黒田尚子のがん節約術

がん保険には初期のがんが保障されないあるいは減額されるものも

イラスト/コヤマ ノリエ
(2012年10月)

がん患者やそのご家族にとって、がんとお金に関する不安や問題を少しでも解消し、治療に専念できる手助けになればと考えています。

黒田尚子(くろだ なおこ)

1992年大学卒業後、大手シンクタンク勤務中にFPの資格を取得。1998年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。

Q:上皮内新生物であるため、診断給付金を払えないと言われました。

子宮頸がんと診断されました。0期の初期がんということで、子宮頸部円錐切除術を行うと、主治医から言われています。がん保険に加入していたので、当然、診断給付金がもらえると思い、当てにしていたのですが、私のがんは上皮内新生物であるため、診断給付金を払えないと言われました。どうしてがんなのに支払われないのでしょうか?

(39歳 女性)

A:「上皮内新生物はがんではない」と定義している保険会社もあります。

「上皮内新生物」とは、早期がんで、がん細胞の病変が上皮内にとどまっているものをいいます。

ほとんど再発することなく治癒率の高いがんと考えられており、「上皮内新生物はがんではない」と定義している保険会社もあります。そのため、ご相談者のように上皮内新生物と診断されて診断給付金が受けられないケースも出てくるわけです。

実際には商品によって、上皮内新生物でもがんと同額の100%保障されるタイプや、10~50%など減額して保障されるタイプなど、さまざまです。ただし、最近は、上皮内新生物でも100%保障タイプが主流となっています。

また、同じ保険会社であっても、現在は保障の対象に含まれているが、古いタイプの商品や保障の一部が対象外となっていることもありますので、注意が必要です。

さて、そこで問題は、上皮内新生物も同じく保障されるがん保険が本当に良いのかどうかという点です。

一般的に、上皮内新生物は早期がんであるため、他の進んだがん(悪性新生物)などと比べて費用負担が軽いはず。がん保険は、そういった進んだがんに対する保障と割り切って、上皮内新生物が保障されなくても良いという考え方があります。

その一方で、費用負担が軽いといっても、家計の状況によっては大きく影響する可能性もあります。

たとえば、よく上皮内新生物で発見されるのはご相談者と同じく子宮頸がんです。

統計などから近年の子宮頸がんの罹患者は、20歳代後半から30歳代前半の若い世代が急増しています。

彼女たちの年収や貯蓄額、家族構成を考えると、上皮内新生物も保障されたほうが安心でしょう。

もちろん保障範囲が広くなれば、その分保険料に反映されるのが民間保険です。

ただし、最近のがん保険は各社同一の保障内容でないため、単純な保険料比較ができません。

上皮内新生物を保障に含めるか否かでどれくらい保険料に差が出ているかは、わかりにくいかもしれません。

このように、保険の加入方法には、「これだ!」という正解がないのが悩ましいところです。

それでも1番大切なのは、自分のがん保険がどのタイプかきちんと知っておくことでしょう。

すでにがん保険に加入されているのであれば、保険証券や「契約のしおり」を引っ張り出して、すぐに確認してみましょう。

FP黒田尚子からひと言
基本的に「がん保険」の対象となるのは「悪性新生物」。がんと診断されたものとイコールではありません。