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新薬の登場で治療が大きく前進する腎がん
これだけは知っておきたい腎がんの診断と治療

監修:窪田吉信 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2008年11月
更新:2013年12月

  
窪田吉信さん
横浜市立大学大学院
医学研究科泌尿器病態学
教授の窪田吉信さん

腎がんの初期症状や現在の標準治療、さらには今後の治療展開について、横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授の窪田吉信さんに話を聞いた。

腎がんの患者数は年々増加している

日本では、腎がんになる人は年々増えており、また腎がんによって死亡する人も増加傾向にある。腎がんは、もともと欧米諸国に多かったがんで、日本人の生活が欧米化したことが関係しているのではないかと言われている。

横浜市立大学大学院教授の窪田吉信さんによれば、食生活との関係も考えられているという。

「日本の各地における腎がんの発生率を調べてみると、北海道が他の地方に比べて少し高くなっています。北海道は乳製品の消費量が国内では最も多いので、そういうことも関係しているのではないかと言われています。脂肪の摂取量や肥満、それから喫煙も関係しているようです。男女を比べると男性に多く、男性の発生率は女性の2.2~2.3倍になっています」

もう1つ、危険因子としてあげられるのは人工透析だ。慢性腎不全で人工透析を受けている人には、腎がんが非常にできやすい。はっきりした理由は明らかになっていないが、活性酸素が関わってがんが発生するらしいことはわかっている。

[腎がんの危険因子]
図:腎がんの危険因子

出典:『インフォームドコンセントのための図説シリーズ腎がん』(医薬ジャーナル社)より一部改変

腎がんの約8割は淡明細胞がん

腎臓は、尿を作る部分である「腎実質」と、できた尿を集める「腎盂」に大別できるが、腎がんができるのは腎実質である。

腎がんは、細胞の組織型によって、淡明細胞がん、乳頭状腎がん、嫌色素細胞がん、紡錘細胞がん(肉腫様がん)、集合管がん(ベリニ管がん)の5種類に分類されている。この中で最も多いのは淡明細胞がんで、腎がん全体の約8割を占めている。

[腎の構造]
図:腎の構造
[腎がんの病理組織型分類]
悪性腎腫瘍(腎がん)
淡明細胞がん
乳頭状腎がん
嫌色素細胞がん
紡錘細胞がん(肉腫様がん)
集合管がん(ベリニ管がん)
上2図とも出典:『インフォームドコンセントのための図説シリーズ腎がん』(医薬ジャーナル社)より一部改変

初期症状とされる血尿は早期では現れない

腎がんで現れる症状としてよく言われてきたのは、血尿が出る、腰が痛む、腹部にしこりを感じる、ということだった。しかし、実際にはこうした症状で腎がんが発見されることはあまりない。

「この3つの症状が初期症状としてよく言われてきたのですが、昔はそうだったということです。現在では、こうした症状が出るようになる前に見つかるケースがほとんどです。それに、これらの症状が現れている場合には、がんが大きくなって、すでに進行がんになっている可能性が高くなります。こうなる前の段階で発見することが大切なのです」

では、腎がんはどのようにして発見されるケースが多いのか。窪田さんによると、たまたま見つかるケースがほとんどだという。たとえば、自覚症状はなかったのだが、内科で肝臓の超音波検査を受けた際に、ついでに腎臓も調べた結果、がんが見つかった、というようなケースだ。

「超音波検査に熱心な内科医だと腎臓まで見るので、発見されることがよくあります。腹部のCT(コンピュータ断層撮影)検査で見つかることもありますね。泌尿器科で膀胱の超音波検査をやるときには、必ず腎臓も調べます。それから、肺のCT検査でちょっと下のほうまで撮ったことで、たまたま見つかるというケースもあります。人間ドックなどでは、腎臓の超音波検査をやるので、症状がない段階の腎がんが発見されることがあります」

つまり、定期的に超音波検査などを受けて、異常がないかをチェックすることが早期発見への近道といえる。


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