がん・感染症センター都立駒込病院院長の神澤輝実先生に聞く
がん患者での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)防止対策
勢いの止まらない新型コロナウイルス感染
神澤輝実先生
豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」船内での感染。さらに国内では北海道での多数の感染発症を皮切りに、ついに首都東京での感染拡大が始まった(4月6日現在感染者1,116人)。
新聞やテレビ報道では、感染者数・死亡者数、感染源の特定などが話題となっている。また、高齢者、糖尿病患者などでの高頻度の発症の可能性が指摘されているが、がん患者での感染につては、ほとんど報じられてないのが現状だ。
都内でのがん診療の拠点施設でもある、がん・感染症センター都立駒込病院院長の神澤輝実先生に、がん患者における新型コロナウイルス感染への対処法、注意点などについて伺った。
新型コロナウイルスへの備え
●免疫能が低下していることを認識する
がん患者が第一に認識しておくべきことは、薬物療法などで、健常者に比べて免疫能が低下していること。
例えば、大腸がん、肺がん、胃がん患者などでは、術後補助療法として抗がん薬の長期間投与が行われるが、これにより免疫能が低下し、外部からのウイルスなどによる感染を来しやすい。
●肺がん患者だけでなく、全がん種で注意が必要
新型コロナウイルス感染では、肺炎などの症状を来すため、真っ先に肺がん患者が要注意と思われがちがだが、薬物療法を受けているケースなどでは、肺がんだけではなく、全がん種の患者に影響が及ぶことを知っておく必要がある。
●感染予防には、健常者と同じ対応を
ではどのような感染予防策が必要か。
①現段階で、がん患者向けの特別な感染予防策はない。日常生活においては、健常者と同様に、「外出時のマスク着用」、「手洗いの励行」などを行うとともに、「部屋の換気を行う」、「密集地には出かけない」、「家族との会話において一定の距離を保つ」など-いわゆる “3密(密閉空間、密集場所、密接場面)”を避ける。
②外来化学療法などを受ける際には、極力、公共交通機関を避ける。公共交通機関を利用する場合は、「つり革の使用を避ける」、「隣の乗客との距離を設ける」など、一般的な注意事項を厳守する。
③緊急の対応が必要でないケースでは、医師の判断、指示に従う。
新型コロナウイルスに感染した疑いがあるときには
①発熱、咳(せき)、強い倦怠感、嗅覚・味覚障害などの症状が継続する場合には、主治医、治療を受けている施設に連絡を取り、指示に従う。
②家族など、周囲の人との接触を避ける。
③受診する場合は、なるべく公共の交通機関を使わない。
④感染症対策設備のないがん診療機関では、例えがんで通院患者でも、コロナウイルス感染患者の受け入れはできないことが多い。また、感染症診療が可能な施設でも、感染症病棟が満床で、受け入れができない場合もあるので、注意する。
駒込病院での新型コロナウイルス感染対策
神澤院長によると、「通常、駒込病院の患者比率は、がん患者が全体の7割(リウマチや骨折などの非がん疾患の患者が約3割)を占めており、感染症患者はごく少数である。
現在は、感染症患者は1割弱。陰圧室(空気感染隔離室)が整備されているほか、がん患者および非がん患者の病棟と感染症患者病棟は完全に分離(動線の遮断)されている」という。
また、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、がん患者の集まる「医療情報室」「多目的室」「患者サロン」などはすべて閉室。面会の制限が行われている。
このほか、医療従事者への感染抑止を図るための行動マニュアルを作成、周知徹底を行っている。