胚腫が再発。どのような治療法がいいか

回答者:森田 明夫
NTT東日本関東病院 脳神経外科部長
発行:2011年1月
更新:2013年11月

  

息子は高校2年生のとき、脳の松果体という部位にジャーミノーマ(胚腫)という悪性腫瘍ができ、化学療法と放射線治療を受けました。幸い、がんは消失して、息子も大学に無事進学できたのですが、2年後に再発し、親子ともどもショックを受けています。脳の放射線療法は知的障害のリスクが高いというので、局所照射にしたせいかもしれません。再発では、どのような治療を受ければいいでしょうか。

(兵庫県 女性 50歳)

A 新規化学療法と放射線療法の併用を

胚腫は珍しい脳腫瘍で、松果体に発生することが多く、20歳未満の男性に好発します。日本人や朝鮮人に多いのも特徴。低リスク群(ピュア・ジャーミノーマ)と、ミックスド・ジャーミノーマ(悪性度の高い組織型も混在した胚腫。さまざまなタイプがある)などの中間リスク群・高リスク群に分けられます。予後は全体として悪くはありません。しかし、再発の場合、効果的な手段が多くあるとは言えません。

胚腫は生検手術で組織型を確認してから、化学療法、その反応を見て放射線療法の順で治療を行うのが一般的。ただし、低リスク群、中間リスク群、高リスク群によって治療内容が変わってきます。

低リスク群を例とすれば、腫瘍が直径2センチ以下の場合はパラプラチン(一般名カルボプラチン)+ベプシド(一般名エトポシド)の投与、2センチ以上、あるいは多発・播種の場合は「ICE療法」と呼ばれるイホマイド(一般名イホスファミド)+シスプラチン(一般名)+ベプシドの投与を行ってから、25グレイの放射線を拡大局所照射(トルコ鞍部・松果体・脳室系)します。リスクの上昇に応じて放射線量を30グレイまで増やしますが、全脳照射は高リスク群にしか行いません。

このケースでは、もし再発部位が原発部位と同じだった場合、低リスク群として治療したが、実際には中間リスク群か高リスク群だったため、腫瘍細胞が生き残ったことが考えられます。再発部位が原発部位と違った場合、腫瘍の転移や播種を治療しきれなかったのかもしれません。いずれにしても再度、生検手術を行い、確実な病理診断をするべきです。脊髄への播種がないかもチェックする必要があります。

再発の場合も化学療法と放射線療法を併用します。このケースは悪性度が高いと思われるため、化学療法では前回よりも効果の強い処方で治療する必要があります。ICE療法にパラプラチンなどを追加し、放射線療法は前回の治療計画に基づき、可能であれば、再発の状況を見て、ガンマナイフやサイバーナイフなどの定位的放射線治療や全脳照射を行ったほうがいいでしょう。

松果体=脳幹近くにある小さな器官で、ホルモン分泌などの機能を担っている

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