• rate
  • rate
  • rate

「スクリーニング」、「確定診断」、「病期診断」の3ステップで判断する
知っていますか? 前立腺がんの検査・診断

監修:中村昌史 静岡県立静岡がんセンター泌尿器科副医長
取材・文:池内加寿子
発行:2012年9月
更新:2013年4月

  
中村昌史さん
50歳を超えたら1度PSA検査を
受けることをお勧めしますと
中村昌史さん

PSA検診によって早期の段階で発見される前立腺がんが増えているが、PSA値の多寡だけで「がん」と診断できるわけではない。
では、どんな検査が必要になってくるのだろうか。

初期には自覚症状がない

前立腺は男性の膀胱の真下にあり、尿道を取り巻く栗の実大の器官で、精液の一部となる前立腺液を分泌している。前立腺に発生する前立腺がんは、他のがんに比べて比較的おとなしく、進行も遅い。

「前立腺がんの初期にはほとんど自覚症状がなく、排尿障害などの症状をきっかけに発見されることが少なくありません。排尿困難や頻尿といった症状は、前立腺がんの他、前立腺肥大症などにもみられますが、前立腺がんが進行すると、血尿や精液に血が混じる血精液症などの症状が出ることもあります」

と、静岡県立静岡がんセンター泌尿器科副医長の中村昌史さんは話す。

前立腺がんは骨に転移しやすく、骨の痛みや、脊髄の圧迫による麻痺が出て発見されるケースもあるそうだ。

がんの診断までの3つのプロセス

前立腺がんの検査には、「スクリーニング」「確定診断」「病期診断」の3つの段階がある(図1)。

「最初に前立腺がんの可能性があるかどうか振り分けるのがスクリーニングです。PSA検査のほか、直腸診や経直腸的超音波診断と呼ばれる検査も行います。スクリーニングで前立腺がんが強く疑われた場合は、確定診断のための前立腺生検を行ってがんの有無を確かめ、悪性度も調べます。続いて、CT()や骨シンチグラフィなどの画像でがんの広がりや転移の有無などを調べて、病期診断を行い、治療方針を決定します」

[図1 前立腺がんの診断の流れ]
図1 前立腺がんの診断の流れ

CT=コンピュータ断層撮影

1.スクリーニングでがんを疑う

● PSA検診
[図2 PSA値とがんが発見される確率]
図2 PSA値とがんが発見される確率

出典:静岡がんセンター『前立腺がんの診断と治療の戦略』より

前立腺がんの早期発見に役立つのが、採血して血液中のPSA値を測るPSA検査だ。PSAは、前立腺でつくられる糖タンパク(前立腺特異抗原)で、通常は精液に含まれ、血液中にはごく微量にしか存在しない。ところが、前立腺にがんが発生すると、PSAが血液中に入り込み、PSA値が上昇する。

「PSAはすぐれた腫瘍マーカーですが、前立腺肥大や前立腺の炎症、圧迫など他の要因によっても上昇するので、他の検査も組み合わせてがんの可能性を調べます。PSAの基準値(正常値)は、一般に4ng/ml(以下、単位略)ですが、4以下でもがんが皆無ではありません。PSAの数値が高くなるほどがんの発見率も高くなり、PSA値が4~10の場合は3~4割、10以上では4~5割、20を超えると5割以上、100近くなったら炎症がない限りはがんが疑われます」(図2)

PSA値が4~10の場合、がんが発見されないことも6~7割あるのでグレーゾーンと呼ばれ、年齢やその他の検査結果によっては、確定診断である生検を見合わせ、PSAの推移を見守ることもある。

「もちろん、PSA検査が全てにおいてメリットがあるわけではありません。逆に検査によって治療しなくてもよいおとなしいがんまで見つけてしまうデメリットもあります。ただ、日本ではPSA検査の普及率が10%程度と非常に低く、症状が出てからの受診では進行がん、転移がんが相当数見つかっていることから、PSA検診をもっと普及させたほうがよいというのが泌尿器科学会の見解です。前立腺がんは50歳以上に多く、家族歴も発症に関係します。父や兄に前立腺がんの人が1人いると発症率は2倍、2人いると5倍と言われていますから、40歳以上で家族歴がある場合や、50歳を超えたら1度PSA検査を受けるとよいでしょう」

現在PSA検診は、各市区町村で行われているが、国の指針ではないので、実施していない自治体もある。そういった場合には、かかりつけ医などで血液検査をする際に、PSA検査の項目を追加してもらえばよいだろう。

● 直腸診・超音波診断

「PSA検査で値が基準値以上だった場合や、症状が出て泌尿器科を受診した場合は、スクリーニングの一環として、直腸診や経直腸的超音波診断を行います」

直腸診は、肛門から指を入れて前立腺の硬さなどを直接調べる検査だ。前立腺がんは、前立腺の中央部(移行領域)より外側(辺縁領域)、とくに直腸と接する背中側に発生することが多いので、熟練している医師ならある程度の確率で異常の有無を見分けられるという。

「通常、前立腺は軟らかいものですが、肥大すると親指を軽く握ったときの根元のふくらみくらいの弾力をもつ硬さ(弾性硬)で、進んだ前立腺がんでは、石のように硬い感触です。ただ、直腸診では前立腺のおなか側にあるがんは触知不能です」

また、他にも直腸に棒状のプローブと呼ばれる器具を入れて、前立腺を超音波で映し出す、経直腸的超音波診断と呼ばれる検査法もある。

「画面に黒い領域や左右非対称の領域がある場合に、がんの疑いがあると判断します」


同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート4月 掲載記事更新!