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渡辺亨チームが医療サポートする:子宮頸がん編

取材・文:林義人
発行:2004年7月
更新:2014年2月

  

サポート医師・喜多川 亮
サポート医師・喜多川 亮
久留米大学医学部
婦人科医師

きたがわ りょう
1969年福岡県生まれ。
95年九州大学医学部卒業後、九州大学医学部付属病院産婦人科を中心に九州の各病院で産婦人科医師として研修。
その間、より高度な化学療法の知識習得の必要性を感じ、01年国立がん研究センター中央病院乳腺・婦人科腫瘍内科チーフレジデント。
03年静岡県立静岡がんセンター女性内科副医長を経て、04年7月より久留米大学医学部婦人科へ。
モットーは「一期一会」

ステージ2aの扁平上皮がん。子供はあきらめなければならないの?

生理が終わって2週間しか経っていないというのに、38歳の女性に不正出血があった。近所のクリニックで診てもらうと、 思わぬ「がん」の疑い。

そこで、コルポスコープを用いてさらに詳しい細胞診、組織診の検査をすると、やはり子宮頸がんに間違いなかった。

生理から半月で不正性器出血

横浜市に住む山下佳代さん(仮名)は38歳の専業主婦。3歳年上の夫・和夫さんは地方公務員で、小学3年生の長男・健太君がいる。健太君も「弟か妹がほしい」というので、ここ1、2年妊娠を計画してきたが、子供はできなかった。

佳代さんは、日ごろはテニスなどよく運動もしているし、自分では健康だと考えている。長男の妊娠・出産で世話になった近所の産婦人科Yクリニックからは出産以来足が遠のいていた。また「自分はまだがん年齢でもないし」という思いもあって、市が行う定期検診も受けていなかった(*1子宮頸がんの好発年齢)。

[子宮頸がんを疑う症状]
性器出血
帯下(おりもの)の異常
下腹部および腰の痛み
性交中の痛み

2003年11月、佳代さんは前回の生理が終わって2週間しか過ぎていないのに出血が始まった(*2不正性器出血)。

入浴中にも大量出血し、中にソラマメくらいのかたまりも混じっている。「おかしい。まだ更年期には早すぎるし、子宮筋腫か何かかしら?」と思った。それほど、重大なこととは思わなかったが、Yクリニックを訪れることにする。

Y院長は、まず「最近、疲れやすいとか、体調が悪いとかはないんですか?」、「いつから不正性器出血に気がついていたのですか?」など、問診をする。続いて佳代さんは内診を受けた(*3視診・内診の意義)。

もう子供はできないかもしれない

「腫瘍が見えます。これは子宮頸がんでしょう。ステージ2aですね」

内診台で横になったままの佳代さんに、Y院長はコルポスコープで診察しながらそう話した(*3視診・内診の意義)。思わぬ「がん告知」に佳代さんは「えっ」と驚きの声をあげる。

「細胞診と組織診の標本を取ったので検査に出します。水曜日には確定診断の結果が出ますので、また来てください」という言葉が続いた。

その夜、仕事から帰った夫に、佳代さんは「私、子宮頸がんになったみたい。ステージ2aだって」と告げた。夫は非常にショックを受け、動揺した様子を見せる。

「そ、そうか。お前の身内にはがんになった人はあまりいないはずなのになあ。でも、2aならそんなに進んでいないんだろう? きっと軽いがんだよ」

「子供はもう無理かもしれないわ。健太が寂しがるわね」

「何を言っているんだ。お前の健康がいちばん大事な問題だよ。それに子宮頸がんの手術を受けたあとで、子供を作った人だっているよ。妊娠できなくても、アメリカの代理母で子供をつくったタレントもいるじゃないか(*4体外受精の可能性)」

「そんな。あんなことするのにいくらかかると思っているのよ。サラリーマンの家庭じゃ、とても用意できるお金じゃないわ」

2人はお互いの不安を打ち消しあうように、この日はいろいろとおしゃべりを続けていた。

組織診=疑わしい部分から細胞のかたまりである組織を切除し、顕微鏡で悪性かどうかを調べる。

細胞診の結果は「クラス4」

佳代さんは検査の結果を聞きにYクリニックを訪れる。この日は診察がなく、院長は佳代さんを診察室に呼び入れ挨拶をすると、佳代さんを正面に見据えて、こういった。

「細胞診の結果、クラス4(*5細胞診のクラス分類)と出ました。がんの疑いが強いということですが、組織診ではがんが確認されています。でも、今の段階ならがんだとはいえ、治療で治る可能性はあるので、あまり気を落とさないでください。うちでは詳しいがんの検査も治療も、行っていないので、S病院のK先生に紹介状を書きます。ちょっと廊下でお待ち頂けますか」

看護師に付き添われて廊下に出た佳代さんはソファーに腰を下ろした。Y院長が「がん」という言葉を出す度に、えもいわれぬ不安がこみ上げてくる。毎日、元気に暮らしていたつもりなのに、いつのまにか病魔が忍び込んでいたのだと、改めて思い知らされる。

翌々日、S病院のK医師を訪れる。

「子宮頸がんだということですね。念のため、もう一回細胞の検査からさせてもらいますよ(*6子宮頸がんの診断法)」

紹介状に目を通すとK医師はこう話す。佳代さんはまた内診台に上らなければならなかった。そして、この日の検査が終わって佳代さんはK医師から、「ステージ2aの扁平上皮がん(*7子宮頸がんのステージ)です」と伝えられた。


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