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大腸がん治療の1次治療に、新たな選択肢が登場
分子標的薬と抗がん剤の併用で生存期間が延長した

監修:島田安博 国立がん研究センター中央病院消化管腫瘍科消化管内科長
取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2011年1月
更新:2013年4月

  
島田安博さん 国立がん研究センター中央病院
消化管腫瘍科消化管内科長の
島田安博さん

次々に登場する進行・再発大腸がんの治療薬のなかで、分子標的薬の1つ、アービタックスの効果に大きな期待が寄せられている。
日本癌治療学会で、2010年に改訂された『大腸癌治療ガイドライン』におけるアービタックスの位置づけについて報告された、国立がん研究センター中央病院消化管腫瘍科消化管内科長の島田安博さんに、その効果・副作用についてさらに伺った。


分子標的薬の登場で治療法の選択肢が増えた

約20年前には生存期間6~8カ月といわれていた進行・再発大腸がんに対する化学療法は、ここ数年めざましい進歩を遂げている。従来の標準治療としては、5-FU(一般名フルオロウラシル)+ロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)+エルプラット(一般名オキサリプラチン)のFOLFOX療法と、5-FU+ロイコボリン+カンプト/トポテシン(一般名イリノテカン)のFOLFIRI療法が多く使われていた。

これらの治療法に加えて、アバスチン(一般名ベバシズマブ)、アービタックス(一般名セツキシマブ)、ベクティビックス(一般名パニツムマブ)などの分子標的薬が次々に承認され、治療法の選択肢が増えている。

「選択肢は増えたが、複雑にもなりました。それぞれの治療レジメン(薬剤の組み合わせや投与方法)の特徴を把握し、薬を使いこなすことが大切です」と話すのは国立がん研究センター中央病院消化管腫瘍科消化管内科長の島田安博さんである。

[切除できない進行・再発大腸がんに対する化学療法]
図:切除できない進行・再発大腸がんに対する化学療法

FOLFOX=フルオロウラシル+ホリナートカルシウム+オキサリプラチン
FOLFIRI=フルオロウラシル+ホリナートカルシウム+イリノテカン
『大腸癌治療ガイドライン』2010年版より改編(大腸癌研究会)

KRAS遺伝子変異のない人は生存期間延長

分子標的薬の1つ、アービタックスは、腫瘍細胞の表面に現れている上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とし、細胞増殖や血管新生などのシグナルを伝達するのを阻害する薬。アービタックスの治療効果は、がん組織の中にあるKRAS遺伝子の変異(異常)の有無により予測できる。変異がある人にはアービタックスを投与しても効果がないことがわかっているのだ。変異のない人は全体の約6割で、「野生型」と呼ばれる。さらに実際にFOLFIRI療法との併用で効果が出るのは「野生型」の人のうち6割程度だ。10年4月より、KRAS遺伝子検査は保険適用になった。

アービタックスは、これまで2次、3次治療で使われていたが、2010年には1次治療として承認され、さらに7月に改訂された『大腸癌治療ガイドライン』2010年版でも推奨されている。

その根拠となったのが、海外で行われたCRYSTAL試験とOPUS試験という2つの臨床試験のデータである。FOLFIRI療法のみ行ったグループと、これにアービタックスを上乗せしたグループを比較したのがCRYSTAL試験。FOLFOX療法のみ行ったグループと、これにアービタックスを上乗せしたグループを比較したのがOPUS試験だ。

KRAS遺伝子野生型の患者さんだけに絞り、2つの試験結果を統合して解析したところ、アービタックスを併用したグループは全生存期間が23.5カ月となり、化学療法のみよりも4カ月延長したのである。

「これはKRAS野生型において生存期間の延長が示された唯一のレジメンで、非常に貴重なデータです」

さらに、この併用療法によって、切除不能とされた肝転移のみの患者で転移巣を縮小させ、最終的には30パーセントの症例で完全切除可能になり、治癒が望めるようになったという。

「これまでは手術ができなければ2、3年で亡くなっていた患者さんが長期生存を期待できるようになり、注目を集めています」

[KRAS野生型における全生存率(CRYSTAL試験とOPUS試験の統合解析)]
図:KRAS野生型における全生存率(CRYSTAL試験とOPUS試験の統合解析)

皮膚障害の副作用を上手にコントロールして

しかし、アービタックスには副作用もある。投与した80パーセント以上の患者さんに、ざ瘡様皮疹(ニキビ状の皮疹)や皮膚乾燥、爪囲炎()といった皮膚障害の症状が出てくるのだ。

「皮膚症状をどうとらえるかは、それぞれの患者さん次第。予想以上に患者さんのQOL(生活の質)を下げてしまい、風貌が変わったことにより外出しにくくなって社会的活動が低下してしまう患者さんもいます」

皮膚症状は、ステロイド剤や保湿剤の使用、重症の場合は薬の減量や休薬によってコントロールしていく。

島田さんは分子標的薬を含めた新薬の薬剤費が高額になっている問題を指摘。アービタックスについても費用対効果の再検証の必要性を訴えた。

また、海外の臨床試験で、術後補助療法におけるアービタックスの効果はまだ検討中であるが、効果がない可能性があるとの結果が出たことも紹介した。

「1次治療では長く使い続けることになるため、薬の効果とともに、デメリットもよく理解したうえで、主治医と相談しながら自分にとって何が大切かを考えながら治療法を選択していただきたい」と島田さんは結んだ。

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