遺族年金について知っておきましょう
最終回 給付される金額の変化について

文:山田由里子 社会保険労務士
発行:2004年10月
更新:2013年4月

  

いよいよ遺族年金シリーズの最終回です。遺族年金は家計を支えていた人が亡くなったときに、残された遺族の生活を支える大事な社会保障給付です。しかし、残された遺族が誰でも遺族年金をもらうことができるわけではありません。前回までは、主にどんな条件のときにどんな遺族が遺族年金を受給することができるのか、またはできないのかに焦点をあてて話を進めてきました。最後に、遺族年金について知っておいていただきたいことがもう一つあります。遺族年金をもらい始めてからのことです。

事例-1 妻がパートの場合

会社員であるA夫さんが死亡。残された遺族は、妻A子さん(35歳)と小学4年生の長女と小学2年生の次女。

A子さんは、現在遺族基礎年金と遺族厚生年金、合わせて月額約14万円をもらっています。それだけでは足りないのでパートとして働きに出ています。A子さんの勤務条件は朝9時半から夕方4時まで、1日5時間半の勤務です。家事を終わらせてから出勤できますし、早く帰れるので子どもにも負担をかけなくてすみます。収入は月10万円程度ですが、短時間の勤務なので社会保険には加入していませんし、所得税もかからないため、給料からは何も引かれません。全額そっくり受け取ることができるのです。健康保険は国民健康保険に加入しましたが、収入が少ないため保険料は低額です。社会保険に加入していないので、年金は国民年金の第1号被保険者ですが、全額免除を申請して認められ(1)、年金保険料は払っていません。

1 自営業者、フリーターなど国民年金の保険料を自ら納めるべき人は、収入が少ない場合、保険料を免除してもらえる制度がある

事例-2 妻が正社員の場合

会社員であるB夫さんが死亡。残された遺族は、妻B子さん(35歳)と小学4年生の長男と小学2年生の次男。

B子さんは、現在遺族基礎年金と遺族厚生年金、合わせて月額約14万円をもらっています。もちろんそれだけでは足りないので、働きに出ています。B子さんはそれまで専業主婦でしたが、正社員として働くことにしました。給与は月額15万円。社会保険に加入しましたから、給与から毎月結構な額の社会保険料が引かれます。手取額は13万3000円ほどです。

変わっていく年金額

事例1のA子さんと事例2のB子さんの給与手取り収入は約3万円違います。パートのA子さんの働く時間は、正社員として働くB子さんよりもかなり短いので、A子さんの働き方のほうが得策だと思う方もいるのではないでしょうか。遺族年金もあり、現時点での生活だけを考えるとA子さんの働き方も悪くはありません。

しかし遺族年金は、ずっと同じ額がもらえるわけではありません。段階的に減っていくのです。A子さんとB子さんの年金額がどのように変わっていくのかをみてみましょう。

[A子さんとB子さんの年金額の変化]
A子さんとB子さんの年金額の変化

A子さんの現在の年金額は月額約14万円です。この内訳は遺族基礎年金が約10万4000円、遺族厚生年金約3万7000円(2)です。遺族基礎年金は子育て支援年金です。18歳未満の子どもがいる間しかもらうことはできません。まず、長女が18歳になって高校を卒業すると(3)月額で2万円ほど減り、約12万円となります。そして次女が高校を卒業すると遺族基礎年金は支給終了となるのです。しかし、このとき月額約3万7000円だった遺族厚生年金には中高齢寡婦加算という給付が65歳になるまでつくようになります。これが月額約5万円、年金額の合計は月額8万7000円ほどになります。ここまではB子さんの年金額もA子さんと同じように変わります。

遺族年金額の変化はこのあとにもあります。それは遺族年金を受給している妻が65歳になったときです。65歳という年齢は、中高齢寡婦加算が終了し、妻自身が自分の老齢基礎年金を受けることができるようになる年齢なのです。いくつかの選択肢の中から一番有利な年金の受け取り方を選ぶのですが、A子さんの年金額は、遺族厚生年金3万7000円と自分自身の老齢基礎年金が約4万3000円、合計で8万円ほどです。

一方のB子さんは、自分自身の老齢基礎年金だけでなく、老齢厚生年金の一部ももらうことができ、合計で11万6000円ほどになります。

これらの事例では、A子さんB子さんの夫はどちらも在職中の死亡なので、遺族厚生年金がもらえました。しかし夫が自営業の場合は、子どもが高校を卒業すると遺族年金は打ち切りとなります。18歳未満の子どもがいて、遺族基礎年金をもらう人は、この年金がずっともらえるわけではないことを、しっかりと頭に入れておきましょう。そして、はやい段階から年金だけに頼らなくてもいいような生活設計を考える必要があるのです。

次に遺族年金を受けている妻が自分自身の老齢年金をもらえるようになったときのケースをみてみましょう。

2 夫死亡時の厚生年金加入暦が25年未満、平均標準報酬月額26万円として算出
3 遺族基礎年金を受給する要件である「18歳未満の子」とは18歳になって最初の3月31日までをいう

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