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MRIでみつけた病変を狙い撃ち

前立腺がん検出の精度を上げる、MRIと経直腸エコーを融合させたMRI-US fusion生検

監修●松岡 陽 東京医科歯科大学大学院腎泌尿器外科学講師
取材・文●伊波達也
発行:2018年1月
更新:2018年1月

  

「MRI-US fusion生検ではより精度の高いがん診断が期待できます。その後の治療選択に役立つこともメリットです」と語る
松岡陽さん

前立腺がんの検査にはPSA検査、直腸診、超音波検査などがある。それらの検査でがんが疑われたら、針生検による組織診断が行われる。従来の標準的な生検では前立腺全体へ定型的に針を刺して行われる。近年、MRI検査と経直腸的超音波検査の融合画像を活用して、がんが疑われるターゲットへの選択的な標的生検が注目されている。海外では、とくに再生検の場合に推奨されている生検方法だ。

標準的な前立腺がんの検査

前立腺がんは早期に見つかれば、手術、放射線療法(外照射)、小線源療法(内照射)など治療の選択肢が多く、早期がんの治療予後(よご)は5年生存率ほぼ100%というとても良好ながんだ。

いくつかの基準により、悪性度の低いがんと診断されれば、積極的に経過観察をしていく監視療法(active surveillance)という方法もあることが、治療のガイドラインに明記されている。

ただし、それだけに適正な診断を下し、的確な治療につなげていくことが、根治(こんち)に導くためには重要だ。前立腺がんを早期発見するための目印として重要な指標の1つに、PSA(前立腺特異抗原)がある。前立腺がん検診ではこの数値の測定が行われる。PSAとは、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクのことだ。前立腺に何らかの異常があると、血液中に漏れ出る量が増え、その数値で前立腺の異常を察知することのできるマーカーだ。

PSAは前立腺肥大症など、がん以外の疾患においても数値が上がるため、場合によっては、患者に不安感を与えることもある。とはいえ前立腺がんの早期発見に寄与してきたことは確かだ。例えば、PSAの数値が10ng/mLの場合には、がんの検出率は50%以上だ。2~3.9ng/mLでも10~20%検出される。

現在、前立腺がんに関する検査では、このPSAの数値に加え、直腸診という肛門から指を入れて直腸の側からの前立腺の触診、超音波検査などが行われる。超音波端子(プローブ)を肛門から直腸に挿入する「経直腸的超音波検査」が行われる場合もある。

さらに、年齢、家族歴、排尿状態などを加味して、前立腺がんが疑わしいと判断される場合には、その後、針生検による組織検査を行って診断を確定するのが標準的だ(図1)。

図1 最適な前立腺生検とは

「これまで、前立腺のMRI画像と超音波画像をいかに一致させるかが課題でした。UroNavではコンピュータ制御による弾性変形という技術により、MRIと超音波の画像を合致させることができるのです」

MRI検査を活用した前立腺針生検

前立腺生検は、直腸や会陰部(陰嚢の裏側と肛門の間の部位)を経て、前立腺に専用の針を刺し、組織を採取して病理学的にがんかどうかを診断する方法だ。この生検によりがんの有無のみならず、がんの悪性度、広がりなどを調べることができる。

現在、生検のスタンダード(標準)は「系統的生検」と呼ばれる方法であり、前立腺全体の10~12カ所程度へ針を定型的に刺す方法だ。この方法は6カ所程度の生検法にくらべて、がんの検出率は上がるものの、すぐに治療する必要性の低い低リスクがんの検出が増加し、過剰な治療につながってしまう可能性が懸念されてきた。

また一方、針が届きにくい部位にがんがある場合は、生検で検出されないという場合もある。

生検は、患者にとって負担を伴う検査であるため、がんが疑わしい部位をピンポイントに生検する「標的生検」という方法の精度を高める方向性が模索されてきた(図2)。

図2 〝ブラックボックス〟生検から標的生検へ

前立腺全体に針を刺す生検(左)から、がんが疑われるところに針を刺す生検に(右)

そのような中で、PSA検査などで前立腺がんの疑いがある患者に対して、MRI検査により、生検の必要性を評価する診療体系が注目されつつある。

「PSAに加えてMRIで生検の必要性を患者さんごとに評価し、MRIをもとに計画した針生検を行うことで、がん診断の精度をより高めることを目指しています。患者さんの生検の負担を減らすこともできればと考えています」

そう話すのは東京医科歯科大学医学部附属病院腎泌尿器外科講師の松岡陽さんだ。

松岡さんらはMRI検査を活用し、がんの診断とその後の治療の精度を高める努力をしてきた(図3)。

図3 前立腺生検の流れ

MRIを活用した標的生検の有用性については、2015年のEuropean Urology(欧州泌尿器学)誌にシステマティックレビューが報告されている。

この研究では、MRI所見に基づいた標的生検とMRIを用いない系統的生検の間で臨床的意義のあるがん(治療の対象となるがん)の検出率を比較している。

その結果、初回生検では差が小さかったが、再生検では、MRI標的生検のほうが検出率が1.54倍であった。このような研究の蓄積から、欧米では、とくに再生検において、MRI検査とMRI標的生検が提案されるようになってきている。今後、初回生検においてもMRI検査とMRI標的生検の有用性を得られることが期待されている。

「MRIを用いない系統的生検が標準的な方法ですが、MRI検査を活用した生検が広まれば、より効率的で精度の高い前立腺がん診断が可能になると思います」

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