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簡便で負担の少ない新しい治療法が第1選択になる可能性も
進行再発大腸がんに、新たな武器「XELOX+アバスチン療法」

取材・文:半沢裕子
発行:2009年11月
更新:2013年4月

  
山口研成さん 埼玉県立がんセンター
消化器内科副部長の
山口研成さん
中山季昭さん 埼玉県立がんセンター
薬剤部主任の
中山季昭さん

抗がん剤の副作用とうまくつきあいながら治療を続けていく患者さんにとって、病院へ足を運ぶ回数が少なく、また日常生活を拘束されないで効果のある治療を受けられることは、とても大きな福音である。内服薬のゼローダとエルプラットを組み合わせたXELOX療法に血管新生阻害剤のアバスチンを併用したXELOX+アバスチン療法は、今まで標準治療の1つとされてきたFOLFOX+アバスチン療法と同等の効果をあらわす一方、より簡便で負担の少ない治療として期待されている。この治療が患者さんにどんな恩恵をもたらすのか、医療現場を取材した。

抗がん剤+分子標的薬で70パーセントのがんが縮小!

写真:XELOX療法で使用する薬剤
XELOX療法で使用する薬剤
写真:FOLFOX療法で使用する薬剤
FOLFOX療法で使用する薬剤

手術のできない進行再発大腸がんの治療法として、通称「XELOX+アバスチン療法」と呼ばれる治療法が、今注目されている。

XELOXとはゼローダ(一般名カペシタビン)とエルプラット(一般名オキサリプラチン)という2種の抗がん剤の併用療法。これに、分子標的薬()のアバスチン(一般名ベバシズマブ)を加えたのが「XELOX+アバスチン療法」だ。

近年、手術では治療できない進行再発大腸がんの患者さんで、抗がん剤治療を初めて受ける人に対しては、「FOLFOX+アバスチン療法」を第1選択として行うのが、多く用いられている世界標準となっている。

FOLFOXとは、5-FU(一般名フルオロウラシル)とエルプラットという2種の抗がん剤に、5-FUの効果を増強する薬剤アイソボリン(一般名レボホリナートカルシウム)を加えた多剤併用療法である。投与方法に多少違いがあり、FOLFOX4、mFOLFOX6などに分けられている。

しかし、03年には「XELOX+アバスチン療法」と「FOLFOX4+アバスチン療法」の両療法と、XELOX単独・FOLFOX4単独とのランダム化比較試験(第3相試験)が海外で行われ、XELOXとFOLFOXではほぼ同等の効果を有することが確認された。

加えて、それぞれ、アバスチンを加えない単独群ではがんが進行せずに生存する期間(無増悪生存期間)が約8カ月だったのに対し、アバスチンを加えた群は9.3~4カ月で、アバスチンの上乗せ効果が確認されたのである(NO16966試験)。さらに08年、国内でもXELOX単独と「XELOX+アバスチン療法」の有効性と安全性を確認する試験が行われ、「XELOX+アバスチン療法」で72パーセントという奏効率()を見せたのだ(JO19380試験)。

この治験に参加した患者さんはXELOX単独が6名、「XELOX+アバスチン療法」が58名の合計64名だが、そのうちの6名の患者さんを担当した埼玉県立がんセンターの消化器内科副部長、山口研成さんは言う。

「『XELOX+アバスチン療法』と『FOLFOX+アバスチン療法』は世界的にエビデンス(科学的根拠)の数が圧倒的に多い治療なのです。両者の比較では、『XELOX+アバスチン療法』は『FOLFOX+アバスチン療法』に劣らないことが証明されています」

手術できない進行再発大腸がんに対する治療効果の点では、「XELOX+アバスチン療法」は、「FOLFOX+アバスチン療法」に堂々匹敵する治療方法といえるのである。

奏効率=がんの大きさに30パーセント以上の縮小が見られた割合

[XELOX療法とFOLFOX療法に対するアバスチンの上乗せ効果]
(NO16966試験、全生存期間)

図:XELOX療法とFOLFOX療法に対するアバスチンの上乗せ効果

(Cassidy et al. ASCO GI 2008)

[XELOX療法とFOLFOX療法の同等性]
(NO16966試験、無増悪生存期間)

図:XELOX療法とFOLFOX療法の同等性

(Cassidy et al. ASCO GI 2008)

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