ホルモン療法の副作用に苦しんでいる。有効な副作用対策はないか

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
(2009年6月)

2年ほど前、右側の乳房に腫瘍が見つかり、全摘手術を受けました。手術後、エンドキサン(一般名シクロホスファミド)、ファルモルビシン(一般名エピルビシン)、5-FU(一般名フルオロウラシル)を併用するCEF療法という化学療法を受けました。その後、ホルモン療法を続けています。ホルモン療法の副作用は、予想していたよりもきついです。気分の落ち込み、ほてりやのぼせなどのホットフラッシュ、関節痛などの更年期障害の副作用で苦しんでいます。有効な副作用対策はないでしょうか。

(愛媛県 女性 40歳)

A 多くの場合、副作用に耐えながら続けている

手術後のホルモン療法による副作用は、そのホルモン療法の内容によって変わってきます。

手術後のホルモン療法は、(1)飲み薬のノルバデックス(一般名タモキシフェン)単独(2)ノルバデックスと偽閉経療法の併用(3)偽閉経療法だけの場合の3つがあります。(1)がゴールドスタンダードですが、リスクの高い人には(2)が行われることもあります。副作用のある人に例外的に(3)を行うこともあります。

ですから、(2)を行っていて、副作用がきついとのことでしたら、ノルバデックスか偽閉経療法のどちらかをやめるという選択肢もあります。

副作用対策についてですが、関節痛に対しては、残念ながら明らかに有効なものはありません。

ほてり、のぼせに関しては、女性ホルモン剤が一番有効ですが、乳がん細胞を増殖させるおそれがあるため、乳がんの術後には禁忌とされます。セロトニン再取り込み阻害作用(SSRI)のある抗うつ剤とか、交感神経のα受容体を刺激するクロニジン(一般名)を用いることで、ある程度は抑えられます。しかし、これらの薬自体による副作用もあります。

また、ノルバデックスの服用中は、抗うつ剤の一部(パキシル(一般名塩酸パロキセチン水和物))を飲むと治療効果が落ちることがあります。ヨーガや瞑想療法、ストレスを軽減させることなどでもある程度対処できるといわれています。

現状では、ホルモン療法による副作用をコントロールできるのは約半数ほどといわれています。ですから、多くの場合は、副作用に耐えながらホルモン療法を続けるか、副作用が我慢できなければ、やめるしかありません。

また、年齢によっても、副作用の現われ方は違ってきます。40歳未満の人がホルモン療法によっていきなり閉経になるときのほうが、閉経近くの人がホルモン療法を受けるときよりもやはり副作用が強く出るといわれています。