• rate
  • rate
  • rate


最初に移植をしなくても、さまざまな薬を使いながら多発性骨髄腫をコントロールしていく
3つの新薬により「15年生存」も可能になった多発性骨髄腫の治療

監修:鈴木憲史 日本赤十字社医療センター血液内科部長
取材:「がんサポート」編集部
発行:2009年11月
更新:2013年4月

  

鈴木憲史さん
日本赤十字社医療センター
血液内科部長の
鈴木憲史さん

かつて骨髄腫は「3年生存」を目標とするほど予後の悪い病気だったが、いまや「15年生存」を視野に入れた治療が可能になってきた。
3種類の新規治療薬、なかでもベルケイド(一般名ボルテゾミブ)の登場が大きなインパクトを与えている。
そんな最前線の骨髄腫薬物治療から、変わりゆく骨髄腫治療を探る。

3つの新規薬剤がもたらした変化

多発性骨髄腫の治療は90年代初めまでに有名なMP(アルケラン〔一般名メルファラン〕+プレドニン〔一般名プレドニゾロン〕)療法のほか、MCNU-VMP(サイメリン〔MCNU、一般名ラニムスチン〕+フィルデシン〔一般名ビンデシン〕+アルケラン+プレドニン)療法、ROAD(サイメリン+オンコビン〔一般名ビンクリスチン〕+アルケラン+デカドロン〔一般名デキサメタゾン〕)療法、VAD(ステロイドパルス療法〔〕+ドキシル〔一般名ドキソルビシン塩酸塩)+オンコビン)療法といった多剤併用療法が導入されていたが、平均生存期間は3年に過ぎなかった。ところが、ここ10年の間に薬物療法が大きな進歩を見せ、生存率はおおいに向上している。日本赤十字社医療センター血液内科部長の鈴木憲史さんは説明する。

「まず自家末梢血幹細胞()の移植の導入により、比較的若い患者さんの症例では平均生存が5年を超えたこと。さらに骨髄腫細胞による骨破壊の活性化を抑えるゾメタ(一般名ゾレドロン酸)などのビスホスホネート製剤によりQOL(生活の質)の改善が認められるようになりました。そしてサリドマイド、ベルケイド、レブラミド(一般名レナリドミド)と、分子標的薬と呼ばれる3つの新しい薬剤が登場し、それまでの治療が効かなくなった、もしくは再発の骨髄腫に有効であることがわかり、その臨床応用が大きな変化をもたらしました」

ベルケイドは日本国内では難治性骨髄腫の適応症で06年12月に発売となり、すでに数千例に使用されている。サリドマイドも、08年10月に再発または難治性骨髄腫の治療薬として承認された。サリドマイドの誘導体(生体内でサリドマイドに変わる)であるレブラミドは、現在、第1相試験、2相試験が終了したばかり。近い将来承認されることが期待されている。

パルス療法=休薬時期をとりつつ、集中的に薬を投与する治療法
自家末梢血幹細胞移植=事前に造血幹細胞(赤血球、白血球、血小板をつくり出す細胞)を自分の末梢血中から採取して冷凍保存しておき、大量の化学療法を行ってがん細胞を根絶した後、保存しておいた造血幹細胞を体内に戻す

[移植後再発骨髄腫の生存期間(メイヨークリニック)]
図:移植後再発骨髄腫の生存期間(メイヨークリニック)
ベルケイド、サリドマイド、レブラミドが登場して生存期間へ与えたインパクト

異常タンパクの産生を防ぐベルケイド

3つの分子標的薬の中でも、骨髄腫治療で最も有用と考えられているのはベルケイドだ。

欧米でベルケイドの有効性を調べる大規模な「APEX」と呼ばれる臨床試験が行われた。多発性骨髄腫に有効であるデカドロンのパルス療法と比較した。これによると、奏効率()はベルケイド群が38パーセント、デカドロン群が18パーセントという結果が得られた。1年生存率も、ベルケイド群が80パーセント、デカドロン群が66パーセントと、ベルケイドのほうが優れていることが示された。

[初回奏効までのサイクル数ー海外第3相試験:APEX試験-]
図:初回奏効までのサイクル数ー海外第3相試験:APEX試験-

鈴木さんはこれまでの臨床経験から、ベルケイドと従来の薬剤との大きな違いを一言でいうと「効き目の良さ」だと話す。

「ベルケイドは、これまでの骨髄腫の治療概念を完全に変えるような画期的な薬です。効く場合は、たとえば腫瘍細胞が骨髄の60~70パーセント程度を占めているような症例で、ベルケイドを1、2コースやっただけで数パーセントまで下がる症例もあります。異常タンパクが正常化し、その結果患者さんはすごく元気になります。また今まで予後不良と言われていた13番染色体欠損を伴う病型の骨髄腫などにもよく効きます。それに、これまでの化学療法で見られるような、脱毛などの副作用がないことも特徴です」

ベルケイドは、骨髄腫細胞が増殖するためのタンパクを作るプロテアソームという酵素の働きを妨げる作用がある。骨髄腫は外敵に対する抗体を作る働きを持った形質細胞ががんになる病気。その結果異常なタンパクが作られ、これが働いて体に様々な悪さをする。プロテアソームの働きを妨げることで、その悪さを防ごうというわけだ。

「本来細胞内では、余計なタンパクができたらアミノ酸という部品に分解してそれをプロテアソームにより再利用するようになっています。ところが、細胞が腫瘍化することによってそのしくみがおかしくなっていて、できそこないのタンパクをどんどん作り出し、そのタンパクがさらに腫瘍の増殖にからみます。ベルケイドはこのプロテアソームだけに働くので分子標的薬と呼ぶことができます」

奏効=効き目があらわれること

[ベルケイドが効果を発揮した例]
図:ベルケイドが効果を発揮した例
07年2月、IgG3572と不応性となり、ベルケイド2mgを3コース開始した症例


同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート12月 掲載記事更新!