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副作用対策をきちんとしながら薬の効果を最大限に発揮させる
再発しても3年を目指せ! 大腸がんの最新化学療法

監修:土井俊彦 国立がん研究センター東病院消化器内科医長
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2010年6月
更新:2013年4月

  
土井俊彦さん 国立がん研究センター東病院
消化器内科医長の
土井俊彦さん

大腸がんの化学療法は長く治療の中心だった5-FUに加え、カンプト/トポテシンやエルプラットが登場。さらに、分子標的薬が開発され、治療効果は格段に向上した。国立がん研究センター東病院消化器内科医長の土井俊彦さんは「5年前なら1年を目指して頑張りましょうと言っていたのが、今では状態のよい人ならば2年~3年を目指して化学療法をしましょうと言えるようになりました」と語る。

世界の標準治療にやっと追いついた

大腸がんの治療は手術が基本だが、(1)進行・再発して手術による完全切除が難しいと判断された場合には、延命と症状の緩和を目指した化学療法(2)手術で切除しても再発の可能性が高い場合には、再発抑制を目的に術後補助化学療法――が行われる。

しかし、幸い大腸がんの化学療法はここ10年ほどの間にめざましく進歩している。国立がん研究センター東病院消化器内科医長の土井俊彦さんによると、進行・再発がんの場合、治癒は難しいにしても、「一時的にがんが消える」人も珍しくなくなってきた。これを可能にしたのが、新規の抗がん剤である。

それまで、手術で切除できない進行・再発大腸がんの化学療法と言えば、5-FU(一般名フルオロウラシル)だけで、投与方法などに工夫をしても、生存期間中央値()は1年ほどだった。何も治療をしない場合は6~8カ月とされているので、その延命効果は決して満足できるものではなかった。ところが1995年、カンプト/トポテシン(一般名イリノテカン)が認可された。本剤は、日本で開発されたが欧米での臨床試験でその有効性が示された薬剤である。エルプラット(一般名オキサリプラチン)は、1976年に日本で合成された抗がん剤。

この日本生まれの2種類の抗がん剤を育てたのは欧米で、それまで広く使われていた5-FUとロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)にカンプト/トポテシンやエルプラットを組み合わせることで、「生存期間中央値が20カ月を超えるようになった」のだ。

これが、今では大腸がんの化学療法のベースとなっている「FOLFOX」(5-FU+ロイコボリン+エルプラット)や「FOLFIRI」(5-FU+ロイコボリン+カンプト/トポテシン)と言われる治療法だ。

生存期間中央値=診断または治療のいずれかが行われてからの期間で、既知の疾患を有する患者の半数において、生存が認められるないし、生存が期待できる期間

分子標的薬のアバスチン、アービタックスが登場

さらに、その後、全く新しいタイプの抗がん剤として登場したのが、アバスチン(一般名ベバシズマブ)やアービタックス(一般名セツキシマブ)などの分子標的薬だ。

これも、5-FUやカンプト/トポテシン、エルプラット、後述するゼローダ(一般名カペシタビン)と並ぶ大腸がん治療のキードラッグ。

日本でもようやく2007年にアバスチン、2008年にアービタックスが承認され、遅ればせながら大腸がんの治療に使えるようになった。

「これで、ようやく日本で行う大腸がんの化学療法も欧米で行われている標準治療に追いつきました」と土井さんは語る。

つまり、大腸がんの化学療法の進歩は、抗がん剤の開発やレジメン(組み合わせ)が進歩したことが1番大きな要因なのである。

アバスチンの併用が進行・再発大腸がんの標準治療

標準治療については09年版「大腸癌治療ガイドライン」に、生存期間の延長が認められている化学療法として左記があげられている。

(1)FOLFOX療法にアバスチン併用

(2)FOLFIRI療法にアバスチン併用

(3)5-FU+ロイコボリンにアバスチン併用

(4)UFT(一般名テガフール・ウラシル)+ロイコボリン

さらに、09年版刊行後、新たな臨床試験の結果を踏まえて、「XELOX療法(ゼローダ+エルプラット)+アバスチン」という治療法が承認された。

XELOXは、臨床試験で(1)のFOLFOXに効果が劣らないと認められた治療法。持続して点滴が必要な5-FUの代わりに、飲み薬であるゼローダを使っているのが大きな特徴だ。

「ガイドラインの4つの治療法、XELOX療法の中で唯一、切除不能進行大腸がんで標準治療を用いず、(4)のUFT+ロイコボリンを選択されてしまう場合も未だに存在します。臨床試験に参加可能な状態のよい患者さんに対しての試験で現在5-FUのみでの治療は、高齢者や合併症を持った状態の患者さん以外ではすすめられません」と土井さんは言う。

進行・再発大腸がんの治療法は、「FOLFOX、FOLFIRI、XELOXにアバスチンを加えた治療法が現在の標準治療です。全身状態が悪くて強い治療に耐えられそうもない場合には、5-FU+ロイコボリンにアバスチンの併用療法を行うのが一般的な考え方です」と土井さんは話す。

日本では、切除不能進行大腸がんにおいては1次治療(最初に行う化学療法)にFOLFOXかXELOXにアバスチンを併用することが多いそうだ。

[大腸がんの化学療法]
図:大腸がんの化学療法

出典:大腸癌治療ガイドライン医師用2009年版より一部改変

FOLFOXとFOLFIRIで生存期間が延長

ロイコボリンは抗がん剤ではなく、5-FUの作用を増強する薬。5-FUの投与法にも、2時間ほどで投与する急速静注と2日ほどかけて注入する持続静注があり、FOLFOXでは両方を組み合わせている。日本で行われているのは、「FOLFOX4」と「mFOLFOX6」という方法だ(図参照)。

[FOLFOX療法の治療スケジュール]
図:FOLFOX療法の治療スケジュール

出典:Nursing Today2008-10月臨時増刊号

FOLFOXは、00年に5-FU+ロイコボリンとの大規模比較試験が行われた結果、奏効率(50.7パーセント対22.3パーセント)、無増悪生存期間(9カ月対6.2カ月)ともに優れていることが判明。欧州で、1次治療薬として認可された。

のちに米国で標準治療だったIFL療法(カンプト/トポテシン+5-FUの急速静注+ロイコボリン)との比較試験が行われ、生存期間でもFOLFOXが優ることが示され、米国でも標準治療となった。04年にはFOLFOX、IFL、IROX(カンプト/トポテシン+エルプラット)の3つの治療法を比較する臨床試験が行われ、奏効率(45パーセント)、無増悪生存期間(8.7カ月)、全生存期間(19.5カ月)ともに他に比べて明らかに高いことがわかり、進行・再発大腸がんの1次治療薬としての地位を確立した。

FOLFIRIは、副作用が大きかったIFLに変えて5-FU+ロイコボリンにカンプト/トポテシンを併用する。こちらも、FOLFOXに劣らない効果があることが示されている。

[FOLFIRI療法の治療スケジュール]
図:FOLFIRI療法の治療スケジュール

出典:Nursing Today2008-10月臨時増刊号


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