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妊娠・出産、治療後の合併症など、患者さんの立場を考えた治療選択を
子宮頸がんの治療は、手術だけでなく、放射線や化学療法も考慮

監修:平嶋泰之 静岡県立静岡がんセンター婦人科医長
取材・文:柄川昭彦
発行:2007年10月
更新:2014年1月

  

平嶋泰之さん
静岡県立静岡がんセンター
婦人科医長の
平嶋泰之さん

子宮がんによる死亡者数はここ数10年で4分の1以下に減少したと言われている。かといって、罹患者数が減ったのではない。検診によって早期に発見されるケースが増えたのに加え病期ごとの治療法が確立されたことが、死亡者数の減少につながっている。命が助かることはもちろんだが、患者さんにとっては治療後の人生、QOLの維持も重要。

静岡がんセンター婦人科医長の平嶋泰之さんは、治療成績からみた「よい治療」を押しつけるのでなく、患者さんの希望にも根ざした「よい治療」に取り組む1人である。

ごく早期なら手術後も妊娠・分娩が可能

子宮の入口付近を子宮頸部といい、ここにできるがんを子宮頸がんという。子宮の奥のほうは子宮体部で、ここにできるがんは子宮体がんだ。かつて、子宮頸がんは日本人の子宮がんの約90パーセントを占めていたが、近年は65~70パーセント程度になっている。

子宮頸がんの罹患率は、高齢者では年々減少傾向にあるのだが、若い年代で増えているのが最近の特徴。妊娠・分娩を望む患者さんは、確実に増えているという。

[後方より見た子宮と卵巣、卵管]
図:後方より見た子宮と卵巣、卵管

子宮頸がんの治療について、静岡県立静岡がんセンター婦人科医長の平嶋泰之さんに解説してもらった。

「世界の標準治療では、0期なら円錐切除術、1a1期なら単純子宮全摘術となっています。ただ、現実には、患者さんが今後の妊娠・分娩を望んでいるかどうかによって、治療法が選ばれるケースも少なくありません」

円錐切除術とは、子宮の入口部分だけを円錐形に切除する手術。開腹手術ではなく、腟の側から切除するので、患者さんの身体的な負担は軽くてすむ。2~3日の入院で行う施設が多いが、なかには入院なしで行っている施設もあるほどだ。

一方、単純子宮全摘術は、子宮だけを摘出する手術で、子宮筋腫の手術と同じだと考えていいそうだ。手術時間は1時間程度。安全な部類に入る手術なので、手術中のトラブルや合併症が起こるようなことは少ない。

手術方法には、腟側から行う腟式単純子宮全摘術と、開腹して行う腹式単純子宮全摘術とがある。腟式の手術が可能なのは、一般的にはお産の経験がある患者さんだ。

「円錐切除術なら子宮が残るので、手術をしても妊娠・分娩が可能です。原則としては0期の治療となっていますが、1a1期でも、患者さんが子供を望むような場合には、円錐切除術だけで治療を終了することもあります」

円錐切除術を行う際に、子宮の入口部分を少し切り取るために妊娠・分娩にまったく影響がないわけではない。早産やお産時に帝王切開が必要になる割合が少し高くなるという。

しかし、円錐切除術ができる段階で発見できれば、妊娠・分娩を諦めなくてもいいわけだ。

一方、妊娠・分娩を望まない患者さんであれば、子宮を残すことに積極的な意味はない。1a1期ならもちろん、0期でも単純子宮全摘術が行われることがあるという。子宮を摘出しても卵巣は残るので、閉経前の女性なら、女性ホルモンの分泌は変わらない。

[子宮頸がんの病期]

0期 上皮内がん
1期 がんが子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない)
1a期 組織学的にのみ診断できる浸潤がん(肉眼的に明らかなら1b期とする)
1a1期 間質浸潤の深さが3mm以内で、縦軸方向の広がりが7mmをこえないもの
1a2期 間質浸潤の深さが3mmをこえるが5mm以内で、広がりが7mmをこえないもの
1b期 肉眼的に明らかな病巣を有するか、組織学的に1a期をこえるもの
1b1期 病巣が4cm以内のもの
1b2期 病巣が4cmをこえるもの
2期 がんが頸部をこえて広がっているが、骨盤壁または腟壁下1/3には達しないもの
2a期 腟壁浸潤が認められるが、子宮傍組織浸潤は認められないもの
2b期 子宮傍組織浸潤の認められるもの
3期 がん浸潤が骨盤壁にまで達する、もしくは腟壁浸潤が下1/3に達するもの
3a期 腟壁浸潤は下1/3に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁に達しないもの
3b期 子宮傍組織浸潤は骨盤壁に達するか、明らかな水腎症や無機能腎を認めるもの
4期 がんが小骨盤腔をこえて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵すもの
4a期 膀胱、直腸の粘膜への浸潤があるもの
4b期 小骨盤腔をこえて広がるもの(肺転移、表在リンパ節転移、骨転移など)
出典:『がん診療レジデントマニュアル』第3版 国立がん研究センター内科レジデント編 (医学書院)より


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