに治療が始まるわけではありません。

症状の軽い患者さんでは、無治療で経過観察のみとすることも少なくないといいます。

「骨髄異形成症候群は、高齢者の病気です。高齢者の特徴として、骨髄異形成症候群以外の合併症を持っている人は多く、体の状態と病気の経過を天秤にかけて、治療開始時期や治療法を選択します」

また、骨髄異形成症候群がどの病型なのかを見極めることも重要です。ゆっくり進行するタイプもあれば、数カ月で急性骨髄性白血病に移行してしまうタイプもあるので、最初の診断が重要になります。

不応性血球減少症(RA)や環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)の場合は、基本的に芽球が増えていないため、抗がん剤を使った治療は行いません。ビタミンKやビタミンD、免疫抑制剤、輸血などによる治療を行います。

[骨髄異形成症候群の血液細胞]

骨髄異形成症候群では、巨赤芽球様変化(細胞分裂がうまくいかず大きくなった赤芽球)、微小巨核球(血小板になる途中の巨核球が異形成を起こしたもの)、脱顆粒好中球(好中球にみられる異常)などの異常が起こる 骨髄異形成症候群の血液細胞
(資料 : 小倉和外氏)