ロボット手術は医師の技量に頼る部分が大きいのか

回答者・古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2017年7月
更新:2018年2月

  

先日、右腎臓にがんがあると診断されました。大きさは4㎝程度と言われています。部分切除を行う予定ですが、がんが腎動脈の近くにあるということで、腹腔鏡下手術では難しく、ロボット手術なら可能ということです。私自身としてもロボット手術を受けたいのですが、執刀する医師によってロボット手術による治療成績は変わってくるものでしょうか。腹腔鏡下手術は、医師の技量に頼る部分が大きいことを聞いたことがあり、ロボット手術でも同様のことが言えるのでしょうか。病院を選ぶ際の参考にできればと思っています。

(59歳 女性 佐賀県)

医師1人当たりの経験数が多い施設を選ぶことを勧める

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

大きさが4㎝以下の腎がんを小径(しょうけい)腎がんと言いますが、この場合の標準治療は腎部分切除です。腎部分切除は、①がんを取り残すことなく、しっかりと切除すること(根治)②なるべく腎臓の機能を残すこと(機能温存)、という2つの目的をもって行われます。

腎部分切除自体、執刀医の技量に依存する部分が多く、ご相談者のように腫瘍が腎動脈に接している腎門部(じんもんぶ)腎がんの場合、一般的に部分切除術の難易度は高く、施設によっては腹腔鏡下手術を行っていないところもあります。一方、ロボット手術はどうかというと、手術成績の安定までにかかる経験は、腹腔鏡下手術より少なくて済むように思います。

腎部分切除術では、通常、阻血(腎血流の遮断)と腎実質(じんじっしつ)の縫合が行われます。腎臓は血流が豊富なので、阻血して、腫瘍を摘出する手術を行うのです。ただ、阻血時間が20分を超えて長くなると腎機能は低下していくという事実があり、いかに縫合を早く行い、阻血時間を短くできるかが重要になってきます。その点、ロボット手術は、ロボットアームによる縫合操作が容易なため、腹腔鏡下手術よりも阻血時間が短縮できると報告され、2014年に腎部分切除術に対して保険適用となっています。

病院を選ぶ際の基準としては、やはり医師1人当たりのロボット手術の経験数が多い施設を目安に、選択することをお勧めします。

なお、当院では、低侵襲手術として、ロボサージャン手術(3D-ヘッドマウントディスプレイシステムを用いたミニマム創内視鏡下手術)を行っています。これは、CO2ガスを使わず(腹腔鏡下手術やロボット手術ではガスを使う)、単一の小さな孔(シングルポート)から、ロボットのように機能を高めた術者(ロボサージャン)が行う手術のことです。

私たちの施設では、ロボサージャン手術によって、腎部分切除を無阻血、無縫合で行っており、腎機能を低下させず、さらに仮性動脈瘤(動脈の一部が脹らみ、瘤のような状態になること。破裂により大出血を引き起こす恐れもあり、命にも関わる合併症)のリスクもほとんどありません。根治と機能温存を兼ね合わせた、体への負担が少ない低侵襲手術と言えます。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート3月 掲載記事更新!