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従来の薬では治らないと言われていた難治性のがんに力を発揮する
悪性リンパ腫の治療は新薬の登場で新しい時代を迎えた

監修:小椋美知則 名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科部長
取材・文:柄川昭彦
発行:2008年9月
更新:2013年4月

  
小椋美知則さん
名古屋第二赤十字病院
血液・腫瘍内科部長の
小椋美知則さん

悪性リンパ腫の治療に久々の朗報だ。従来の薬では治らないと言われていた難治性のリンパ腫に対して力を発揮する新薬が2つ登場したからだ。1つは、細胞に取り付いて放射線を放ってがんを叩く、もう1つは、経口の抗がん剤で、副作用もマイルドという点も患者さんにとってはうれしい。

難治性の悪性リンパ腫に効果的な治療薬が誕生

[悪性リンパ腫の分類]
図:悪性リンパ腫の分類

悪性リンパ腫の治療薬として、経口薬であるフルダラ錠(一般名フルダラビン)が2007年に承認され、注射薬のゼヴァリン(一般名イブリツモマブチウキセタン)が2008年になって承認された。この2つの治療薬の相次ぐ登場によって、悪性リンパ腫の治療は新しい時代を迎えたといえそうだ。そこで、名古屋第二赤十字病院の小椋美知則さんに、これらの薬について解説していただくことにした。

「悪性リンパ腫というのは代表的な血液のがんです。白血球には、好中球、好酸球、リンパ球などの種類がありますが、リンパ球ががん化したのが悪性リンパ腫。この病気になると、主にリンパ節に腫瘍ができます」

悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類されている。かつてイギリスのホジキン医師が報告したのがホジキンリンパ腫で、それ以外は非ホジキンリンパ腫。多いのは非ホジキンリンパ腫で、特に日本ではその傾向が強い。

進行の速さによる分類もある。治療しなかった場合に、年単位でゆっくり進行するのが低悪性度リンパ腫、月単位で進行するのが中悪性度リンパ腫、週単位で進行するのが高悪性度リンパ腫だ。

さらに、細胞の種類によっても分類されている。リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞があるが、たとえばB細胞ががん化したものなら、B細胞リンパ腫となる。

ゼヴァリンやフルダラの治療対象となる悪性リンパ腫は、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫と、マントル細胞リンパ腫。マントル細胞リンパ腫は、低悪性度と中悪性度の中間に位置する特殊なリンパ腫である。

「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫は、従来の薬(抗がん剤)では治らないと言われていた難治性の病気です。ゆっくり進行するのですが、従来の化学療法では治癒に至りません。一方、マントル細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の5~10パーセントを占め、最も治りにくいリンパ腫と言われています」

ゼヴァリンとフルダラは、特に治りにくい悪性リンパ腫の薬として承認されたわけだ。

[悪性リンパ腫の代表的な治療法]

低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫・マントル細胞リンパ腫の代表的な治療法
治療法 使用薬剤 備考
R-CHOP療法 リツキサン(リツキシマブ)
エンドキサン(シクロホスファミド)
アドリアシン(ドキソルビシン)
オンコビン(ビンクリスチン)
プレドニゾン(プレドニゾロン)
現在最も標準的治療に近いと考えられている治療法の1つ
フルダラ単剤療法 フルダラ(フルダラビン) 経口剤による治療法
フルダラ、
リツキサン併用療法
フルダラ(フルダラビン)
リツキサン(リツキシマブ)
フルダラ単剤、又はリツキサン単剤に比し同等以上の有効性
「ゼヴァリンによる
RI標識抗体療法」
リツキサン(リツキシマブ)
セヴァリンインジウム
(111lnイブリツモマブチウキセタン)
セヴァリンイットリウム
(90Yイブリツモマブチウキセタン)
国内初のRⅠ標識抗体療法。診断用の投薬1回、治療用の投薬1回の合計2回の投薬で治療終了

細胞に取り付き放射線を照射する薬

まず、ゼヴァリンという薬について解説してもらった。ゼヴァリンは分子標的薬の仲間で、抗体薬に分類されている。抗体薬は他にもいろいろあるが、この薬はきわめて特殊な作用メカニズムを持っているという。

悪性リンパ腫の治療に使われる分子標的薬としては、リツキサン(一般名リツキシマブ)がよく知られている。抗体であるリツキサンは、CD20という標識たんぱくを持つがん(B細胞リンパ腫)細胞を探し出し、そこにとりついて増殖を妨げたり、死滅させる働きをする。実はゼヴァリンも、同じようにCD20をターゲットにした薬なのだ。

「リツキサンは最初に臨床応用に成功した抗体薬ですが、マウスの抗体を、一部ヒトの抗体に置き換えてあります。ゼヴァリンは、置き換える前の、元のマウスの抗体を利用し、さらに治療効果を高めるために、イットリウム90という放射性同位元素を結合させてある薬です。この抗体がCD20を標的にしてがん(B細胞リンパ腫)細胞に取り付くと、放射性同位元素から出るベータ線という放射線が、がん細胞を攻撃する仕組みになっています」

このように、抗体の働きと放射線によって治療する薬を“放射免疫療法薬”という。分子標的薬による治療と、放射線治療を同時に、しかも標的とする細胞にのみ行う画期的治療薬である。

特殊な薬だけに、治療は慎重に行われる。ベータ線を出すゼヴァリンを投与しても、問題がないかどうかの確認が行われるのだ。そのために使われるのが、イットリウム90の代わりに、インジウム111という放射性同位元素を結合させた「インジウム111イブリツモマブチウキセタン」である。

インジウム111は、画像診断に使われるガンマ線という種類の放射線を出す。そのため、ガンマカメラによって全身の画像診断を行うと、投与した薬がどこに集まっているかが明らかになる。これは、同じ抗体を使うゼヴァリンを投与したときに、ゼヴァリンが集まる場所を示しているわけだ。

ゼヴァリンがリンパ節に集まってがん化したリンパ細胞だけを攻撃するならいいが、骨髄や正常な臓器が放射線で照射されては困る。そこで、そのような可能性が疑われる場合には、ゼヴァリンの投与は中止する。このように、ゼヴァリンは安全に治療できることを確認してから投与されることになる。

[ゼヴァリンによるRI標識抗体療法]
図:ゼヴァリンによるRI標識抗体療法


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