肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 37

別居中も、夫から生活費は支払ってもらえるか? 

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2012年11月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


私は子宮体がんの手術で子宮を摘出しました。家事や子育てをしながら治療を続けていましたが、夫の浮気がわかり娘を連れて実家に帰っています。夫の親から謝られて、離婚するかどうか迷っていますが、いまは夫の元に戻るつもりはありません。しかし、これまでは専業主婦で、夫の給料で生活していました。今後も夫から生活費をもらうことは法的にできるのでしょうか?

(32歳、女性)

基本的に、夫は生活費を支払う必要がある

夫から、生活費を支払ってもらうことはできます。

民法752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。このうち同居義務については、やむを得ない事情があるときには免除されます。

例えば、業務上の配転命令を受け単身赴任をせざるを得ないときとか、病気、暴力等で事実上同居が不可能のときなどが、それにあたります。また、仮に裁判所に申しでて相手が同居を求めたとしても、裁判所は「同居義務は任意になされなければ意味がないもの」として、直接強制(別居している配偶者を連れてきて同居させる)も間接強制(罰金の支払いを命じる)も許してはいません。

あなたの場合もこれにあたるでしょう。それゆえ、別居を続けることそのものは、とくに咎め立てられることではありません。もしかしたら、おつれあいから「勝手に家を出て行った奴に金なんか払わない、金が欲しいなら戻ってこい」と言われているのかもしれませんが、その言葉に怯えて請求をあきらめてしまう必要はありません。

一方、冒頭に引用した民法752条は夫婦間の協力扶助義務、つまり扶養義務を定めた根拠をともなっています。夫婦間の協力扶助というのは、未成年の子どもが居るならば、子どもの養育を含めたうえでの義務です。しかも、その程度は親兄弟などの親族に対する扶養義務よりも、一段と程度の高い義務(生活保持義務)です。自分の生活に余裕があったら扶養してあげなさい(生活扶助義務)というものではなく、相手にも自分と同じレベルの生活を保障しなさい、というものです。平たくいえば、自分が高級レストランで食事をする余裕があるなら相手にもそれなりの生活保障を、また自分がインスタントラーメンばかり食べている生活ならば相手にもその程度の生活保障を、ということです。ですから、どうぞいままで通りの生活費を請求なさって下さい。

もし、おつれあいがそれに応じてくれないなら、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求」という調停を起こして下さい。調停で話がつかなければ、裁判所で審判を出してくれます。

なお、家庭裁判所に申し立てることを視野に入れて、いまのうちから「家計収支表」を作っておくとよいでしょう。1カ月にこのくらい必要である、という概算表です。家庭裁判所には計算表とグラフがあり、それに基づいて算定するのが普通です。とはいえ、それは決して高いものではありません。どちらかというと、かなり支払者側に有利にできています。

最近ではそのことが問題にされて、グラフそのままではなく、実支出に基づいてその金額を多少修正する、ということも行われています。その場合の参考になるよう「家計収支表」を作っておくことをお勧めします。

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