卵巣機能を残したい。治療選択はあるか
子宮頸がんのⅡB期です。転移はなく、全摘を勧められたのですが、卵巣も含めた広い範囲の摘出ということで悩んでいます。30代半ばで更年期にはなりたくなく、自分の女性ホルモンで女性らしさを保ちたいからです。卵巣に照射しない放射線療法もあると聞きました。
(36歳 女性 東京都)
A 温存を目指す治療法はあるが 最優先はがん治療
織田克利さん
ⅡB期は、広汎子宮全摘手術で子宮と膣壁などの病変部を取り切ることが可能な段階ですが、手術を選択せずに放射線を主治療とした治療も広く行われるようになっています。2つの治療での卵巣温存を考えてみます。
広汎子宮全摘手術には、通常卵巣の摘出も入ります。ⅡB期となると、子宮外に広がっていますので、卵巣への転移率がI期よりも高くなります。まずがんを治すことが最優先となりますので、転移の可能性があり、再発率が上昇する可能性の高い場合、卵巣温存には慎重にならざるを得ません。
一方で、再発リスクを承知の上でということであれば、技術的には手術の際に卵巣をつり上げておけば(通常の位置よりも高いところで固定)、術後に放射線療法を追加する場合にも放射線が当たらないようにすることができます。
しかしながら、この場合、卵巣に対しては無治療ということになりますので、もしも転移していた場合には極めて高い再発リスクを背負わなければなりません。また、(治療ガイドライン上は標準治療として推奨されているわけではありませんが)手術の後に放射線療法でなく、抗がん薬治療を行っている施設もあります。この場合、卵巣機能は、年齢など個々の状態により、抗がん薬のために生理が来なくなるケースもありますが、保持されることが多いです。
次に、手術をせずに放射線ベースの治療を選んだ場合です。卵巣に放射線を当てずに、子宮から広がったところに有効な放射線量を当てるのはとても難しいことです。卵巣は放射線照射による影響を受けやすいため、照射位置から多少離れていても、通常卵巣機能が失われ、女性ホルモンが出なくなります。
とくにⅡB期では、画像診断で転移がないとされる場合でも、骨盤リンパ節転移の可能性も十分あるので、主治療として放射線療法を選んでも、骨盤内全体に放射線をしっかり当てる必要があります。卵巣を避けようとするのではなく、放射線を当てる部位にきっちりと当てなければ治療効果は上がりません。
女性らしさを保ちたい(卵巣ホルモンが欠落する状態を避けたい)ということであれば、必ずしも自分の卵巣からではなく、薬剤で補充することが可能です。子宮頸がんでは、一部を除きホルモン薬により再発しやすくなるわけではないので、安心してホルモン補充療法ができます。保険も適用されます。
30代での閉経となると、更年期症状という問題もありますが、身体的な問題として長期的には骨粗鬆症などの心配もあります。がん克服後には長い人生が待っているので、更年期症状の改善(女性らしさの維持)のみならず、将来的なことを考えてもホルモン補充療法は考慮されます。