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副作用の管理が重要。化学療法は「日常生活を取り戻すためのもの」だから
高齢者の大腸がん化学療法はどのように行われるの?

監修:山﨑健太郎 静岡県立静岡がんセンター消化器内科
取材・文:本多容子
発行:2011年6月
更新:2013年4月

  
山﨑健太郎さん 「副作用は我慢せずに、きちんと
医師に伝えてください」と話す
山﨑健太郎さん

これまで多くの臨床試験が行われてきたが、実際に登録された患者さんは75歳以下の元気な方が多く、それ以上の高齢の患者さんに臨床試験から得られたエビデンス(科学的根拠)をそのまま当てはめて良いかどうかは不明である。
この臨床試験の空白部分にいる高齢の患者さんに対して、どのような治療がいいのだろうか。

大腸がん患者さんの、高齢者とは?

最近、患者数が増加傾向にある大腸がん。患者さんのなかには、70歳や80歳といった高齢者の方も珍しくなくなってきている。

高齢者の大腸がん患者さんの化学療法は、年齢による制限はあるのだろうか。

「がん患者さんでも『この年齢以上は、高齢者用の治療が必要』という明確な指標はないのです」と答えるのは、静岡県立静岡がんセンター消化器内科の山﨑健太郎さん。

しかし実際の臨床では加齢による衰えを考えた治療を行う必要があり、山﨑さんもそれを考慮して診療にあたっている。どうやって「加齢による注意が必要な患者さん」を見分けているのか。

[表1 高齢者の大腸がん化学療法を行う判断ポイント]

年齢:70歳代
(山﨑さんは80歳以上を、穏やかな治療が必要な高齢と判断する一応のラインにしている)
全身状態(PS):
スコア2(歩行可能、身の回りのことが可能、日中ほとんど起きている)まで
(PS:パフォーマンスステータス。5段階の国際的な身体状況評)
臓器機能の低下:一定の範囲に収まり、著しい不全がない(心肺腎肝骨髄機能)
合併症:慢性病の既往症がない
(例、コントロールが不良な糖尿病や高血圧など)
コンプライアンス(服薬遵守)の可否:医師の処方通りに薬を服用できるか。自分できちんと薬剤の服用・点滴をできるか、そうさせてくれる介助者はいるか

[表2 PS:全身状態のレベル]

スコア0 まったく問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限なく行える
スコア1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる(例:軽い家事、事務作業)
スコア2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
スコア3 限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上はベッドで過ごす
スコア4 まったく動けない自分の身の回りのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす

山﨑さんが判断基準にしている5つの要素をまとめたのが表1の表だ。

これをわかりやすくまとめる と、「79歳までの患者さんで、全身状態がよく、臓器機能の衰えや慢性疾患がなければ、若い方と同じ標準治療を提案します。

ただし80歳以上の方、またそれより下の年齢でも、全身状態や臓器機能などに衰えがあった場合には、第1選択である抗がん剤の併用治療から、薬剤を減らした2剤か1剤単独の治療にしています。状態が良くなければ、抗がん剤治療は行わないという選択肢もあります」

抗がん剤には、どれにも副作用がある。代表的な副作用は消化器毒性(悪心、嘔吐、下痢など)や血液毒性だ。一般的に一緒に使う抗がん剤の数が増えるほど、毒性は増していく。

「化学療法では副作用によって亡くなる方もわずかですがいらっしゃいますし、高齢の患者さんではそのリスクが高くなることが予想されます。これは忘れていただきたくありません」

この前提の上で、山﨑さんは、80歳未満で、表1の要素をクリアした元気な高齢者には、若い人と同じ標準治療を勧めている。

一方、身の回りのことができなかったり、臓器機能に問題がある高齢者には、最初から副作用が少ない治療を勧める。

「患者さんの希望やQOL(生活の質)を考慮して、副作用や薬の服用方法、治療の方向性を伝えて、積極的な治療にするか、または体に比較的負担の少ない治療を行うかを検討します」

つまり元気な高齢者と、80歳以上や臓器機能に不安を持つ高齢者とでは、最初に勧められる治療メニューが違うのだ。

高齢者の治療のポイントはリスク管理

「高齢者の化学療法のポイントは、治療上のリスク管理を手厚くすることです」

高齢者では、リスクを冒してダメージを受けると、回復が難しいことが多いからだ。

具体的なリスク管理の1つめは、患者さんがきちんと服薬管理ができるかを治療前に考え、その範囲内で治療を行うこと。

リスク管理の2つめは、医療者側が投薬中や投薬後の副作用に対するサポートをこまめに行うことだ。

「医療者はなるべく早期に副作用に対処して症状を抑えていきます」

①服薬管理

「守っていただきたい点は2点です。『ちゃんと飲めたり、点滴を管理できるか』『副作用が出たら、きちんと医師に伝えられるか』です」

抗がん剤を体内に入れる方法には、鎖骨下の静脈にポート(入口)を簡単な手術で開け、そこから点滴針を入れて、長時間点滴をする方法と、経口薬(飲み薬)を飲む方法がある。

点滴では、自宅で行うときに「ポートを衛生的に管理できるか」「点滴を管理することができるか」「終了後、針を自分で抜くことができるか」などが問題になる。

一方、飲み薬では、その簡便さからくる「飲み間違い」や「副作用が起きても飲み続けてしまいやすい」といった問題がある。

また、高齢の患者さんは、ひどい下痢が起きて食事ができないような副作用が起きても、「せっかくいただいた高い薬だから」と、薬だけきちんと飲んだりすることもある。

下痢は、脱水症状にまでなると、高齢者には深刻なダメージになる。また、経口抗がん剤では下痢の出現頻度が高い傾向にある。

副作用とは、体の発する危険信号だ。その原因となっている薬を取り続けたら、当然症状は激化する。

副作用が出だしたら、病院に電話し、医師か看護師の指示を仰ぐか、必要なら受診することと、山﨑さんは強く念押しする。

「それでも薬を飲み続ける方がいるのです。まず薬を1度止めて、後からでいいので『こういう症状が出ました』と伝えていただきたい。薬を止める判断ができることが重要です」

ほかに、「日常のサポートをしてくれる家族が近くにいるかどうか」も、患者さんが受けられる化学療法の選択肢を広げる。

ご本人に異常が起きても、サポートしてくれる人が電話連絡し、病院に連れてきてもらえるからだ。

「患者さんに、治療に対するある程度の理解があり、家族のサポートがあれば安心です。しかし、薬の話をしても受け答えが曖昧な方は、インフォームド・コンセントが取れないわけで、できる治療も狭まってしまいます。お渡しするのは抗がん剤ですから」

[表3 気をつけたい抗がん剤、分子標的薬の副作用]
表3:気をつけたい抗がん剤、分子標的薬の副作用

5-FU=一般名フルオロウラシル
エルプラット=一般名オキサリプラチン
カンプト/トポテシン=一般名イリノテカン
ゼローダ=一般名カペシタビン
アバスチン=一般名ベバシズマブ
アービタックス=一般名セツキシマブ
ベクティビックス=一般名パニツムマブ

高齢者には副作用が強く出やすい

②副作用によるダメージを最小限に管理する

もう1つのリスク管理は、投与中や投与後の副作用に対するサポートだ。

山﨑さんは、治療を始めた時期の来院を、通常なら2週に1度のところ、高齢者の場合は毎週にして、副作用のチェックを細かくしている。症状が起きた場合に、早めに対処したいからだ。

また予想される副作用は治療開始時に患者さんに話し、吐き気、下痢、微熱、手足の皮膚障害などには対応薬(吐き気止めや下痢止め、手足の軟膏など)を渡しておき、症状が出たら使ってもらう。もし、使い方がわからなかったり、症状が改善しないようであれば病院へ電話して指示を仰ぐよう説明している。

高齢者は、体のダメージからの回復に時間がかかる。

「副作用が起こった場合、若い人ならまたすぐ元気になって日常に戻りますが、高齢者では副作用の改善に時間がかかり、以前の状態に体調が回復するまでにはさらに時間が必要となります。ですから、早く見つけて早く対処したい。そうすることで、早く元に戻り、体力を落とさないで済むからです」

軽い副作用なら、副作用を抑える薬だけで良くなることもある。

「それでも症状が続いたり、悪化したら、すぐ薬をやめて病院に連絡し、来院してもらいます」


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