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性機能障害などの合併症を抑える新たな治療選択肢

早期がんは小線源部分治療で 前立腺が温存できる!

監修●齋藤一隆 東京医科歯科大学大学院腎泌尿器外科学講師
取材・文●伊波達也
発行:2014年2月
更新:2014年5月

  

小線源療法で合併症を軽減する
根治治療を目指す齋藤一隆さん

早期の前立腺がんを、手術や放射線で治療するか、治療をせずに経過観察をするか、専門家の間でも意見が分かれるところだ。患者さんにしても、治療による合併症を抱えたくはないが、治療をしないことにも不安がある。そこで新たな選択肢として登場したのが、小線源部分治療法。一定範囲に限局したがんを対象に、前立腺を部分的に治療する方法だ。

機能温存を視野に入れ 治療するがん

図1 線源の構造

図2 小線源療法の実際(部分照射)

前立腺がんは、乳がんと同様に、予後が良好ながんである。合併症をいかに回避してより高いQOL(生活の質)を維持できるかを考えながら治療を選ぶが、その選択肢も他のがん種と比べて多い。

なかでも、根治性の面で手術と遜色がなく、治療後の排尿障害や性機能障害などの合併症も抑えられる治療法として希望する人が多いのが、永久密封小線源療法(小線源療法)だ。放射線治療の1つで、前立腺がんの標準治療となっている。

ヨウ素125というアイソトープを、シード線源と言われる小さなカプセルに密封し(図1)、前立腺の中へ埋め込む(図2)。腰椎麻酔下で、会陰部(陰嚢と肛門の間)から針を刺して行う(図3)。

いわゆる通常の放射線治療である外照射に対して、小線源療法は内照射とも言われる。

治療の対象となるのは、前立腺の中にがんが限局していて、PSA(前立腺特異抗原)の値が20以下、グリソン・スコア(組織学的悪性度の指標)が7以下、病期がT2c以下であるなど、リスク分類で中リスク以下の場合だ(施設によっては高リスクも対象とする)。治療は3泊4日ですむ。

図3 線源の挿入

直腸の超音波探触子による位置情報をガイドに、適切な場所に線源を挿入していく

小線源療法による部分治療を実施

患者さんの体への負担の少ない治療である小線源療法を、前立腺がんの部分治療に応用しているのが、東京医科歯科大学医学部附属病院泌尿器科だ。

治療に携る同大学院泌尿器科講師の齋藤一隆さんは、次のように説明する。

「部分治療とは、手術により前立腺を摘出したり、放射線により前立腺全体に照射するのではなく、がんが限局する部分だけを治療する方法です。前立腺の場合、尿道を真ん中として前立腺の片側のみにがんが留まっている場合に、その片側のみを治療することを言います」

部分治療は現在、様々ながんの治療で進んでおり、できるだけ機能を温存して患者さんのQOLを保つことを目標に行われている。

しかし、前立腺がんの分野では、部分治療が模索されつつも、がん病巣が多発したり、部位を特定するのが難しいといわれ、今なお標準的には行われていないのが現状だという。

実際、同科以外に前立腺がんに対する部分治療を実施している施設は、我が国にはほとんど見当たらない。同科が部分治療を進めている背景には、根治療法には優れた制がん効果があるものの、無治療で経過を診る待機療法との間で生存率に大きな差がないという臨床試験の結果が示されている点がある。

「早期前立腺がんに対する根治療法の意義が見直されつつあるのです。しかも根治治療では、尿失禁などの排尿障害、勃起不全や射精障害などの性機能障害が伴います。一方、待機療法では、治療による侵襲は避けられますが、がんがあるのに治療をせずにいることに不安を持ち続ける患者さんもいるのです。

そのような中で、根治療法と待機療法の間を埋める治療のあり方として、部分治療は十分存在意義があると考えています」

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