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ASCO2006トピックス
進行卵巣がんの主要な薬剤は依然タキソール+パラプラチン

監修:マイケル・A・ブックマン 米フォックスチェースがんセンター教授
構成:町口充
発行:2006年8月
更新:2013年4月

  

マイケル・A・ブックマンさん
米フォックスチェース
がんセンター教授の
マイケル・A・ブックマンさん

卵巣がん、とくに進行卵巣がんに対する化学療法は、タキソール(一般名パクリタキセル)とパラプラチン(一般名カルボプラチン)との組み合わせが標準的治療となっているが、アメリカでは、GOG(Gynecologic Oncology Group)という婦人科がんの研究グループがさらに治療効果を高めるための研究を行っており、今年のASCOでも「GOG0182-ICON5」という臨床試験についての発表があった。この試験実施の責任者がブックマンさんであり、GOGのこれまでの研究と、今年の発表の内容について語ってもらった。

GOGは25年以上の歴史を持っていて、アメリカを中心にさまざまな大規模な治験を行ってきた。中でも有名なのは、「GOG111」という研究で、初めてタキソールのステータスを確立した有名な研究。それまでの標準であったプラチナ製剤を主とした化学療法であるエンドキサン(一般名シクロホスファミド)+シスプラチン、ないしはエンドキサン+パラプラチンに比較し、タキソール+パラプラチンの併用療法が有効であることが確認され、現在はこの療法を3~4週間隔で6サイクル施行することが標準化学療法とみなされている(日本婦人科腫瘍学会の発刊している「卵巣がん治療ガイドライン」でも同様)。

また、「GOG158」という研究は、タキソール+シスプラチンと、タキソール+パラプラチンの比較試験で後者の優位性を明らかにした。前者だと入院しての投与が必要だったが、後者なら数時間の投与ですむので、外来治療をグローバルスタンダードにする研究となった。

有用な腹腔内投与は副作用が多いのが難点

さらに「GOG172」は、タキソールとシスプラチンの腹腔内投与(IP)群と静脈内投与(IV)群とを比較した試験で、IP群のほうが有意に生存期間の延長が認められた。その一方で、IP群では消化器症状、神経毒性、好中球減少、感染などの副作用も多く認められた。IPでは予定された6コースの投与を副作用なしで完遂するのは困難なことが明らかとなり、今後、毒性の軽減方法に取り組むことが課題となっている。また、投与方法が複雑で、その点でも問題点を残した。ブックマンさんによると、腹腔内投与の場合、何回のサイクルを必要とするかも実は明らかになっていないという。投与方法が複雑で、副作用の問題もあるとなると、6回のコースを完遂しなくても、1コースか2コースで完了するようになればそれに越したことはないと指摘するブックマンさんは、さらに次のように語っている。

「多くの副作用は、シスプラチンを腹腔内投与に用いているからで、より副作用が少ないパラプラチンを投与できるといいのです。しかし、腹腔内投与に関しては、シスプラチンに比べてパラプラチンの効果は低い評価でしかありません。そこで現在、3つのグループが腹腔内でのパラプラチンの投与を試みています。今年のASCOではマサチューセッツ総合病院からの発表があり、タキソール+パラプラチンを用いて、安全で忍容性の高い治療法の評価が行われています」

GOGでも、日本の研究者(GOG Japan)が責任者となって、日米共同での試験が進行中とのことだ。また、腹腔内投与を行う場合、シスプラチンの減量ということも考えられており、今後の検討課題という。

[腹腔内投与と静脈内投与の治療成績の比較]
図:腹腔内投与と静脈内投与の治療成績の比較

[腹腔内投与と静脈内投与の副作用の比較]
図:腹腔内投与と静脈内投与の副作用の比較


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