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生命保険を担保に、借用はできる?

解決人 渥美雅子(あつみ まさこ) 弁護士
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2013年3月
更新:2014年3月

  

多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624


大腸がんに罹患しました。転移の可能性もあり、会社を退職してしまいました。ただ、まだまだ治療が続くため、どの程度の費用になるのかわからず、今後の治療費用が心配です。生命保険には加入していましたが、がん保険には入っていません。生命保険を担保に治療費に使うお金を借りたいと思っています。可能でしょうか?

(40代 男性)

契約者貸付制度を活用する

それは可能です。

生命保険に加入しているなら、まずは「契約者貸付制度」を利用できます。契約者貸付制度とは、契約している生命保険の解約返戻金を担保に、その生命保険会社からお金を借りられる制度です。

借りられる金額は、通常解約返戻金の8割内外です。具体的には保険会社や保険の種類によって異なってきますから、いくらまで借りられそうか、あなたが加入している保険会社にお問い合わせ下さい。

この制度を使ってお金を借りると、他のカードローンなどでお金を借りるより利率が安いようです。ただ、もしも保険金を担保に銀行に融資を申し込んで、それが実行されるようなら金利はさらにそちらの方が安いかもしれません。とはいえ、治療に専念しなければならないお体ならば、銀行の融資手続きにエネルギーを割くよりも保険会社の貸付制度を利用なさる方が楽ではないか、と思われます。契約者貸付なら申し込めば1~2週間程度で貸付金が振り込まれてくるようです。

もう1つ。現在はほとんどの死亡保険契約に「リビングニーズ特約」がついているはずです。この特約は、保険契約者が医師から「余命6カ月以内」という診断を受けた場合、死亡保険金額の一定の範囲内で生存中に保険金を受け取ることができる、という趣旨のものです。その金額がいくらになるかは契約内容によりけりですから、これもあなたの加入している保険会社にお問い合わせ下さい。

ところで、現在死亡保険金の受取人は誰になっているのでしょうか。言い替えると、あなたがもしも死亡したときに、誰が保険金を受け取るのでしょうか。あなた亡きあと、生活に支障を来す扶養家族がいないのなら、いっそのこと生命保険契約そのものを解約してしまってもいいのではないかという気がします。解約すれば解約返戻金が全額戻ってきます。

もしも受取人が指定されていないとか、受取人が「法定相続人」と指定されていると、近しい親族がいない場合は、死亡保険金は日頃お付き合いのない甥姪にいってしまうこともあります。甥姪さえもいなければ国家のものになります。恐らくそれはあなたの本意ではないでしょう。だったらこの際、保険契約そのものを解約することも視野に入れてみませんか。

「保険」というのは、そもそも将来起こりうる不測の事態に備えるものです。いま現に困った事態に直面しているなら、将来よりも現在どう活用するかが大事だと思います。

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