直腸がんの骨盤内に再発。手術以外に治療法はあるか?

回答者・大矢雅敏
獨協医科大学越谷病院外科教授
発行:2014年7月
更新:2014年10月

  

妻(67歳)が、2013年直腸がんの手術を行ったのですが、骨盤内に局所再発していることがわかり、主治医から再手術を行う旨、説明を受けました。ただ、手術自体、膀胱や子宮など骨盤の周辺臓器を一緒に切除する大がかりな手術で、術後の合併症として、骨盤死腔炎と呼ばれる骨盤内の感染症を引き起こす可能性があるなどの説明を受けました。再度大がかりな手術を受けると聞き、正直妻も私も進んで手術を受ける気になれません。他に何か違う治療法はないのでしょうか。

(65歳 男性 新潟県)

根治という点では手術がベスト。重粒子線や化学療法+放射線治療も

獨協医科大学越谷病院外科教授の
大矢雅敏さん

残念ながら骨盤内に局所再発が起こってしまった場合、根治という点からすると、再発病巣を切除する手術が現在のところベストな治療法だと言えます。ただ、この手術は非常に難しく、合併症として、術中の大出血、術後の腸閉塞、骨盤死腔炎がかなりの高い確率で起こります。また手術をしたとしても再発率は高く、根治できる可能性は10%ぐらいと言えるでしょう。

一方、切除手術以外の治療法としては重粒子線治療や、化学療法と放射線治療を組み合わせた治療が考えられます。重粒子線治療は、局所再発病巣に対して根治が目指せる治療法です。ただ、がん病巣の近くに腸があると、重粒子線を当てる際に腸がダメージを受けてしまうため、重粒子線治療を受ける前に再発病巣と腸を剥離する手術が必要になります。手術は全身麻酔で行い、また再発病巣の近くを触る手術なので腸を傷める可能性があり、この手術自体にもリスクがあります。

その他の治療選択肢として化学療法と放射線治療を組み合わせた治療法があります。大腸がんの場合、最近の新規抗がん薬を投与すれば、根治にはならなくてもQOL(生活の質)を保った状態で、長期生存を目指せるようになってきました。ですので、化学療法と放射線治療を組み合わせた治療法も選択肢として考えても良いかと思います。

以上のことを考慮した上で、もし切除手術を選択する場合に1番大事なことは手術を実施してもらう医師を選ぶ、ということに尽きます。具体的には、①この手術を自ら進んで行う勇敢さがある、②直腸の手術に習熟している(手術手技が非常に難しく、少なくとも15年程度の手術経験が必要)、③骨盤の骨を切除することに慣れた整形外科医と連携できる、④術中の大出血の処置を上手にできる(手術中1~2万㏄の大出血が起こる可能性あり)――などを念頭に、医師を選ぶことをお勧めします。

骨盤死腔炎=骨盤内臓器の摘出後にできた骨盤内スペースに、細菌が感染して発生する術後の合併症

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