肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 35

乳房再建で、いびつな形に。訴えることはできないか?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
(2012年9月)

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


左側の乳房切除手術を受け、その後、乳房再建手術をしました。しかし、再建した乳房は、形も感触も医師が説明したものと全く違っていました。また、再建手術の傷跡も、思った以上に目立ちます。医師を訴えることはできないでしょうか。

(30代、女性)

患者さんの訴えを認めたケースがいくつかある

判例をいくつか見てみましょう。

1つ目は、豊胸手術を2度受けたものの、2度とも失敗したケースです。

豊胸手術は、普通脇の下からメスを入れて胸部の組織をはく離し、できた空間にシリコンや生理食塩水の入ったバッグを埋め込む(乳房プロテーゼと呼ばれる)方法か、または自分の体(大腿部や臀部)から吸引して取った自家脂肪を乳房に注入する方法で行うようです。

この女性の場合は、最初生理食塩水の入ったバッグを左乳房に埋め込んだところ、術後左右の乳房の高さが違ってきてしまったので左乳房の再手術を受けたら、その後それが2段腹のようになってしまったというものです。このケースでは、『最初に挿入したバッグの周りには皮膜や瘢痕ができているはずであるから、それを完全に取り除いた上で、新しいバッグを入れなければならなかったのに、その処置が不完全だったので2段腹状になった』と、判決では医師の過失を認めています(平成13年4月5日大阪地裁判決)。

2つ目は、切開する位置を誤った過失です。本来なら、脇の下からメスを入れるべきところ数㎝前寄りにメスを入れてしまったので、腕を下ろした状態でも傷跡が見えてしまうということで訴訟になったものですが、判決では『美容整形においては患者の主観的満足という点が重視されるので、医師はそのような患者の願望を満たすために細心の注意を払う義務がある』として、やはり医師側の責任を認めています(平成15年7月30日東京地裁判決)。

また、過失とまではいえなくても「説明義務違反」として医師に損害賠償義務を負わせたものもあります。過去に1度豊胸手術を受けて、乳房に生理食塩水のバッグが入っている女性が、もう1度豊胸手術をしようとしたケースです。

この場合は、自家脂肪を注入する術式を取ったようですが、手術の際、医師はすでに挿入されている生理食塩水のバッグを抜いてしまいました。医師はもしも注射針がバッグを傷つけたりすると、食塩水が漏れ出す恐れがあると考えたからのようですが、その結果、乳房は以前よりも小さくなってしまいました。怒った患者は、それならそうと初めから言ってくれれば手術などしなかったのにと医師を訴えました。裁判所も「説明義務違反である」として、女性の訴えを認めています(平成17年11月24日東京地裁判決)。

あなたの場合も、医師の責任を問うことは可能だと思います。お近くの「法テラス」に行って弁護士を紹介してもらうと良いでしょう。