厳しい移植ではなく、ミニ移植の可能性は?

回答者:西村 美樹
千葉大学付属病院 血液内科科長
発行:2006年5月
更新:2013年12月

  

64歳の父のことでご相談です。最近、急性骨髄性白血病と告げられました。造血幹細胞移植を勧められています。かなり厳しい治療と聞いています。父のような年齢でこの治療に耐えられるのかどうか、心配しています。最近、ミニ移植と呼ばれる、高齢者でも可能な移植があるとも聞いています。このミニ移植と呼ばれる治療の内容とその有効性について、教えてください。

(北海道 女性 35歳)

A 有望な治療だが、まだ臨床研究の段階

通常の同種造血幹細胞移植というのは、移植前処置という大量の抗がん剤や放射線照射などを行って、患者さんの正常な骨髄細胞も悪性細胞もできるだけ減少させて、その後にドナー(提供者)さんの造血幹細胞を移植し、悪性細胞のない正常な造血を作り上げる強い治療です。

御心配はごもっともなことで、命に関わる合併症が多くあります。まず、この前処置によって、肝臓、腎臓、心臓などの重要な臓器に重篤な障害を起こすことがあること、ドナーさんからもらった造血幹細胞から、白血球、赤血球、血小板などの血液細胞が育つまでは骨髄が空っぽであり、白血球不足による重い感染症、赤血球不足による貧血症状、血小板不足による出血を起こすこともあることが挙げられます。

ドナーさんの細胞を患者さんの骨髄が受けつけない“拒絶”という、稀ですが致命的なことも起こり得ます。また、患者さんに移植されたドナーさんの細胞からみれば、患者さんの体は自分ではない異質なものですから、免疫を担当するリンパ球による攻撃が起こってしまいます。これを移植片対宿主病といい、急性と慢性とがあり、急性では皮膚、肝臓、消化管、慢性では口腔粘膜、肝臓、肺、皮膚、涙腺、唾液腺等が障害されます。

いずれも致命的になったり、生活の質を極端に悪くしたりする合併症です。これには免疫抑制剤で対処しますが、この薬自体にも副作用や、感染に対する抵抗力を低下させるといった問題があります。これだけの合併症がありますから、ご質問の64歳の患者さんに行うのは難しいと思われます。しかもこれらの山を乗り越えても、もとの病気が再発してしまうこともあり得るのです。

ミニ移植は、前処置に使う抗がん剤の種類を変えたり、減量したりして合併症を減らすために開発された治療です。これによって高齢の患者さんにも移植治療の道が開けることになりました。前処置による重要な臓器の障害は軽くなり、骨髄の中に患者さんの細胞が残ることから、先に述べた感染症、出血の危険が減ります。ドナーさんの細胞が拒絶されても、時間をかければ患者さんの細胞が回復する可能性もあります。しかしその反面、患者さんの悪性細胞も残る可能性があり、再発の可能性は高くなります。また、移植片対宿主病は通常の移植と同様に起きますので、高齢の方ではこの合併症による臓器障害に苦しめられることもあります。

海外の論文で10数例の高齢の急性骨髄性白血病の患者さんに移植を行ったという報告があり、移植後1年の無病生存率は良好ですが、晩期の合併症などについては今後の報告を待たねばなりません。また、海外で使用できる薬が国内ですべて使用できるわけでもなく、この成績をそのまま国内の患者さんにあてはめるのは難しいでしょう。64歳の急性骨髄性白血病の患者さんに対するミニ移植は、有望な治療法ではありますが、まだ臨床研究の段階の治療という位置づけとお考え下さい。白血病の細胞がどれだけ残っているか、重要な臓器に障害はないかなど、担当の先生とよくご相談されてお決めになることをおすすめします。

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