マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第17回 本当にオリンピックやるの? <壁ネコのポーズ>
ほんのひと月前までは、年々ひどくなる夏の暑さを嘆き、「この暑さの中、本当にオリンピックやるの?」があいさつ代わりになっていました。けれども喉(のど)もと過ぎれば何とやら、季節が変わればその記憶も薄れていきます。
で、前回の東京オリンピックが開かれた1964年の話です。オリンピックが開かれたのは10月です。ほとんど忘れられていますけど、その年の夏、東京はそれはもうひどい渇水(かっすい)に見舞われました。
1日は、やかんやバケツなどに水を確保することから始まります。プールで遊べなかった、というような生やさしい水不足ではありません。取水制限が段階的に実施され、家庭用の水道も水量が下がり、次いで1日数時間の断水、断水時間がだんだん長くなり、最後は短い期間でしたが給水車が出ました。
当時の東京都知事・東龍太郎は退任の際、「任期中、最も印象に残ったことは?」という質問を記者から受けました。インタビューした記者は当然、「東京オリンピック」という返事が返ってくると思ったのでしょうが、知事は「渇水」を挙げたのでした。
それほどひどい渇水でしたが、たった1回台風が来ただけで解消したと記憶しています。
しかし、今年の夏、東京は台風の影響で大雨が続き、汚水処理が間に合わずに一部そのまま海に流したせいで、オリンピックのマラソンスイミングやトライアスロンのテスト会場となったお台場の海、「水温31度、自分の手が見えないほど水が濁っていた」というのをニュースで知り、絶句。トライアスロンではスイムパートが中止となりました。強行したマラソンスイミングでは、体調を崩した人も出たとか。
美しい海はいくらでもあるだろうに、その競技が行われた日、お台場の海は大腸菌の数が上限の20倍に達していたというのですから、やっぱり、「オリンピック、本当にやるの?」でした。
1年先の心配は元気の証拠
「下の息子が大学入学するまであと1年。そこまで生きていられたら、親としての責任は辛うじて果たしたことになる」、と自分を奮い立たせてきたというのはAさん(41歳)。
「1年先の心配をしてるというのは元気だということですね。本当に体調が悪かったときは、今日、明日、明後日くらいしかリアリティをもって考えられませんでしたもん」
「ヨガは若いころから好きだけど、がんになった側の腕や指先がしびれ、力が入らなくなりました。リンパ節に転移が見つかり、治療の結果、かなり改善されてきたものの、前は気持ちよかったポーズができなくなっていることがつらい」と。手を床につくポーズがうまくいかないのだと言います。
リンパ節郭清したケースでも、浮腫が出るリスクを考えて、床に手をつくポーズを避けているという方も少なくありません。こういうときに、椅子を使ったり、壁を使ったりという工夫が生きてきます。
今回紹介する壁を使ったネコのポーズは、通常の<ネコのポーズ>を床ではなく、壁に手をついて行います。
このポーズは脊柱を大きく丸め、1本1本の椎骨(ついこつ)を意識して、各椎間を背中側に、ジワッと拡げていきます。丁寧にやってみると、硬くて丸みが出ない箇所があることに気づけるかもしれません。
気づけたらしめたもの、その部分を意識することができます。マインドフルにヨガをやると、気づきが深められていきます。よくわからなくても、わからないままに丁寧にマインドフルに行ってみましょう。
<壁ネコのポーズ>
①椅子に少し浅めに腰かける。背筋を伸ばし、両腕は肩幅に開き、肩の位置まで上げて、手のひらを壁につける。
②息を吐きながら尾骨から頭頂まで脊柱を大きく背中側に丸め湾曲させる。そのまま静かに呼吸するが、自分の椎骨の1本1本を意識しながら行う。
次のような手順で意識するといいですよ。
a)肛門を軽く閉じ、尾骨から仙骨を意識。仙骨は骨盤の中央にある逆三角形の大きめの骨。吐く息で恥骨から下腹部を仙骨のほうに押し出すようする。そこを少し緩めて息を吸う。
b)腰椎骨を意識。大きな椎骨が5本あります。息を吐きながら、臍(へそ)を腰椎骨のほうに押し出すように意識。そこを少し緩めて息を吸う。
c)次に胸椎と肩甲骨を意識。息を吐きながら胸の中心を背中のほうに押し出し、肩甲骨を拡げる。少し緩めて息を吸う。
d)息を吐きながら顎(あご)を軽く喉のほうに引き寄せ、頭部の重みで頸椎骨を伸ばす。息を吸いながら①の姿勢に戻し呼吸を整える。
③普通に呼吸しながら手を上方にはわせて、ネコ伸び。額を壁につけて。肩甲骨の間にある胸椎を壁のほうに沈めていく。気持ちよく伸びをして、3~4呼吸。
④ゆっくり①に戻し、両手を腿に置いて、リラックス。
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
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