マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第40回 ロコモーションに気づく <膝頭で脹脛をほぐすポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
(2021年9月)

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

私たちはふだんから何気なく歩いています。早足になったり、ゆっくりになったり、ときには千鳥足になったり。

歩くことはあまりに慣れ親しんだ行為ですから、それほど意識せずに歩いています。信号で止まったり、時間を見たり、人とぶつからないようにしたり、小さな段差にも対応するなど、あれこれ半ば自動的に気にかけながら、歩行しています。

もしその歩行を、〝超スローモーション〟で行ってみたらどうなるでしょう。

素足で超スローモーション歩行する

わたしは「呼吸と瞑想」に焦点を当てたクラスを、2カ月に1回のペースで開催しています。

コロナ禍にあって人数を制限し、マスク着用で行いますから、呼吸はとくにコントロールしようとしないで、ただ今している自分の呼吸に注意を向けるマインドフルネス瞑想を主軸に行います。

瞑想と瞑想の間に、少し体を動かします。このときに、超スローモーションで歩くというエクササイズを行います。これが案外難しいし、発見に満ちています。

床の上を素足でゆっくり、とてもゆっくり歩行します。自分の体重移動にマインドフルになりながら、例えば、足の裏に注意を向けて、足のどの部分から着地し、重心はどのように移行し、どの部分から床を離れるのか。反対の足はどのタイミングで前に運ばれるのか。

正しい歩き方を行おうとするのではなく、自分が今体験している歩行の瞬間瞬間のプロセスに意識を向け、繊細に丁寧に観察する。

家の中の文化・生活様式の違い

わたしはいくつもの文化が交錯するのを感じます。

日本人のほとんどは、家の中では靴を脱いでいます。わたしは家の中ではいつも素足か室内用わらじで生活しています。よほど寒いときは5本指靴下をはきます。ストッキングにスリッパというのは正直、歩きにくくてどう歩いてよいのか戸惑います。でもよその家に招かれると必ずスリッパが用意されています。

アジア圏では、たいてい家の中では素足です。

インドでは多くの人が今でも道路を裸足で歩きます。夏、昼過ぎの熱くなったインドの石山を裸足で歩いたとき、足裏がやけどしそうになり、山道の途中で外国人向けに売っている中古のビーチサンダル(高額!)を買い求めました。

その横をネイティブたちはなんということなく裸足で歩いていきます。その石山は聖山なので、麓のアシュラムの門のところで靴を脱ぎます。靴は原則禁止なのです。申請すればビーチサンダルなどに履き替えを許可されます。夏でも早朝だと石の上は程よく温かく、裸足で歩くのはとても気持ちがいい。

20年以上も南インドで暮らしている友人は、日本に一時帰国すると、無性に裸足で歩きたくなるといいます。裸足で歩いたら、日本ではすごく目立つので、公園に行って芝生の上を裸足で歩くことで我慢するのだそうです。

一方、パリで暮らしている友人は、家の中でも靴で暮らす欧米式には絶対なれない、ならないと断言します。パリのアパートには日本式のたたきはないので、玄関の内側にマットを敷き、そこをたたきに見立てて靴を脱ぐ。

彼女はパリに長く暮らしている日本人で、家の中でも靴を履いているなんて「どうかしている」と言います。外では靴、だけど家では靴から解放されるというやり方。足をそっくり覆っている靴から開放することで、うちに帰った実感がわく。これは譲れないと。

靴のまま自宅に上がらないことが、コロナ対策では「吉」と出たと初期には言われましたね。

わたしたちは外では靴を履いて生活します。靴と裸足の最も大きな違いは踵(かかと)のあるなしです。道行く人の歩き方を観察していると、多くの人が踵で着地し、つま先で蹴って前に進んでいます。

東銀座で30分ほど観察したところでは、下駄を履いた人は見かけませんでした。下駄や草履だとどういう歩行になるのか、おそらく踵で着地にはならないでしょう。女性も約4割がウォーキングシューズを履いています。

さて室内ではどう歩くのでしょう。

足袋で歩くときはすり足に近い歩き方をします。軽く膝を曲げて、お尻から下が下肢という意識ではなく、腿のつけ根から下が下肢です。スリッパでもたぶんそうではないかな。

そういう、あれこれに気づくエクササイズです。歩くことに専心すること自体、新鮮な体験です。

さて、今月は<膝頭で脹脛をほぐすポーズ>を紹介します。

片方の脚の膝頭で、もう片方の脚の脹脛(ふくらはぎ)をほぐすポーズです。

脹脛の不調は、冷え、だるさ、むくみに代表されます。しかも多くはこの3点がセットになっています。

長時間のデスクワークはこうした脹脛の不調不快を招きます。リモート・デスクワークでは、通勤時に自然と使われていた下肢の運動不足も原因の1つに加わります。

暑い季節では熱中症対策がしきりと呼びかけられ、エアコンを常時つけていることも珍しくありません。下肢は意外と冷えています。

リモートワークでは適宜適切に休憩を入れることがとても重要です。オフィスではトイレに立つのもそれなりに歩行し、下肢が使われます。家では意識して室内でも歩行したり、スクワットすることが必要です。前述したような超スローモーにマインドフルに行う歩行も是非お試しください。

そして、脹脛の冷え、だるさ、むくみを感じたら、仰臥姿勢で行う今回のこのポーズが一番効果を実感できることでしょう。また就寝前に行うと寝つきも睡眠の質も改善されます。

<膝頭で脹脛をほぐすポーズ>

①仰向けになり、両膝を立てます
②左の膝がしらの上に、右脹脛(ふくらはぎ)をのせる
③脹脛の上部(膝のすぐ下)をフィットさせ、息を吐きながら膝頭と押し合うようにする。2~4呼吸
④脹脛のもっとも膨らんでいる部分にフィットさせ、同様に息を吐きながら押し合うようにする。2~4呼吸
⑤脹脛の下部をフィットさせ同様に
⑥膝頭に脹脛をゆっくり移動させて、マッサージする
⑦ここをもう少しほぐしたいところが出てきたら、そこにフィットさせる。脹脛の真後ろではなくて、内側、外側と気持ちいいところを探り当てていきます
⑧左右の脚を交代して同様に。終わったら、完全なくつろぎのポーズでリラックス

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

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