「小児脳幹部グリオーマ」患者会 厚生労働大臣に直接陳情

文●貫井孝雄・小児脳幹部グリオーマの会代表
文●高木伸幸・小児脳幹部グリオーマの会署名活動リーダー
(2016年12月)

塩崎厚生労働大臣に署名と要望書を提出し、患者家族の要望を訴えました

2016年10月27日、「小児脳幹部グリオーマの会」のメンバーが厚生労働大臣と面会し、署名を提出し陳情しました。この疾患の患者家族にとって、まさに歴史的な日となり、塩崎恭久厚生労働大臣からの力強い返答により、活動継続に決意を新たにしました。


診断と同時に「余命1年」と宣告される小児脳幹部グリーマ。

小児がんの患者会「小児脳幹部グリオーマの会」は、2016年10月27日、塩崎恭久厚生労働大臣と面会の上、署名と要望書を提出しました。

「小児脳幹部グリオーマ」とは脳の中枢にある脳幹内部に悪性腫瘍が発生する病気です。いまだ治療法が確立されていない最も過酷な小児がんです。当会はこの病気の患者家族会として2011年5月に発足したものです。

会員の高木伸幸は亡くなった我が子の闘病経験をもとに、2013年12月よりこの病気を含む難治性小児脳腫瘍の治療環境改善のための署名活動を行ってきました。多くの方の賛同を得て、全国から22,853筆もの署名をいただきました。

当会は、この署名の成果を要望書として取りまとめ、厚生労働省や、国会議員会館を訪れ陳情活動等を行うと共に、最も望ましい署名提出の形を検討していました。

そんなとき、歌手の菅原洋一さんとの出会いがありました。菅原さんも最愛のお孫さんをこの病気で亡くされたのです。また、同様にお子さんを亡くされ、横浜に小児ホスピスを建設する計画に着手されている「認定NPO法人スマイルオブキッズ」の代表理事田川尚登さんとの出会いもありました。

そして田川さんの団体が菅原さんのチャリティー公演を企画し、その席で関係する国会議員に署名をお渡しすることはできないかという構想が立ち上がりました。

医師会元副会長の羽生田俊参議院議員には、先の議員訪問でとくに熱心に当会の主張を聞いていただいたことから、署名提出にふさわしい議員と考え、公演への出席をお願いしました。

2016年9月11日、菅原洋一さんのチャリティーコンサート「愛する子ども達のために2016」が開催され、その素晴らしい歌唱に満員の観客が感動しました。その公演の冒頭、当活動にご協力いただいている相模原市の市議会議員、宮崎雄一郎議員の司会で、羽生田議員への署名提出の式典が行われました。その後日、羽生田議員のご尽力により、今回の塩崎厚生労働大臣との面会が実現しました。

菅原洋一さんのチャリティー公演での署名提出式典

当会の提出した主な要望内容は、小児脳腫瘍の治療研究体制の確立と推進、ドラッグラグの解消、小児慢性特定疾病制度の周知徹底と煩雑な申請面等の改善、精神的ケアの必要性、末期小児がん患者に対する障害者認定の迅速化というものでした。それを受けて以下のような大臣の返答をいただきました。

厚生労働大臣の力強い返答「日本版キャンサー ムーンショット」を作ろう

「息子さんを脳腫瘍で亡くされた米国のバイデン副大統領の声掛けで、この9月に日米韓の保健大臣会議というのをやりました。『キャンサー ムーンショット』というものを副大統領が取りまとめをしていて、これは月に行ったアポロ計画に倣って不可能を可能にするという意味で、がんに終止符を打とうという計画です。

これから日米韓で協力してゲノム医療の研究をはじめあらゆることを、できるだけ短期間でやりきろうと考えています。やはり小児がんや稀少がんというのは、国内で集めたデータだけでは分析に足るほどの数が揃わないということで、日米韓で協力してデータの収集と標準化をして一緒に分析をやれるような体制を作ろうとしています」

「今回がん対策基本法を見直して、小児がんや稀少がんを入れることになっています。我々も『日本版キャンサー ムーンショット』を作ろうと。がんは一番の問題であり日本の医療の力を結集すれば、これに終止符を打つことは必ずできると考えています」

「医療費助成申請等の手続きの煩雑さの問題ですが、子どもさんと一緒に過ごす貴重な時間を無駄にしないように、是非改善して行きたい」

「皆さん方のような大変つらいご経験を生かしていきたい。そして同じような経験をしている皆さんが、それを克服できるように頑張って行きたいと思います」

以上、塩崎大臣には、とても力強い決意と励ましとなるお答えをいただきました。

今回、様々な方の思いが紡いだ「絆」によりこの様な機会を得たことに感謝致します。そして、いつも遠くから見守ってくれている「天使たち」の導きにも。「小児脳幹部グリオーマの会」の活動もここからが本当のスタートだと決意を新たにしています。