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罹患数・死亡数の推移と検査・治療法の最新動向

肺がん患者さんの併存症の治療と、的確な治療選択で予後の向上を図る

監修●高橋和久 順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年9月
更新:2015年11月

  

「新薬の開発速度が速まり、免疫療法も研究が進んでいるので、
医師との緊密な相談が大切です」と語る高橋和久さん

たくさんあるがん種の中で死者数が一番多いのが肺がん。一方で、新薬の開発など治療法も進化しており、予後の改善も期待されている。肺がんの罹患数・死亡数の推移、検査・治療法に関する最新の動向を伺った。

<罹患数・死亡数の推移>高齢化で罹患数・死者数が増加

肺がんは、罹患数では大腸がんに次ぐ2位で、年間13万人以上が新たに診断される。死亡者数では大腸がんを上回り、年間約7万7,000人、全てのがんの死者数約37万人の2割ほどを占める(「2015年のがん統計予測」国立がん研究センターがん対策情報センター)。(図1、2、3)

図1 2015年のがん罹患予測結果

(国立がん研究センターがん対策情報センター)
図2 2015年のがん死亡予測結果

(国立がん研究センターがん対策情報センター)
図3 主ながん種の長期的な傾向

(国立がん研究センターがん対策情報センター)

「東京ドームのアリーナ席まで埋まる数です。原因は高齢化が考えられます」

順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授の高橋和久さんは、社会環境の変化を指摘する。

「高齢化の影響を除くと大腸がんは横ばい、肺がんは男性で減少傾向にあります。最近は臨床試験の高齢者の定義が75歳まで上がっています。想定治療対象が高齢者にシフトしているということです」

順天堂大学のデータでは、1985年には呼吸器内科の入院患者さんの7割は65歳未満だったが、2000年代に入ってから逆転して65歳以上が7~8割になったという。治療にも影響が出ている。高齢者の肺がん治療戦略がキーワードとなる。

<心臓病など併存症が治療に影響>併存症の治療を考慮した肺がん治療を

「以前は若年者で併存症のない肺がん患者さんでAという治療法とBという治療法を比べてどちらか成績のいいほうが標準治療となりましが、今は、高齢者を中心に血管障害、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や心臓病など併存症(comorbidity)を持っている患者さんが多いため、併存症の治療を肺がんの治療とともにしないと予後は延長できません」

新薬治験では、主にがん以外に疾患がない人が対象となるので、得られたエビデンス(科学的根拠)が実際の医療現場ではそのまま適応しにくくなっているのだという。

「がんがコントロール出来ても、ほかの原因で亡くなってしまいます。併存症を併せて治療することが非常に大切です」

肺がんが原因で起こる症状が合併症(complication)で、肺がんと独立して起こるものを併存症という。「今は、肺がん以外の治療をしてから手術することが常識です」

肺がん治療には、手術、化学療法、放射線療法があるが、早期なら併存症の治療を併せて行うことが予後の改善につながる。とくにCOPDの治療は合併症を防ぎ、長期的な予後もよいとされる。

「Ⅲ(III)期の途中までは併存症があっても予後には影響しないというデータもあります。予後が悪いのはⅣ(IV)期。一般的には、昔よりも高齢者が増えているので早期であっても併存症を認識して治療することが大切ということです。心筋梗塞や脳梗塞、パーキンソン病、肺気腫、間質性肺炎。腎不全などが代表的です」

<肺がんタイプの変動>増える腺がん、対応する新薬も

肺がんの傾向の変化は高齢化だけではない。喫煙率の減少だ。

「以前の喫煙率は7割ほどでしたが、今は3割。〝タバコがん〟といわれる小細胞がんと非小細胞がんの扁平上皮がんの比率が減っていきています。代わりに腺がんが増えています。がんの組織型の分布が20年前とは違っています」

肺がんのタイプは、組織型の違いと遺伝子変異の有無で分類される。新薬も腺がんをターゲットとしているものが多い。腺がんは早期にCT(コンピュータ断層撮影)でわかる。自覚がなくても1cm以下の腺がんが見つかるケースも多い。

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