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最新標準治療――胃がん編 メスだけではない。内視鏡、腹腔鏡、抗がん剤で治療する時代

監修●山口俊晴 癌研有明病院消化器センター長・消化器外科部長
取材・文●「がんサポート」編集部
(2006年7月)

山口俊晴さん
癌研有明病院消化器センター長の
山口俊晴さん

消化器がんの中で、胃がんは、大腸がんとともに最も治りやすいがんの1つです。早期発見・早期治療が功を奏したからです。しかし、だからといって、胃がんを侮ってはいけません。早期のうちに腹膜に転移し、やっかいながん性腹膜炎になるのも少なくなく、転移・再発すればやはり厳しくなります。したがって、大切なことは、がんの進行具合を正しく把握すること、そしてその進行具合に適切な治療法を見つけ、実行することです。

正しい知識と情報を得る

[胃の位置と構造]
図:胃がんの位置と構造

胃は、人体の内蔵の中でも比較的なじみのある臓器です。

ちょっと食べ過ぎると「胃がもたれる」とか、脂っこいものを食べると「胃がムカムカする」とか、日ごろから絶えずその存在が意識されているからです。

その胃の粘膜にできるがんも、昔から最もポピュラーながんで、誰でも知っています。家族や親戚に大抵胃がんになった人が1人ぐらいはいるものです。

一部の胃がんではその治療も今や内視鏡でチョイチョイとやるだけで終わるため、患者は何の痛みも苦しみも感じなくて、「治るがん」の代名詞になっている観もあり、「胃がんなんて簡単」と思っている方も少なくないようです。

が、胃がんのすべてに対してそんな認識を持つのは、実は正しくありません。それは胃がんの一面でしかありません。癌研有明病院消化器センター長・消化器外科部長の山口俊晴さんはこう語ります。

「確かに胃がんは7~8割治るようになりました。それは医師たちの長年の研究の積み重ねにより胃がんの早期像というものが見出され、それに対して内視鏡技術が飛躍的に発達したおかげです。しかし、胃がんの中にはまだ治らないがんもあり、とくに再発すると、何もしなければ6カ月そこそこの命という厳しい面もあるのです」

したがって、胃がんになった患者さんがよりよい治療を受けようと思えば、まずは、このような胃がんに対する間違った認識を是正することから始め、正しい知識と情報を得ていくことが大切です。

「なかでも治療法を探るには、自分の胃がんがどういう位置づけにあるがんなのか、どういう進行具合のがんなのか、それを知ることが大切です。胃がんの治療法はさまざまあり、進行具合によって治療法が変わってくるからです」(山口さん)

進行具合は、病期(ステージ)で表され、胃がんの場合、1Aから4期まで6つに分かれています。

[胃がんの進行度(病期、ステージ)]

NO

リンパ節転移がない

N1

胃に接したリンパ節転移がある

N2

胃を養う血管に沿ったリンパ節転移がある

N3

さらに遠くのリンパ節に転移がある

T1,M

胃の粘膜に限局している

1A期 1B期 2期 4期
T1,SM

胃の粘膜下層に達している

T2

胃の外側表面にがんが出ていない、主に胃の筋層まで

1B期 2期 3A期
T3

筋層を超えて胃の表面に出ている

2期 3A期 3B期
T4

胃の表面に出た上に、他の臓器にもがんが続いている

3A期 3B期 4期

肝、肺、腹膜など遠くに転移している

4期
日本胃癌学会編『胃がん治療ガイドラインの解説』より
[胃がんの治療ガイドライン]
胃がんの治療ガイドライン

胃がんの検査

深さと転移で病期が決まる

この病期を決定するのに不可欠なのが、検査です。

「胃がんの検査で大事なのは、がんの大きさや形よりも、がんの深さです。それに、転移の具合を確かめることです。この2つの要素で病期が決まります」(山口さん)

胃は、食べ物を一時的に貯蔵するための袋になっています。袋は筋肉で作られ、その一番内側は粘膜という柔らかい組織で内張りされています。がんはこの粘膜にでき、大きくなると、胃の内側に飛び出したり、胃の壁の中に深く食い込んでいきます。そしてこの壁を破ると、近くの大腸や膵臓などの臓器に広がったり、お腹の中に散らばったりします。壁の厚みは5ミリぐらいの薄さですが、この壁のどこまでがんが達しているかががんの深さで、これを深達度といい、T(Tumor:腫瘍に由来)で表します。

もっとも、胃がんは壁の中を進んでいくばかりではありません。胃のリンパ管や血管の中に入り込んで、リンパ液や血液の流れに乗ってリンパ節や遠くの臓器にも飛んでいきます。これが転移です。この深さと転移の2つの要素でがんの病期が決まるのです。

では、その深さと転移を調べる検査にはどんなものがあるのでしょうか。

内視鏡検査、バリウムによるX線検査、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査等、いろいろありますが、山口さんは「なかでも重要なのが内視鏡とCTです。この2つで大まかな治療方針が決められます」と言います。

内視鏡は、患者さんの口から入れて胃の内部を調べる検査です。粘膜の異常な凹凸や色の変わったところを調べるのですが、もう1つ重要なのが、がん組織の一部を採取し、顕微鏡で調べて、がんかどうかを最終的に判定する(確定診断)ことです。一方のCTは、X線被曝の難点はありますが、最近の装置は解像度がすばらしく、お腹の中の血管の走行やある程度のリンパ節転移も検出できるそうで、転移を調べるのに有力な武器です。 これに対して、超音波内視鏡は、理論的には深さを見るのにいいのですが、潰瘍の痕とがんとの鑑別が難しいなど、精度が落ちるのが難点です。PET(陽電子放出断層撮影)も精度がよくなく、胃がんではその検査の意義もまだわかっていないそうです。