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初期治療と転移・再発治療では目的も考え方も大きく異なる点に注意!
がんの生物学的性質を重視して選択する乳がんの薬物療法

監修:髙橋將人 北海道がんセンター乳腺外科医長
取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2012年3月
更新:2013年4月

  
高橋將人さん
乳がんの薬物療法に精通している
高橋將人さん

乳がんの患者さんにとって、薬物療法は非常に重要な治療である。ただ、時と場合、がんの生物学的な性質によって治療の仕方を変える必要がある。そこに注意しながら、解説をみてみよう。

がんの生物学的性質を重視して治療法を選択

[治療の目標と考え方]

初期治療   転移・再発治療
  • がんになって最初に行う治療
  • 再発を防ぐ
 
  • 手術ができない場合や再発した場合に行う治療
  • 生存期間の延長を目指す
  • QOLを維持する
 
 治療をしっかり行う     温和な治療をする 

乳がんの薬物療法は、大きく「初期治療」と「転移・再発治療」という2つの局面に分けられる。初期治療は、がんになって最初に行う治療である。手術前に行う術前治療と、手術後に行う術後治療がある。転移・再発治療は、転移があって手術できない場合や、手術後に再発した場合の治療である。

北海道がんセンター乳腺外科医長の高橋將人さんは、それぞれの治療目標を理解しておくことが大切だと言う。

「初期治療の目標は再発を防ぐことにあります。再発してしまうと治癒を目指すのは難しくなるので、しっかりと初期治療を行い、再発を予防する。それが治癒する人を増やすことにつながります。一方、転移・再発乳がんの治療は、生存期間の延長とQOL(生活の質)の維持が目標です」

薬物療法は、がんの生物学的性質を重視して治療が行われる。そのため、がん細胞のエストロゲン受容体やHER2を調べる必要がある。

エストロゲンは女性ホルモンの一種で、その受容体の有無は、ホルモン療法が効くかどうかの指標となる。エストロゲン受容体陽性なら、ホルモン療法が選択される。

HER2は、分子標的薬のハーセプチン()やタイケルブ()による治療(抗HER2療法という)を行うかどうかの指標である。HER2陽性なら、抗HER2療法が行われる。

このように、乳がんの薬物療法は、がんの生物学的性質を重視して選択される。初期治療でも、転移・再発治療でもそれは同じである。

ハーセプチン=一般名トラスツズマブ
タイケルブ=一般名ラパチニブ

初期治療におけるホルモン療法

[術前治療と術後治療の利点と欠点]

術前治療   術後治療
  • 薬の効果を確認することができる
  • 乳房温存手術の可能性が高まる
  • 本来のリンパ節転移個数や、グレードの評価が難しくなる
 
  • しこりはないので、薬の効果が確認できない
  • 初診時の状態で術式が決まる
  • リンパ節転移個数、グレードの評価が可能

初期治療には術前治療と術後治療があるが、ホルモン療法は術後が基本である。

「エストロゲン受容体陽性の場合、その乳がんはエストロゲンの影響を受けて増殖するので、術後にホルモン療法を行います。患者さんの年齢や閉経前か後かで、治療の内容が異なってきます」

40歳未満なら、ゾラデックス()などのLH-RHアナログと、ノルバデックス()などの抗エストロゲン薬を併用する。

LH-RHアナログは、卵巣でエストロゲンが作られるのを抑える薬で、これを使用すると生理が止まった状態になる。抗エストロゲン薬は、エストロゲンががん細胞に作用するのを防ぐ薬である。

40歳以上で閉経前なら、LH-RHアナログを使用せず抗エストロゲン薬だけが使われることが多い。閉経から1年た っていない人や、閉経したかどうかわからない人も同じである。

閉経後なら、脂肪組織でエストロゲンが作られるのを抑えるアロマターゼ阻害薬が使われる。アリミデックス()、アロマシン()、フェマーラ()という3種類の薬がある。

抗エストロゲン薬もアロマターゼ阻害薬も、5年間の投与が標準治療となっている。

「基本的には5年以上続けることはしません。ただ、薬によっては5年以降も継続したほうがいいかどうかを調べる臨床試験が行われています。それに参加していただくことで、5年以上の治療が行われることはあります」

北海道がんセンター乳腺外科では、基本的には標準治療を行い、それ以外の治療は、患者さんが臨床試験に参加した場合に限られている。

[再発のリスクと最適な薬の選び方]
再発のリスクと最適な薬の選び方
[乳がんの代表的なホルモン療法]

  閉経前
(閉経から1年未満、閉経したかどうか不明な場合も)
閉経後
40歳未満 LH-RHアナログ(エストロゲンの分泌を抑える)
    ゾラデックス 1カ月に1回皮下注射
    リュープリン 3カ月に1回皮下注射
    2~3年間
抗エストロゲン薬(エストロゲンの働きを阻害する)
    ノルバデックス
    1日1回、5年間内服
 
40歳以上 抗エストロゲン薬のみ
(エストロゲンの働きを阻害する)
    1日1回、5年間内服
アロマターゼ阻害薬
(エストロゲンの合成を阻害する)
    アリミデックス、フェマーラ、アロマシン
    1日1回、5年間

ゾラデックス=一般名ゴセレリン
ノルバデックス=一般名タモキシフェン
アリミデックス=一般名アナストロゾール
アロマシン=一般名エキセメスタン
フェマーラ=一般名レトロゾール

初期治療における化学療法

[乳がんの化学療法]
乳がんの化学療法

エストロゲン受容体陰性の場合には、化学療法が行われる。使われる抗がん剤は、アンスラサイクリン系とタキサン系が中心である。

アンスラサイクリン系抗がん剤には、ファルモルビシン()、アドリアシン()などがある。北海道がんセンターでは、5-FU()、ファルモルビシン(100㎎/㎡)、エンドキサン()を併用する「FEC100療法」が使われている。AC療法(アドリアシン+エンドキサン)もあるが、心毒性を考慮し、FEC100療法を選択しているという。

タキサン系には、タキソテール()単剤の「DOC75療法」、タキソテール+エンドキサンの「TC療法」、タキソール()単剤の「ウィークリーPAC療法」などがある。

また、HER2が陽性の場合には、ハーセプチンによる治療が原則として1年間行われる。ハーセプチンは抗がん剤との併用が原則で、アンスラサイクリン系やタキサン系の抗がん剤と併用される。

エストロゲン受容体陽性の場合、ホルモン療法単独でいいか、化学療法も加えるべきか、判断が難しいことがある。このような場合、患者さんが希望すれば、腫瘍増殖マーカーのKi-67検査や、遺伝子から予後を予測するオンコタイプDXの結果を参考にすることもあるという。ただし、遺伝子発現解析は自由診療である。

初期治療には術前治療と術後治療があるが、次のような場合には術前が勧められる。

「薬物療法がよく効きそうな場合です。たとえばHER2陽性でハーセプチンが使えれば術前治療を勧めます。エストロゲン受容体陽性の場合は術前ホルモン療法の臨床試験を説明しますが、閉経状況などを考慮し術前化学療法を勧めることがあります。がんが大きくてそのままでは乳房温存手術ができない人、リンパ節転移があって必ず化学療法が必要になる人にも、術前治療が勧められます」

術前治療には、薬の効果を確認しやすい、乳房温存手術の可能性が高まる、といったメリットがある。

ファルモルビシン=一般名エピルビシン
アドリアシン=一般名ドキソルビシン
5-FU=一般名フルオロウラシル
エンドキサン=一般名シクロホスファミド
タキソテール=一般名ドセタキセル
タキソール=一般名パクリタキセル


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