• rate
  • rate
  • rate

前立腺がんの基礎知識 日本で、世界で急増中のがん

早期に見つければ幅広い治療選択肢。ライフスタイルに即した治療法を

監修●木村 剛 日本医科大学泌尿器科学教室准教授 
取材・文●西条 泰
発行:2014年2月
更新:2014年5月

  

木村 剛さん

男性だけに発症する「前立腺がん」。日本だけでなく、世界的にも罹患者数が増えており、欧米ではすでに最も発生頻度の高いがんのひとつになっている。前立腺がんは進行がゆっくりなため、自分に合った治療を選択することが重要だ。前立腺がんの基礎知識について、日本医科大学附属病院の木村剛さんに聞いた。

Q1 前立腺がんが増えていると聞きましたが……

日本の前立腺がんによる年間死亡数は約1.1万人で、男性がん死亡全体の5%を占めます。前立腺がんの罹患数は、約4.2 万人で、男性がん罹患全体の約1 割を占めます。もともと欧米に多いがんですが、PSA(前立腺特異抗原)検診の普及、前立腺生検法の進歩、高齢者社会の中、日本でも急増しています。(注・統計は国立がん研究センターHP より)

罹患率は年齢とともに増加し、65 歳前後から顕著に高くなります。

がんは、前立腺の細胞が何らかの原因で無秩序に自己増殖することにより発生します。明らかになっているリスク要因は、年齢、人種、前立腺がん家族歴といわれています。

遺伝子の異常が原因という研究もありますが、正常細胞ががん化する過程はまだ十分に解明されていません。

図1 過去の2時点におけるがん発生数の変化

Q2 どんな特徴がありますか?

がんの中では比較的穏やかで、進行がゆっくりの場合が多いことが特徴です。かなり進行した場合でも適切に対処すれば、通常の生活を長く続けることができます。

早期がんなら治療の選択肢もたくさんあり、病状と患者さんの希望で選べます。新しい治療法も開発されています。

前立腺がんが進むと、近くのリンパ節や骨に転移することが多く、肺、肝臓などに転移することもあります。

Q3 自覚症状は?

早期の前立腺がんには特徴的な症状はありません。局所で進行すると、排尿障害、下腹部の不快感、血尿などの症状が出ます。さらに、骨に転移すると骨の痛みが、脊髄を圧迫すると下肢の麻痺などが出ます。骨盤内のリンパ節に転移して大きくなると下肢のむくみ(リンパ浮腫)が出ることがあります。

Q4 PSA検査について教えてください

症状がなくても、人間ドック、健康診断などでの血液検査で発見されるケースが増えています。その時に行われるのが、PSA(前立腺特異抗原)検査です。

PSA は体の中で前立腺の細胞のみがつくる物質です。前立腺がんもPSA をつくることができるため、がん細胞が増えたり、がん組織の一部が壊れPSA が血中に漏れ出たりするために、前立腺がんでは血液中のPSA が高くなります。PSA の値が4 を超えたら前立腺がんを疑います。治療後に再発や転移がないかチェックするためにも使われます。

PSA 値が異常であれば、より詳しい検査をします。最終的には前立腺生検といって、前立腺の組織を針で採取して顕微鏡で診断します。

一方で、PSA 検査の積極的な実施に関しては懐疑的な意見もあります。前立腺がんは進行がゆっくりで、進行がんであっても治療効果があるため、費用対効果を考えた場合に早期がんを発見することにメリットがあるのか、ということです。

とはいえ、PSA 検査ががんの発見につながることは間違いありません。発生率が高まる50 歳を超えたら年に1 回は受けていただきたいと思います。

図2 PSA値別がん陽性率

Q5 グリソン・ スコアって何ですか?

前立腺がんでは、がんの悪性度を判定するために「グリソン・スコア」という分類を用いて表現します。悪性度を5 段階に分け、生検で得た病理組織像で最も多い成分と次に多い成分のスコアを足した値をグリソン・スコアとします。

例えば、最も多い成分が「4」で、次に多いのが「3」の場合、4 + 3 でグリソン・スコアは「7」になります。合計数が大きいほど悪性度が高くなります。6 以下は悪性度が低く、7 が中程度、8 ~10 は悪性度が高いがんになります。

Q6 治療の選択はできますか?

超低リスク群では、PSA 監視療法が中心です。低リスク群では様々な治療法の選択が可能です。中間リスク群では手術や放射線治療が主な治療法となります。高リスク群においては、ホルモン療法を併用した放射線治療が主となります。手術も行われます。超高リスク群では、ホルモン療法を併用した放射線治療が標準治療となっています。しかし、症例によっては局所進行がんでも手術が選択肢の1 つとなります。

遠隔転移のあるがんについてはホルモン療法が標準治療です。各治療法のメリット、デメリットについては、次章のコラムを参照してください。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート3月 掲載記事更新!