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切除不能・進行再発大腸がんにおける治療の現状

分子標的薬使用にあたっての RAS遺伝子野生型の重要性

取材・文●「がんサポート」編集部
(2014年7月)

1990年代までは5-FUに代表される、フッ化ピリミジン系の薬剤が中心的役割を担ってきた切除不能・進行再発大腸がんに対する化学療法。近年、分子標的薬の導入で治療の選択幅が大きく広がり、化学療法のアルゴリズム(治療手順)も3次治療(大腸がん治療ガイドライン2010年版)、さらには5次治療(同 2014年版)まで複数の治療ラインが並び、個々の患者さんに即した治療選択が可能になってきています。『大腸癌治療ガイドライン2014年版』に新しく掲載された「切除不能・進行再発大腸がんに対する化学療法のアルゴリズム(治療手順)」の背景を編集部でまとめてみました。

全身化学療法の目標 延命と症状をコントロール

大腸がんに対する細胞障害性薬剤(いわゆる従来の抗がん薬)の効果は、ほぼ頭打ちになったと言われており、現在では新薬の応用は分子標的薬が中心となってきていています。

本号の特集4「大腸がん治療ガイドライン2014年版」でも紹介したように、大腸がんにおいては、ステージⅠ~Ⅲでは基本的に内視鏡治療または外科的治療(手術による切除)が行われます。一方、肝臓や肺、腹膜などの臓器に遠隔転移の認められるステージⅣで切除が不可能な症例には全身化学療法が行われます。

『大腸癌治療ガイドライン2014年版』の解説によると、全身化学療法の目標は、腫瘍増大を遅延させて、延命と症状をコントロールすることにあります。化学療法を実施しない場合には、切除不能と診断された進行再発大腸がんの生存期間中央値(MST)は約8カ月とされていますが、化学療法を行った場合には、最近の治療の進歩によりMSTは約2年まで延長しています。ただし現状では治癒を望むことは難しいとのことです。

また、PS(全身状態)0~2の症例を対象としたランダム(無作為化)比較試験で、化学療法群は抗がん薬を用いない対症療法(BSC)群に比べて有意に生存期間が延長することが示されています。切除不能な進行再発大腸がんにおいて、化学療法が奏効して切除可能となる例もあります。

5-FU=一般名フルオロウラシル

化学療法のアルゴリズム 治療法の選択幅が広がる

図1は、『大腸癌治療ガイドライン2014年版』に掲載されている「切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法のアルゴリズム」です。

特集4でも触れていますが、2010年版との違いは、治療法、使用薬剤の面では、1次治療で「FOLFOXIRI」療法と3次治療から新しい分子標的薬スチバーガが追加された点です。また治療段階が2010年版では3次治療までだったものが、5次治療まで記載されています。ただし、新しく追加された治療法および薬剤については、図下の注意書きにあるように、日本での使用経験の少ないこと、治療段階やPSによっては有効性と安全性の確立や評価がされていないことなどが、使用上の注意事項として記されています。

図1 切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法のアルゴリズム

*1:アバスチン、抗EGFR(上皮成長因子受容体)抗体などの併用が推奨されるが、適応とならない場合は化学療法単独を行う

*2:KRAS野生型のみに適応

*3:1次治療におけるFOLFOXIRIの国内での使用経験は少なく、安全性に十分配慮する必要がある

*4:スチバーガの有効性と安全性は、添付文書にも記載されているように、1次治療および2次治療における有効性と安全性は確立していない。
またPS0またはPS1のみで確認され、PS2からPS4の患者に対する有効性と安全性は評価されていないことに留意する必要がある

*5:スチバーガの添付文書に1次治療および2次治療における有効性および安全性は確立していないとの記載ある

*6:PS2以上に適応される

*7:静注5-FU+ロイコボリン

注:〝 (スラッシュ)〟は列記したレジメンのいずれかを選択するという意味である。

出典:「大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版 大腸癌研究会編」(金原出版)より一部改変

スチバーガ=一般名レゴラフェニブ

強力な治療が適応となる患者とならない患者に分類

もう1つの特徴は、化学療法のアルゴリズムを「強力な治療が適応となる患者」と「強力な治療が適応とならない患者」の2つに分けて示している点です。「強力な治療が適応とならない患者」については、患者因子と腫瘍の状態の両面から定義されています。

患者因子としては、患者さんが重篤な有害事象(イベント)を好まない、重篤な併存疾患が一次治療薬の併用療法に耐容性がないと判断されることなどが記されています。一方、がんの状態としては、現在切除不能な多臓器(または多発)転移があり、将来的にも切除可能となる見込みが乏しい、無症状かつ緩徐な腫瘍進行と判断される(急速な悪化の危険性が少ない)などが挙げられます。

ただし、「強力な治療が適応となる患者」さんでも、緩徐な腫瘍進行と判断される症例や重篤な有害事象を好まない場合には、併用薬剤の数などを減らした別の治療法が選択肢となります。