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がんと生きる知恵

その倦怠感は「副腎疲労」が原因かもしれない【後編】 食生活を変えて、体を甦らせる!

監修●本間良子 スクエアクリニック院長
取材・文●菊池亜希子
発行:2019年2月
更新:2019年2月

  

「人間は食べたものでできているといっても過言ではありません」と語る本間良子さん

「副腎疲労」について前編(1月号)で知っていただけただろうか。がん治療中、もしくはその後、長く続く疲労感を抱えているなら、いちど「副腎疲労」を疑ってみてほしい。

<監修者プロフィール>聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学病院総合診療内科入局。専門は内科、皮膚科。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、日本医師会認定産業医、日本内科学会会員。アドレナル・ファティーグ(副腎疲労)の提唱者、ウィルソン博士に師事し、日本に「副腎疲労」という病態があることを広めた。著書に『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』など多数

「副腎疲労」から抜け出す初めの1歩

ストレスに晒(さら)され続けると、副腎が疲れ切る。すると、副腎はストレスをコントロールするホルモン「コルチゾール」を分泌できなくなり、ストレスが暴走。体中に炎症が広がり、強い疲労感となって日常生活を脅かす。これが「副腎疲労」である。

「ストレスには、精神的ストレス、肉体的ストレス、環境的ストレスの3種類があります。がんは、がんと共存することの精神的ストレスはもちろん、抗がん薬治療や放射線治療などが体に与えるストレスも大きく、がん治療が副腎疲労の引き金になることも大いに考えられます」とスクエアクリニック院長の本間良子さんは指摘する。

ただし、副腎疲労は「病気」ではなく「病態」。ストレス過多で炎症が起こった病態を脱するために、原因となるストレスをできるだけ排除していく生活習慣の見直しが治療の基本となる。

「自らの意思で排除できるのは、環境的ストレスです」と本間さん。いつの間にか体に取り込んでいる有機化合物について知り、なるべく体内に入れないよう気をつけることが、副腎疲労を和らげる最も手っ取り早い方法だというのだ。

有機化合物とは、食品の保存料や添加物、農作物に使用する農薬。さらには、殺虫剤や柔軟剤に含まれる化学物質など。これらが体内に入る経路は、主に口と鼻。つまり、食べることと吸い込むことで体内に取り込まれてしまう。

誤解を恐れずに言うならば、抗がん薬は最強の化学物質。がん治療を受けているときは、他の有機化合物を取り除き、少しでも体内の毒素を減らしていくことを考えていきたい。

保存料や添加物たっぷりのファストフードや加工食品、出来合いの惣菜ではなく、簡単でいいから自分で調理したものを食べよう。野菜は、無農薬、もしくは減農薬の旬のものを選ぼう。強い香りの柔軟剤や殺虫剤、虫よけスプレーの使用をやめよう。室内をカビの温床にしないよう窓を開けて換気しよう。洗濯槽や浴室のカビもできるだけ除去しよう。

こうしたことを少し意識して生活していくと、体内の毒素が減り、副腎が少しずつ元気を取り戻して、コルチゾールを分泌できるようになっていく。すると、薄皮を剥ぐように疲労感が薄らいでいくそうだ。

ここまでは、前編(2019年1月号)で見てきたわけだが、ここで改めて、副腎疲労の治療には3つの柱があることを知ってほしい。

①炎症を引き起こす毒素(ストレス)を体内に入れないようにする
②入ってしまった毒素を体の外へ出しやすくする
③副腎を元気にする食べ物を選んで食べる

つまり、前編では①を見てきたわけだ。後編では、②と③について考えてみたい。

腸のバランスが排出のカギ

気をつけていても、体内に入ってくる有機化合物をゼロにすることはできない。だからこそ、「入ってきた毒素を速やかに体外へ排出する」ことが大切なのだ。一番わかりやすいのは、便秘をしないこと。口から入ってきた毒素には肛門という出口がある。その通り道を塞がないことが、まず第一。

「便秘は、副腎疲労の典型的な症状の1つです」と本間さん。

「便秘なんてたいしたことない」と思いがちだが、とんでもない。便を毎日出せないということは、腸の中に毒素が溜まっているということ。放置していたら、腸内環境が悪化し、副腎疲労も進行していく。

よく、「便秘には食物繊維を摂るとよい」と言われるが、副腎疲労の場合、便を排出するためのエネルギー不足で便秘が起きていることも多いので、食物繊維を大量に摂ると、お腹がパンパンに張ってしまうだけで苦しさが倍増することも多々ある。たまらず、下剤を飲んだら、今度は下痢が止まらなくなった……という経験はないだろうか?

便を毎日、きちんと出すためには、何を置いても、腸内環境をよくしてやることが重要。そのためには、腸の中の善玉菌を増やしてやることが先決だ。腸内細菌には、有益な働きをする善玉菌と、腐敗を進めてしまう悪玉菌がある。健康な人間の腸には、100兆個以上の細菌が、善玉菌が優勢、悪玉菌が劣勢の絶妙なバランスを保ちながら腸の表面をビッシリ覆っているのだが、偏った食生活やストレス、抗生物質の乱用などによってそのバランスが崩れると、悪玉菌が優勢に転じ、腸内が毒素で充満。炎症を起こし、便秘が起きることがある。

「こういうときは、まず水をたくさん飲み、乳酸菌やマグネシウムを積極的にとりましょう。ただ、乳酸菌といっても、副腎疲労のときはヨーグルトなど乳製品の摂取は勧められないので、味噌や漬物、甘酒など発酵食品から摂ってください。マグネシウムは海藻類、魚貝類、大豆製品、玄米などに豊富に含まれています」

肝臓での渋滞が体中に毒素をばらまくことに?!

腸と並んで、毒素の排出に寄与するのが肝臓である。肝臓は、アルコールを分解する臓器というイメージが強いが、それだけではない。体の中に入ってきた毒素が血液の流れに乗った場合、行きつく先はすべて肝臓。肝臓は、解毒を一手に引き受けている臓器なのだ。

肝臓に到着した毒素は、解毒されるために肝臓の前に並んで順番を待つわけだが、毒素の量が多くて渋滞してしまうと、ただ並んで待ち続けてはくれない。

「高速道路のインターチェンジが渋滞を起こしていたら、いったん並んだ車が踵を返して一般道に出ていくように、毒素も解毒を待ちきれず、毒素のままフワッと体中に出ていってしまうのです」と本間さん。ただし、肝臓は「沈黙の臓器」。毒素をさばききれなくても、肝臓の症状となっては現れてこない(図1)。

その結果、毒素が体のさまざまな場所で蓄積していく。ほとんどの場合、その人の弱い場所に蓄積して炎症を起こす。鼻が弱い人は鼻炎、気管支が弱い人は気管支炎、免疫の誤作動が起こればアレルギー、といった具合だ。炎症が起きると、コルチゾールが火消しのために頑張らなくてはならず、副腎疲労が進んでいく……。

体内に入った毒素を排出しやすい体にするには、肝臓で毒素が渋滞しないようにすること。つまり、肝臓がすべての毒素をきちんと解毒できるよう、キャパシティを超えた毒素を体内に入れないことが重要なのだ。結局、対策としては①の「体内に毒素を入れない」に戻ってしまうが、すべては繋がっていると考えてほしい。

肝臓が解毒しなくてはならない毒素、つまり、なるべく体に入れたくない毒素とは、防腐剤や安定剤などの食品添加物、農薬、マグロなど大型魚に蓄積する水銀などの重金属、殺虫剤や柔軟剤などに含まれる化学物質、湿度の高いところに生息するカビなどだ。

「このメカニズムを考えたとき、副腎疲労を考えることは、がんの抑制にも繋がると思います。本来なら、免疫ががん細胞をやっつけてくれるはずのところに誤作動が生じて、がんが形成されてしまったわけです。細胞レベルでの誤作動を引き起こす原因が、酸化であり、炎症です。がんが作られた体は、抗酸化力が低い状態、つまり炎症を起こしている状態と考えられ、副腎疲労と同様、がんの発生も、こうした環境で起こりやすいと言えるでしょう」

ならば、体内に酸化や炎症が起きないように対策を講じることは、副腎疲労を防止するだけでなく、がんの再発防止策にも繋がる、と言えるかもしれない。

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