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タルセバの使用で、生存期間がさらに延長する
EGFR遺伝子変異に注目! 非小細胞肺がんの最新分子標的治療

監修:石田卓 福島県立医科大学付属病院臨床腫瘍センター部長
取材・文:柄川昭彦
発行:2010年12月
更新:2018年1月

  
石田卓さん 福島県立医科大学付属病院
臨床腫瘍センター部長の
石田卓さん

非小細胞肺がんの治療に対し、高い効果を期待できる分子標的薬として、イレッサに引き続いて07年にタルセバが承認された。
これらの薬の作用に関係しているとみられる「EGFR」とは何だろうか。
タルセバの効果や副作用を中心に、最新薬物療法について解説する。

分子標的薬の登場で肺がん治療が変わった

非小細胞肺がんの薬物療法が大きく変わったのは、EGFRをターゲットにした分子標的薬が登場してからだった。EGFRとは上皮増殖因子受容体と呼ばれる受容体で、それを標的にした薬は、日本では、02年にイレッサ(一般名ゲフィチニブ)が、07年にはタルセバ(一般名エルロチニブ)が承認されている。福島県立医科大学付属病院臨床腫瘍センター部長の石田卓さんは、分子標的薬が登場してきた当時を、こう振り返る。

「よく効いた症例では、短期間のうちに、がんがものすごく縮小するので驚きました。これまで見たことがないような効き方でしたね。ただ、効く人と効かない人がいて、どうしてそんなに違うのか不思議でした」

その理由が明らかになったのは、04年のことだった。EGFR遺伝子変異がある場合、イレッサやタルセバは、より高い治療効果を発揮することが明らかになったのだ。

なぜそうなるのかを簡単に説明しよう。EGFRは、がん細胞の細胞膜に突き刺さったように位置している。そして、細胞外のレセプター(受容体)に情報伝達物質が結合すると、EGFRは細胞内に向けてシグナルを出し、それが核に伝えられる。こうしてがん細胞の増殖が活発に行われるようになるのだ。

イレッサやタルセバは、EGFRの細胞内の部分に取り付き、増殖の指令が伝わるのを抑える働きをする(図1)。このような作用を持つ薬を、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬という。

EGFR遺伝子変異がある場合、情報伝達物質が結合すると、通常よりも盛んにシグナルが伝えられ、がん細胞の増殖は活発になる。そのため、遺伝子変異があると、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の効果がはっきりと現れるのである。

[図1 タルセバとイレッサの作用点と抗腫瘍効果発現のメカニズム]

図1 タルセバとイレッサの作用点と抗腫瘍効果発現のメカニズム

EGFR(上皮増殖因子受容体)は、がん細胞の細胞膜に突き刺さったように位置している。細胞外の受容体に情報伝達物質である細胞増殖因子が結合すると、EGFRは細胞内に向けて細胞を増やすようシグナルを出す。タルセバはEGFRの細胞内部分に取りついて、そのシグナルを送らないよう、さまざまに作用する

Moyer J, et al. Cancer Res 57: 4838-48, 1997
Pollack VA, et al. J Pharmacol Exp Ther 291: 739-48, 1999

イレッサとタルセバは用量の設定方法が違う

イレッサとタルセバは、同じタイプの分子標的薬だが、治療効果や副作用がまったく同じというわけではない。

「よく効いた患者さんでも、いずれ増悪()してくるわけですが、増悪するまでの期間が、タルセバのほうが長い印象があります。事実、そういったデータも報告されています」

石田さんが指摘するのは、EGFR遺伝子変異陽性例に対して、プラチナダブレット〈シスプラチン(一般名)やカルボプラチン(一般名)を含む2剤併用療法〉、イレッサ、タルセバの効果を統合解析したデータである。統合解析というのは、複数の臨床試験の結果を総合的に解析すること。それによれば、無増悪生存期間()の中央値(無増悪生存率が50パーセントになるまでの期間)は、プラチナダブレットが6カ月、イレッサが10カ月、タルセバが13カ月となっている。

こうした効果の違いは、主に薬の量が関係している。タルセバの用量は1日に150ミリグラム、イレッサの用量は1日に250ミリグラムだが、体に対する影響は、タルセバ150ミリグラムのほうが大きいという。

「タルセバは、最大耐用量(MTD=人間の体が許容できる最大量)が150ミリグラムで、できるだけ大きな効果を引き出すために、これが用量として設定されています。これに対し、イレッサの250ミリグラムは、MTDの半分にもならない量なのです。この量で効果が現れたので、副作用のことも考慮し、これでいいということになったようです」

イレッサとタルセバの用量の決め方の違い。それが効果の差を生み出しているようだ。

増悪=病状がますます悪くなること
無増悪生存期間=病気の進行が見られない状態で患者さんが生存している期間

タルセバの副作用はコントロール可能

タルセバは、手術できない進行・再発非小細胞肺がんの患者さんに対し、セカンドライン(第2次治療)以降で使う治療薬となっている。では、この条件に合致し、さらにEGFR遺伝子変異陽性の患者さんがいた場合、タルセバとイレッサのどちらが選択されているのだろうか。

「どちらがいいというエビデンス(科学的根拠)は、現在の段階ではありません。ただ、日本ではイレッサが使われているケースが多いと思います。早くから承認され、使い慣れている医師が多いですからね。それに、タルセバは使い方が難しいと思われている面もあると思います」

石田さん自身は、このようなケースでは、基本的にタルセバを選択しているという。理由は3つある。

1つめは、前述した効果の点だ。よく効いた患者さんは、元気になるし、通院の回数を減らすこともできる。そうした期間を延長できることには、価値があると考えるからだ。

2つめは、副作用の問題。主に皮膚障害などが問題となるが、タルセバのほうが副作用は強い。しかし、適切な対症治療で副作用はコントロールが可能なので、副作用が薬を選択する決め手にはならないという。

3つめは、用量調節のしやすさである。イレッサは250ミリグラム錠しかないが、タルセバには150ミリグラム錠、100ミリグラム錠、25ミリグラム錠の3種類がある。

「副作用が出たときや患者さんの状態に合わせて、タルセバは簡単に用量調節でき、そういう点で使いやすいと言えます。イレッサの場合、1日おきにするか、休薬することになります」

以上の点から、タルセバは決して使いにくい薬ではない、というのが石田さんの意見だ。

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