脳の悪性リンパ腫。ベストの治療法を知りたい
最近、手のしびれが急に悪化したので、病院で検査をしてもらいました。その結果、びまん性大細胞B細胞リンパ腫という原発性脳腫瘍とわかりました。進行が早く予後が悪いと聞いて大変ショックを受けています。現時点での最善の治療法を選びたいのですが、どういう治療がよいでしょうか。
(福岡県 男性 58歳)
A 悪性リンパ腫の薬を使った化学療法に注目
脳の原発性悪性リンパ腫は発生頻度の低い悪性腫瘍です。リンパ組織のない脳になぜ発生するのか、原因はよくわかっていません。その8割はびまん性大細胞B細胞リンパ腫です。脳や脊髄以外に転移することはほとんどありませんが、残念ながら治療成績は芳しくありません。
基本的に手術は診断目的の生検術で、化学療法+放射線療法が治療の中心になります。また、他の部位の悪性リンパ腫の一部分症であることを除外しなければなりません。その鑑別や治療内容の検討も含め、血液内科などとの密接な連携治療も重要です。
脳の血管には薬の成分を通しにくい特殊な性質があって、使える抗がん剤が限られます。そうした理由もあって、脳腫瘍の化学療法は治療成績がなかなか上がりませんでした。
化学療法剤については、脳神経外科領域ではメソトレキセート(一般名メトトレキサート)の大量投与が主流です。その薬剤への反応を見て、放射線の照射量を決定します。2次薬として大量のキロサイド(一般名シタラビン)の投与もまだ行われています。リツキサン(一般名リツキシマブ)は、他の部位のB細胞性悪性リンパ腫に効果の高い化学療法剤ですが、血中から脳内に浸透しないため、同剤を頭蓋内に直接注入する治療法の臨床研究も現在行われています。
化学療法に加え、50グレイ以下の放射線全脳照射を追加するのも一般的です。メソトレキセート投与と同時に放射線治療を行うと、とくに高齢者では脳がダメージを受け、高頻度で知的障害を含む後遺症が起こるので、放射線療法を加える時点、メソトレキセートの投与量などを検討しなければなりません。通常、メソトレキセートにより良好な反応の得られた例では、治療後に比較的低用量の放射線治療を行い、反応が不十分な例では、45グレイ程度の照射を行うのが標準です。