マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第5回 「もしかしたら?」とのつき合い方 <椅子に腰かけて行うボディ・スキャン>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
(2018年10月)

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

1度、がんを患ったことのある人なら、何かしら体調に変化を感じると、「もしかしたら再発かも」「転移かも」「検査に行ったほうがいいのかな」、といった考えがほとんど自動的に頭をよぎります。

体調が落ち着いてくると、「もう少し様子を見よう」となり、やがてあまり気にならなくなりますが、こうした自問自答はあたかも通奏低音のように日常生活の中で繰り返されます。

「もしかしたら?」の不安が大きくなり、気分が沈みがちになります。今さら考えても仕方がないことや、今から考えても仕方がないことが繰り返し頭に浮かび、堂々巡りに陥り、ますます調子が悪くなって行くこともあります。

しばしば頭をよぎる、この「もしかしたら?」と、どうつき合っていくのか。

「自分の体の声に耳を傾けること」が組み込まれている

ヨガは1つの回答を提示してくれます。

ヨガを行なっているときは、「今ここ」の自分の体の声に耳を傾けることが、ヨガというシステムに組み込まれています。

例えば、私のヨガクラスやパーソナル・セッションに参加したら、時間になると最初に私が「では始めます」と挨拶します。参加する人は、正座か安座か、その人の姿勢が安定する座り姿勢で、同じように挨拶します。挨拶自体は短い時間ですが、体の軸を整え、呼吸を整えます。

ウォームアップでも、スタートの姿勢があり、重心を意識し、頭のてっぺんを意識し、呼吸とともに体を動かしていきます。それは、その動作によって引き起こされる体の感覚に注意を向けることを促します。そして、いくつかのポーズを行っていきます。

ヨガを始めた頃は、このポーズは何に有効なのか、今やっているやり方で正しいのかどうか、将来的にはどのような効果が期待できるのか、あるいはヨガとは全然関係がないことなどが多少なりとも、ポーズの途中で頭をよぎるはずです。

けれども、いくつかのポーズを行っていくうちに、「何はともあれ」という気持ちになっていきます。いろいろ気になることはあっても、「とりあえず、ま、いいか」という気持ちになってきます。知らず知らず、ポーズに集中する瞬間が出てきます。

ヨガ教室の実際では

「はい、息を吸いながらすーっと背中を伸ばし、ゆっくり吐きながら体を前傾させていきます」

「お尻はしっかりとマットに着いています」

「坐骨を感じてください」

「首や肩にぐいっと力入れてませんか?」

「余分な力を入れないで、この姿勢でできる、楽な呼吸をしながら、続けますよ」

「今、どこにどんな刺激が起きているか、体の内側の感覚に注意を向けて」

「とくに何も感じなくても、それはそれで、今この瞬間に体験していることです」

「もし、痛いかもと思ったら、それはもうやりすぎてますから少し戻して」

「痛気持ちいいというとき、〝気持ちいい〟と〝痛い〟の割合は、気持ちいいが80~90%、痛いが10~20%くらいでやっていきましょう」

「自分の楽な呼吸で続けて」

「では、次に息を吐いたら、吸いながらゆっくり戻してきて」

「楽な姿勢になって呼吸を整えます」

「今やったポーズの余韻めいたものが体の内側に広がってきたら、それを味わいます」

「とくに感じなくても、それでいいんですよ」

というようにいくつかのポーズでくり返していくうちに、それまで頭を占めていた堂々巡りの考えや、圧倒されそうな倦怠感や無力感から「いったん離れる」というのができてしまっているのです。

好きなことを行なっているときも「今という瞬間」に意識は集中できる

「いったん離れる、保留にするということが、できてしまっている」とは、そうしなくちゃと無理に思うのとは少し違って、「ま、いいか」という感じになっているということです。しばらくしたら、また気分が鬱々としてきたとしてもね。

そうこうするうちに(大抵は2~3カ月かかります)、家で1人でヨガをやっていても、それがたった1ポーズでも、すっと意識を「今という瞬間」に集中させることができるようになっていきます。もっと言えば、ポーズをとらなくても、座ったまま、あるいは立ったまま、横になった姿勢でも、マインドフルな時間を持つことができるようになります。

とは言っても、なかなかそうは簡単にいかない。やればいいとわかっていても、頑なにやりたくないときもあります。

でも、そういうときの自分に対しても、以前より寛容になってくるのです。「ま、いいか」です。

何もヨガでなくていい。絵を描くこと、音楽を演奏すること、散歩すること、犬と遊ぶこと、植物を育てること、好きなことをやっているときには、今という瞬間に意識は集中され、そのプロセスを楽しむことができます。

マインドフルネス・ヨガとは、今という瞬間に体験していることをマインドフルに味わう、価値判断しないで感じるままに感じる、気づくということに焦点を当てたヨガです。

<椅子に腰かけて行うボディ・スキャン>

今月は<椅子に腰かけて行うボディ・スキャン>を紹介します。

これは瞑想の1つの行い方です。
とてもシンプルに自分の体を体験していくマインドフルネス瞑想です。

それは自分とのもう1つのつき合い方と言ったほうがいいかもしれません。自分と闘わないで、自分をあやしながら、育てるやり方です。体を決して置き去りにしない。体の発する声に耳を傾け、それに伴ってわき起こる思考や気持ちに気づき、どんな思考や気持ちについても価値判断しないでいます。

今回は頭部、頸部、肩と両手のボディ・スキャンをやってみましょう。

頭部、頚部、肩と両手のボディ・スキャンの行い方1

姿勢:イスに深く腰掛けます。ソファよりも硬めの椅子のほうが、体軸を意識したとき、頭のてっぺんまで楽に伸ばすことができます。両手は腿の上に、手のひらが上でも下でもいいので緩やかに伸ばします。目は半眼か閉じます。

かかとが浮いていたら、足の裏が床につくように、座布団かバスタオルを下に敷くとよいでしょう。足も膝も腰幅に開いています。

呼吸はとくにコントロールしようにとせずに、体に任せます。自分の呼吸を続けます。

手指:目で見て確認しなくても、私たちは自分の手指の1本1本を感じることができます。

両手の親指、人差し指、中指、薬指、小指、順番に注意を向けて、今この瞬間、どんなふうに感じているのか、感じるままに感じていきます。指の付け根から指先まで、スキャンするように観察していきます。何も感じなくても、それは今この瞬間の体験です。それでいいのです。

次に手のひら、手の甲と進みます。

気になる感じがあったら、呼吸と同調させながら、それがどんな感じなのか観察していきます。いつからそうなのか、何が原因か、病院に行くべきか、とか考えるのではなくて。

そして次に移動するときは、いったんこれらのこと忘れて、次に行きます。

次は、左右の手首から肘まで、意識集中していきます。

次は、肘から腕の付け根まで。

肩と首:肩に注意を向けます。次いで首。前側には喉があり、真ん中は頸椎が走っています。首の骨は今、どんな感じか、感じていることを受け止めていきます。

首を正しく立てようとしなくていい。

顔面と頭部:顎(あご)の付け根、顎、口の中、唇。

鼻、頰(ほお)、耳、目と目の周り、眉、額。

後頭部から頭頂、前頭部まで。頭部の内側。

各部位2~4呼吸くらい。でも慣れてきたら、いくつかの部位を流れるように、しかし丁寧さを忘れないで、あたかもスキャンするように体を感じ取っていってください。

そして、ゆっくり目を開く。

頭部、頚部、肩と両手のボディ・スキャンの行い方2

疲れているときは眠たくなります。手指を1本1本そらして、しっかり覚醒しましょう。

最初に、指を1本1本順番にそらしてからはじめても集中しやすくなります。

 

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